女性活躍事例一覧

女性の採用・長期勤務を後押しし、
全従業員が「定年まで安心して働ける会社」へ

株式会社荒谷建設コンサルタント

  • その他産業
  • 広島市
  • 301以上
  • 方針・取組体制
所在地 広島県広島市中区江波本町4-22
URL http://www.aratani.co.jp/index.html
業務内容 荒谷建設コンサルタントは1916年創業以来、100年にわたって、「人間と自然を考える」をテーマに、地球環境の保全と国民の安全・安心確保のためのインフラ整備に従事してきた。生活の利便性を向上させる道路、橋梁、下水道、港湾、公園などの公共インフラ、人命・財産を守る防災施設等の整備に必要な構想・企画から基礎調査、測量、地質調査、環境調査、設計、施工管理、メンテナンスを行っている。近年は、防災・維持管理業務の需要増加に応じた組織体制を強化するとともに、環境に配慮した再生可能エネルギーに関する調査・設計なども手がけている。
従業員数 384名
女性従業員比率 18.2%
女性管理職比率 0.5%

(2017年5月現在)

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代表取締役社長  荒谷 悦嗣氏

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  • 「女性応援」の姿勢をアピールし、女性総合職の安定採用を実現
  • 「女性の働き方プロジェクトチーム」を発足。女性の長期勤務を全力応援!
  • 女性も男性も定年まで活躍してほしいという経営者の熱意が追い風に

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1.「女性応援」の姿勢をアピールし、女性総合職の安定採用を実現

近年多くの会社が「人材不足」に直面している。コンサルタント業を営む同社にとって「人材」が何よりの経営資源であるため、「優秀な人材の安定確保」は経営の重要課題のひとつである。優秀であれば男女問わず採用したいと考えており、特に事業の中枢を担う技術系の総合職の人材の確保が求められている。しかし、優秀な人材は公務員、ゼネコンや建設コンサルタント会社等との奪い合いとなり、厳しい状況にある。
そこで、新卒採用において、「アラタニは土木女子を応援します!!」というリーフレットを作成し、技術系の女性総合職の採用に積極的に取り組み始めた。また、会社説明会では、質問の多く出る福利厚生について詳細に説明。結婚や出産、子育てなどのライフイベントと仕事の両立を支える様々な制度(産休育休、3歳までの短時間勤務、小学校就学までの時間外労働制限、子の看護休暇が取得可能)が充実していることを伝え、女性が長く働きやすい会社であることをアピールしている(図1参照)。
説明会と同時に必ず職場見学も実施する。そこで親しみやすい社風や従業員同士の仲の良さを知り、入社を決める女性も少なくないという。特別に女性を優遇採用するという措置はとっていないが、これらの取組により、近年では一定数の女性を継続的に確保することを実現している(図2参照)。

図1 ライフイベントを支える両立制度
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図2 最近の採用実績
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技術系:計画、設計、環境調査、地盤調査、測量、補償調査
営業系:営業、営業事務                
管理系:総務、経理                  


2.「女性の働き方プロジェクトチーム」を発足。女性の長期勤務を全力応援!

様々なライフイベントとともに歩む「定年まで働くことのできる会社」づくりを目指すため、平成29年5月に「女性の働き方プロジェクトチーム」を発足させた。
せっかく採用した技術系総合職の女性従業員も残業や出張が多いと、家庭との両立が難しいと考え、結婚等を機に辞めるケースも多かった。また、公共事業等の予算が削減された時期に採用を控えた影響もあってか、管理職候補世代である30代女性が非常に少ないという問題も抱えている。
こうした状況から、近年採用した技術系総合職の女性従業員の継続雇用や次世代の管理職の育成は同社の差し迫った課題であり、プロジェクトチームも「20代女性の今後のキャリア形成」を重要テーマとして設定している。会社が女性活躍を推進する流れに呼応するように、3年前から始めたYouth Talk(社内で年に1回開催される若手従業員が自由に発言できるプレゼン大会)でも、20代女性従業員が「仕事が好き。家庭と仕事を両立させながら仕事を続けたい」と発表するなど、女性従業員自身も長く働きたいと希望するようになってきている。両者の思いを合致させ、前進できるように、プロジェクトチームでは現状の課題を洗い出し、それを改善するためのアクションプランの策定を始めたところである。プロジェクトチームにはこれからライフイベントを迎える20代から子育て経験者である40~50代の男女まで、幅広いメンバーが属している(図3参照)。子育てが一段落した女性や、女性のライフイベントに対してどう配慮すべきかわからないという男性等、様々な状況の従業員の意見を共有するべく、月に1度定例会議を行っている。平成29年12月には、チームとしての提言をとりまとめ、社長への報告を予定している。

図3「女性の働き方プロジェクトトチーム」のメンバー構成
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3.女性も男性も定年まで活躍してほしいという経営者の熱意が追い風に

女性が活躍し続ける仕組みを構築することは、会社の健全な発展にとっても必要な要素であると荒谷社長は考える。「女性が多い会社は職場環境が良い会社であり、男女ともにいきいきと働けると思う。職場環境を良くして優秀な人材を集め、当社および業界全体のプレゼンスを高めていきたい。制度と風土は両立しなければ成り立たない。プロジェクトチームに期待することは、役員の視点とは異なる従業員の視点で提言を行ってもらうことである。働き方について意見を吸い上げて男女ともに長く働き続けられる制度と風土を一緒に作っていくきっかけにしたい」と語る。さらに、会社は2026年度を見据えた長期ビジョンを策定しており、従業員のニーズに合わせた労働環境を構築するための3つの施策にも取組始めている(図4参照)。現在は、女性活躍にフォーカスして取り組んでいるが、ワークライフバランスを整え、活躍してもらいたいのは男性従業員も同じである。男性であろうが女性であろうが「定年までこの会社で働き続けたい」と思ってもらえるような会社を目指していくとしている。ノー残業デーには、荒谷社長自らオフィスを歩き、帰宅を促すなど、働き方改革も同時に推進中である。
女性活躍を推進するための様々な制度の裏には、こうした経営者の強い思いがあったのだ。

図4 働きやすいワークスタイルへの3つの施策

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●取材担当者からの一言

少子高齢化による人材不足は、多くの会社にとって課題である。(株)荒谷建設コンサルタントは多様な人材確保および就業継続に向けての課題を認識し、取り組み・対策を今まさに実施している会社だ。30代女性従業員が少なく、人材構成上、すぐに女性管理職を増やすことは難しいだろうが、現在、自身も子育て世代である荒谷社長の強い思いで改革を推進すれば、女性の管理職の増加にも期待ができる。技術系の総合職は、顧客との打合せや現場に行って調査等を実施する仕事もあり、出張や顧客との時間調整が必要で両立は簡単ではないかもしれない。しかし、社会全体での働き方改革、家庭内での夫婦の役割分担が進めば、仕事・家事・子育てもよりジェンダーレスになっていくはずだ。女性の活躍推進と働き方改革は一体で取り組む必要があることをあらためて感じた。


●取材日 2017年8月
●取材ご対応者
代表取締役 社長          荒谷 悦嗣氏
執行役員 管理担当GM 企画調整部長 上野 一郎氏
総務部 次長(兼)総務課長     大下 倫明氏
企画調整部 企画調整課 担当課長  中川 隆喜氏