[特集]男性育児休業取得促進の取組事例

説得して生まれた育児休業第一号がその後の流れを変えた

社会福祉法人アンダンテ

法人名 社会福祉法人アンダンテ
所在地 福山市引野町南1丁目6番11号
URL https://www.joyjoywork-andante.jp/

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社会福祉法人アンダンテ(福山市)

福山市内に生活介護・就労継続支援・障がい児相談支援など5つの事業所を運営する社会福祉法人。全社員70名のうち、男性育児休業は男性社員6名中4名が取得しています。

取材に答えてくれたのは...
生活介護事業所「ジョイ・ジョイ・ワーク引野」
管理者 池田 晴美(いけだ はるみ)さん

「アンダンテ」の理事であり、生活介護事業所の管理者。先見性のある視点で時代の動向を読み取り、職員が働きやすい環境づくりに努めています。

「社会福祉法人アンダンテ」男性育児休業の3つの特徴

  • 2019年以降、男性育児休業利用は100
  • 法人主導で誰もが休みやすい環境を構築
  • 看護休暇など、休暇はすべて有償

前例を作ったことで風潮に変化が

★池田様(担当者).jpg「アンダンテ」で最初の男性育児休業が取得されたのは2019年のこと。第一号となった職員は、当初まったく育児休業を取る気がありませんでした。「絶対に取った方がいい!」と強く勧めたのは、施設管理者の池田さんです。「前年にもお子さんが生まれた男性職員がいたのですが、その時はこの人に今抜けられては困る!という思いから、育休を勧めてあげられなかったんです。そのことにずっと罪悪感があり、次にお子さんが生まれた職員には絶対に育休を取ってもらおうと心に決めていました」と振り返ります。

育児休業に無関心だった職員を「誰にも遠慮することなく休むことができる環境づくりのパイオニアになって」と説得し、なんとか第一号を誕生させることに成功しました。以降は、子どもが生まれた職員全員が2週間の育児休業を取得し、取得率100%を達成しています。「前例ができたことで流れが大きく変わりました」と池田さん。復帰後は、育児休業中に感じたことや良かったことを書いてもらい、「アンダンテ」のHPに掲載しました。これは対外的なPRになるだけでなく、これから育児を経験するであろう職員たちの興味も引きました。

法人主導で支え合いの風土基盤を構築

★理事長メッセージ2.jpg法人としての取組では、理事長が全職員に向け「男性育児休業取得100%」を目指すというメッセージレターを配付。出産予定の申し出があった職員には必ず制度の説明をし、取得の意思を確認しています。また、年に1回以上のペースで全職員を対象とした研修会を実施。男性育児休業のメリットなど、家庭と育児の両立支援にまつわる内容で、職員の理解を深めました。各事業所に相談窓口を設置し、育児休業だけでなく保育園の送迎などに必要な時短勤務、早出勤務、家庭の都合による時間調整などにも対応しています。池田さんは「法人としての方向性を示すことで、誰もが休みやすい環境の基盤が整いました。一人目を皮切りに、毎年1名ずつ育児休業を取得していったことで、職場全体の雰囲気が変化したことも事実です」と話します。

★業務風景.jpg一人目の説得に成功した池田さんですが、最初の育児休業の実現に不安がなかったわけではありません。「この時休業した職員は施設内で実質ナンバー2の立場で、サービス管理責任者。もともと福祉の現場はみんなで行うチームプレーなので、属人化した仕事はほとんどありません。誰かが休めば、他の人が代わりに行います。しかしサービス管理責任者という立場は、誰もが務まるわけではありません。それでも周りの職員は休業した職員の仕事を懸命にこなし、『休んでくれたおかげで自分たちのスキルが上がった』と喜んでくれました。休業した本人にとっても、周りにとっても良い影響があったのです」と話します。男性育児休業の取得が、職員全体のスキルアップに繋がっていました。

多様性の時代に対応する選択肢を用意

★福山市男女共同参画推進表彰2.jpg育児休業のほかにも、子どもが病気になった時などに利用できる有償の看護休暇など、池田さん自身の子育ての経験を活かし、必要だと思ったものはどんどん取り入れていきました。それは男性育児休業だけにとどまらず、生理休暇、つわり休暇、不妊治療休暇など女性に対する対応も同じ。「男性女性に関係なく、いいなと思ったことは取り入れていきたい」と池田さん。こうした取組が評価され、2021年「ふくやまワーク・ライフ・バランス」の認定事業者となりました。仕事と家庭の両立を実現する支援に積極的に取り組む企業として、福山市から認定されたのです。翌2022年には男性育児休業100%の実績から「福山市男女共同参画推進事業者表彰」を受賞。「これからも社会の動向に目を向けながら働きやすい環境づくりに努めていきたい」と池田さんは話します。

一方で池田さんは、多様性の時代だからこそ「育児休業しない」という選択肢があってもいいと考えています。「育休を取得するかどうかは夫婦で決めること。こうでないといけない、はありません。選択肢を増やしてあげることが私たちの役割だと思っています」。現在、男性育児休業の実績は全員2週間ですが、今後はもっと長く休む人がいてもいいし、リモートワークに切り替える人がいてもいい。多様な働き方に柔軟に対応していくことが、男女を問わず働きやすい職場づくりに必要だと答えてくれました。

\私も育児休業を活用しました/

平賀さん.jpg作業療法士 平賀 源太(ひらが げんた)さん

2週間の育休でしたが、育児の大変さを身をもって知りました。育児休業が終わっても、家事や育児は分担して、お互い協力していきたいと思います。休日には妻を気分転換させてあげることも大切ですね。

 

(取材日 2023年11月)