女性活躍事例一覧

「女性の採用促進や職域拡大に向け、
専任部署を設置し施策を展開」

株式会社中電工

  • 建設業
  • 広島市
  • 301以上
  • 方針・取組体制
  • 人材活用
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
所在地 広島県広島市中区小網町6番12号
URL http://www.chudenko.co.jp/
業務内容 株式会社中電工は、屋内電気工事、空調管工事、情報通信工事、配電線工事、発送変電工事の設計施工を通して、創立70周年以上にわたって、中国地方の電力の安定供給に貢献している。
従業員数 3,853名
女性従業員比率 9.0%
女性管理職比率 0.7%

(2017年11月現在)

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代表取締役社長 小畑 博文氏

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  • 女性採用率UPのための施策と並行して、既存従業員の職域拡大を実施
  • 女性メンバーのみの「女性活躍推進ワーキンググループ」による活動
  • 意識改革を目的に「女性のみ」や「女性従業員と男性管理職とのペア」での研修を実施
  • 「管理職に占める女性比率1.5%以上」を目標に登用を促進

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1 女性採用率UPのための施策と並行して、既存従業員の職域拡大を実施

(株)中電工(以下、中電工)が本格的に女性の職域拡大への取組を開始したのは平成27年、「女性活躍推進法」施行の前年からである。一時的な「対策プロジェクトチーム」ではなく、責任を明確にし、確実に対応を進めるため、人事労務部内に「多様性推進担当」というポジションを設置。女性のみならず、高齢者や障害者も含め、多様な人材の柔軟な働き方を考えるという目的のもと「多様性」という担当名とした。ここでは、女性に関する取組にスポットをあて、紹介する。
まず課題として「女性比率が低い」「女性の職域が限られている」という点が浮き彫りになった。「男性は前線、女性は後方支援」という固定的役割分担意識があり、女性は新たな領域の仕事をしたり、キャリアアップを目指すことがなく、男性も女性の職域を広げて活躍させようという意識自体が低かったという。そこで、次世代法による「一般事業主行動計画」(※1)を策定。女性の職域を拡大し、男女問わず誰もがその個性や能力を十分に生かせる職場環境整備を進めるため「管理職に占める女性比率1.5%以上」「女性採用比率5.0%以上」という2つの目標を設定した(具体的な内容に関してこちら)。

まず、「女性採用比率5.0%以上」という目標については、今まで女性は事務系希望者の採用が中心であったため、「営業・渉外」と「設備工事等の技術職」を合わせた「技術系」職種の希望者も採用できるように積極的な活動を行った。女性限定の技術職説明会を開催したり、大手リクルートサイトで女性の「技術系」向けの募集をアピールするなど、取組を進めた結果、平成27年度に「技術系」を希望する女性採用実績が0人だったのに対し、平成29年度は、営業・渉外職1人、技術職4人、事務職1人となり、「事務系」より「技術系」が上回った(図1参照)。同社では男女ともに「工学系」出身であれば誰でも「技術系」に応募できる。また「営業・渉外」に関してはポテンシャルがあれば学科等は問わない。入社してほしいターゲットへの確実なアプローチと「技術系」で働きたいという女性のニーズが合致し、採用において職域を拡大しながら確実に女性採用比率を伸ばす。井ノ口執行役員人事労務部長は、「これまで、設備工事業は女性の活躍が難しく、女性は補助的な業務のみという先入観がありましたが、これからは事務職に限らず、技術職や営業職にも活躍の場を広げ、『女性にはできない』という意識をなくすことが必要だと考えます」と述べる。

図1 過去3年の女性の新卒採用者(職種毎)の推移
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type2_chudenko_4.jpg採用においては「女性の職域拡大」の成果が表れつつあるが、すでに長く働いている従業員に対してもアクションを求められる状況になった。同社の女性従業員の平均年齢は40代で、20数年前にOA化をしたタイミングで大量採用した女性がその大部分を占める。そうした女性従業員に対する職務転換を3年前から実施。工事・営業事務系を担当している女性従業員8名を総務・労務系事務や営業・渉外に異動させる試みを行った。しかし、20年近く同じ仕事をしていたため、新しい仕事への急な配属、一から新しい知識を習得することに対する戸惑いが大きかったという。そういった状況を目の当たりにした永原多様性推進担当課長は「女性活躍といっても『女性』をひとまとめにするのは違うのだということを知りました。年代や個々人によって意識が全然違いますから。様々な取組を通して言えることは、個々の事情に応じたキャリア形成を支援する必要があるということです。今後は、さらに適性に沿った配置転換等を進めていく必要があると思います」と述べる。

(※1)次世代法「一般事業主行動計画」…次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間、(2)目標、(3)目標達成のための対策及びその実施時期を定めるもの。従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられている(100人以下は努力義務)。


2 女性メンバーのみの
「女性活躍推進ワーキンググループ」による活動

type2_chudenko_5.jpg平成27年の多様性推進担当の設置を契機に「女性活躍推進委員会」を発足させた同社。毎月、主な部署の課長などが集まって会議を開き、女性採用や研修、職域拡大等についての現状報告や意見交換がなされている。しかし、その構成メンバーは男性のみ。これでは女性の意見が反映されないのではという発言を受けて、平成28年8月、女性のみの「女性活躍推進ワーキンググループ」が発足した。メンバーは現在8名で、参加は立候補制をとっているため、女性活躍推進に対して思い入れの強いメンバーが集まっているという。これまでの活動として、①女性の意見交換会、②情報発信、③社外との交流会があり、月に1回の全体会議のほか、個別の活動を行っている。

type2_chudenko_6.jpg「① 女性の意見交換会」は、メンバーが各事業所をまわりながら女性の意見を吸い上げ、その中で重要な意見は「女性活躍推進委員会」に提言する。例えば、これまで女性の従業員数が増えているにも関わらず、「女性トイレ数が少ない、女性の更衣室が狭い」などの問題があった。外部から女性のお客様を迎えるにあたっても不便な状況があり、社内からの意見を受け、順次改善を図っていくことが「女性活躍推進委員会」で決定された。
「② 情報発信」としては、女性従業員にフォーカスした女子学生向けの採用パンフレット作成に携わった。また、両立支援制度等の社内規程がどこに書いてあるのかわからないという意見を踏まえ、ワーキンググループのWebページに人事制度や育児・介護などの情報を掲載した「会社生活を送るためのマニュアル」を作成し、周知を図った。さらに、「管理職の方の本音を聞きたい」という声を受けて、平成29年8月より「管理職へのインタビュー」記事もワーキンググループのWebページに掲載を開始。メンバーが事業場長や課長に話を聞き、その内容を月2回のペースで更新しているという。
「③ 社外との交流会」としては、女性活躍の先進企業への訪問やセミナーへの参加を通して取組事例を収集したり、平成29年2月には中電工主催で「スマイル交流会」を開催し、「女性活躍」に取り組んでいる広島県内の企業や「設備女子会」(※2)のメンバーに声を掛け、意見交換会を行った。

こうした積極的なワーキンググループの活動に対し、「従来のままで良い」と考える従業員も多く、目的や意義が十分に理解されていないと感じることもあるそうだ。男女関わらず、こうした取組に理解を示してもらえるよう社内全体の意識改革が急務であると言えそうだ。

(※2)「一般社団法人建築設備技術者協会」が主催。建築設備業務に関わる女性の地位向上、活躍の場を広げることを目的に、平成24年発足。


3 意識改革を目的に「女性のみ」や
「女性従業員と男性管理職とのペア」での研修を実施

平成28年に女性従業員の意識改革を図る目的で「キャリアデザイン研修」を実施した。外部講師を招き、女性従業員のみを集めて、過去のキャリアを踏まえて未来のキャリアを考えた。研修内容もさることながら、これまで研修の機会すらなかった女性従業員にとって、非常に新鮮な場になったと好評だったという。中でも支社単位で受講者を集めたことで、これまで電話でしかやり取りをしていなかった管内事業所の人と交流することができ、以降業務がよりスムーズになったという声も多かったそうだ。しかし、研修後のアンケートにおいて、受講者の年代によって研修の捉え方が異なったことから、翌年は年代別の研修に変更した。女性従業員を10年刻みでグループに分け、男性管理職とのペアで参加させた。上司とのコミュニケーションや女性活躍推進の必要性を女性従業員に理解してもらうことを目的にし、「そもそも女性活躍推進とは?」「あなたが上司だったら、女性活躍に乗り気でない女性に対してどう対応するか」といった議題でグループワークを実施した。若い世代には管理職に向けての土台作りを、熟練世代には女性従業員の育成に対する意識の変化を期待する。
井ノ口執行役員人事労務部長は「研修の効果はすぐには出ないと思いますが、『上司が部下に意識を変えることを期待する、部下自身も期待に応える』など、風土を少しずつ変えていけたらと思っています。その中で、管理職を目指す人を増やし、ロールモデルを担う女性を育成していきたいと考えています」と語る。

4 「管理職に占める女性比率1.5%以上」を目標に登用を促進

type2_chudenko_7.jpg「管理職に占める女性比率1.5%以上」を目標にし、平成27年度から女性従業員を積極的に管理職に登用している。平成26年度は女性管理職ゼロであったが、平成29年度には12名が管理職として活躍している。米子営業所の業務課長となった平田さんに話を聞いた。

入社以降、鳥取県内の営業所で総務、労務、経理、工事事務一般業務を担当した平田さんは、家族の助けを得て、子育てと仕事を両立してきた。中電工は女性の平均勤続年数が23年と男性の19年よりも長く、昔から結婚・出産で女性が辞める例は少なかったそうだが、当時は両立支援制度や残業時間削減への取組等が進んでいなかったため、やはり両立は大変だったそうだ。平成27年に米子営業所の業務係長に昇進したが、それまで女性の係長職がいなかったため、想定外の人事に戸惑ったという。担当者としてこなしていた実務を部下に任せ、部下の仕事を集約・管理するといった管理業務に変わった。「(係長昇格の辞令を受けた後)最初は、『まさか?!』という気持ちでした。これまで、研修を受ける機会や資格を取ることもなかったので、不安ばかりでした。しかし、実際には部下のがんばりに支えられ、チームで助け合うことでより大きな仕事ができるという達成感を得る経験に恵まれ、チームの力をどう引き出すか、管理職としてまとめて引っ張っていく能力を養いたいと思えるようにもなりました」。係長になって初めて、社内研修で本社に行くことができたこともうれしかったという。そうして平成29年、米子営業所の業務課長に就任。現在では2カ月に1度程度、本社に研修や会議で行く機会があり、これまで以上に視野や人脈が広がっているそうだ。精神的なプレッシャーやマネジメントの難しさを感じつつも、自身の意見が発言できる立場になり、今後は事業所全体を把握し、円滑に仕事が流れるよう実力、知識、人間づくりの向上に努めていきたいと話す。

「これまでは、男性が主、女性がサポートという役割分担であったため、急な方針の変更に気持ちがついていけていない面もあると思います。一方、昔に比べて上司が家庭環境に配慮する雰囲気があり、制度整備も進んで、女性にとって働きやすい環境が醸成されてきたと思います。これからの時代、女性であっても組織のリーダーに成り得るため、自己啓発に努め、自分の意見・意志をもって仕事をすることを心掛けてほしいと思いますし、管理職として次の女性リーダーが能力発揮できるような職場づくりをしたいです」と語る。

取材担当者からの一言

中電工は、平成26年度まで女性管理職比率0%であった。「女性活躍推進法」に押され、まさにゼロからスタートした企業である。中でも大きな課題は、長年続いてきた「男性は前線、女性は後方支援」という社風をどう変えていくかである。トップ主導での女性従業員の配置転換や女性管理職登用に対する現場の戸惑いが伝わってくる一方、「研修で本社を初めて見ることができた」「他の事業所の女性従業員と交流できてよかった」といったポジティブな女性従業員の反応に光が見えた。女性従業員に固定的な事務作業という役割や業務しか与えていなかっただけで、期待して育てれば女性が活躍する組織となっていくのだろう。時間は要すると思われるが、今後社風や従業員の意識がどう変わっていくのか注目したい。重要なのは、永原多様性推進担当課長が語るように「個々の事情に応じたキャリア形成」。「女性」とひと括りに考えるのではなく、個々の能力や状況に寄り添った配置、登用で着実に成果を挙げることだ。広島県内のリーディングカンパニーであるからこそ、その取組の重要性は大きいと感じた。


type2_chudenko_8.jpg●取材日 2017年9月
●取材ご対応者
執行役員 業務本部副本部長兼人事労務部長 井ノ口 啓二 氏
業務本部 人事労務部 多様性推進担当課長 永原 泰介 氏
業務本部 人事労務部(多様性推進担当) 城田 和子 氏