女性活躍優良事例

「伝統ある会社だからこそいち早く改革し、
女性が働きやすい企業のお手本に」

寺岡有機醸造株式会社

  • 製造業
  • 福山市
  • 31〜100
  • 方針・取組体制
  • 両立・継続支援
認定マーク
所在地 広島県福山市神村町3685-1
URL http://www.teraokake.jp/
業務内容 1887年、寺岡伍一(寺岡家第十代当主)により寺岡醤油醸造場創業。以来、130年間醤油の製造販売を続けてきた老舗。杉桶による伝統製法と有機原料にこだわった商品が特徴で、2001年には有機JAS認証を取得した。通常の醤油の他に、さしみ醤油、だし醤油、ポン酢等幅広い商品展開を行い、2007年には「たまごにかけるお醤油」が爆発的ヒット。全国に「寺岡家のお醤油」を広めるきっかけになった。福山市に本社兼醸造蔵、事業本部兼中国営業所を構え、広島市、東京、大阪にも営業所を持つ。
従業員数 47名
女性従業員比率 40.4%
女性管理職比率 22.2%

(2017年10月現在)

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代表取締役 寺岡 晋作 氏

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  • 従業員に長く勤めてもらう仕組みとして、個々の事情に応じた勤務形態を用意
  • 時間外労働時間を1年間で大幅縮小。女性の有給休暇取得率は99%に
  • 未来への生き残りを見据えて「選ばれる会社になる」「国際化への対応」のための改革

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1 従業員に長く勤めてもらう仕組みとして、
個々の事情に応じた勤務形態を用意

「寺岡有機醸造 寺岡家のたまごにかけるお醤油」の製造で有名な寺岡有機醸造株式会社(以下、寺岡醸造)。醤油の製造工程には、①麹作り→②発酵・熟成(もろみ作り)→③圧搾→④調合・火入れ→⑤検査→⑥充填(醤油を瓶や小袋等に詰める作業)→⑦出荷といった仕事があるが、①~④までは重労働が多く、「もろみ作りは男の仕事」という伝統もあって主に男性が担っている。一方で、⑤以降の検査、充填、出荷においては女性の活躍が目立つ。手先が器用、細かい点によく気がつく長所が生かされているセクションだ。

役割分担は明確であるが、製造への従事者は男女半々。女性に限っては、全女性従業員の73.7%が製造に従事しており(男性同比42.9%)、製造部への関与の高さが伺える。製造部内では、誰が休んでもカバーできるようジョブローテーションを実施、育児や介護等急な休みに対処できる仕組みを整えている。

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同社では、人手不足への対策として個々の事情に配慮した「働き方の選択肢」を設けている。「できるだけ従業員に働き続けて欲しい」という社長の想いから、家庭の事情に応じた勤務形態をその都度、選ぶことができる。例えば、同社には「フレンド社員」と呼ばれる勤務形態がある。いわゆるパート従業員のことであるが、同社の場合「時給制」「特別休暇なし」「慶弔の祝い金の額が異なる」といったことを除けば、正社員と待遇に関して大きく変わるところはない。7時間労働が基本で有給も利用しやすく、融通が利きやすいという理由から、製造部に従事する女性従業員のほとんどが「フレンド社員」を選択している。

また、「フレンド社員」と「正社員」の他に、「契約社員」という勤務形態も設けている。これは、会社定休日以外にも定休日を設定する従業員だ。「有期契約」以外に待遇に関して正社員と大きく変わることはないため、事情により毎日の出勤が難しくなった正社員が利用している。従来どおりの勤務が困難となった社員に対し、時給制の「フレンド社員」か「退職」かの2択しか選択できないのは従業員にとっても不安な要素であると考えたことと、これまで育成してきた従業員を手放すのはもったいないという企業側の従業員を大切にする考えから「契約社員」という形態を整備した。
反対に「フレンド社員」から「契約社員」を経て「正社員」となる道も用意する。「フレンド社員」から直ぐに「正社員」に形態変更するのではなく、一旦「契約社員」となって段階を踏んだ後「正社員」になる方が本人も納得しやすいなどの理由で離職防止策のひとつとなっているそうだ。

こういった会社の取組により、女性の定着率は高い。平成29年の女性の平均勤続年数をみると10.0年で、男性より1.1年も長い。また、この「フレンド社員」「契約社員」等の勤務形態は女性だけが利用しているわけではない。「契約社員」は現在、男性従業員のみが利用しているといい、男女問わず長く働き続けられる仕組みとなっている。

「女性活躍」という視点では、製造部以外にも同社では「商品開発」において女性が男性と同等に配置され、活躍している。開発部企画グループが商品のコンセプトや材料を決め、それを元に品質管理課が味や成分値を決めるという具合に、2つの部門が共同で商品開発を進める。平成29年10月現在、品質管理課の3分の2は女性で、そのうち1名は管理職である。(品質管理課課長代理の森本さんついての記事はこちら)森本さんの長年のご経験と勘、そして強いリーダーシップの下に「たまごにかけるお醤油」に続く次世代のヒット商品を開発中だ。

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2 時間外労働時間を1年間で大幅縮小。
女性の有給休暇取得率は99%に

寺岡醸造では、働き方改革の重要性が世間で叫ばれる前の平成25年から、①「時間外労働の削減」②「有給休暇取得率向上」の取組を本格的に実施してきた。取組のきっかけには新海専務執行役員の働き方に対する強い想いがあった。①に関しては、「時間外労働の根本的な問題は、時間外手当が生活給になっているから」と分析し、まず前段階として平成20年に基本給を上げている。しかし、それ以降も21時頃まで残っている営業担当がいたため、平成25年に取組を強化し、全社で「残業ゼロを目指す」と決め、徹底した時間管理を実施した。具体的事例として、営業従業員の場合、外出時の打刻を義務付けるなど、労働時間に対するアウトプットを個々に意識させ、効率化を促した。

平成25年の導入当時は、「残業なしで仕事が終わるのか、残りの仕事を誰がやるのか」と不満気だった営業担当も、半年後には生産性の向上を趣旨とした管理を理解するようになった。今では18時(製造の定時は17時半、事務の定時は17時50分)には会社がシーンと静まり返るほどになり、数値にも結果が表れた。フレンド社員以外の従業員(※1)の平成28年、一カ月当たりの時間外労働時間は取組前(平成23年)と比べて一人当たり2.22時間減り、2.84時間となった。時間外労働時間の削減に成功した理由を、新海専務執行役員はこう分析する。

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専務執行役員 新海広伸 氏

「不満を訴えた人は、長時間労働が美徳、がんばった証だと考えていた一部の従業員だけです。前段階として基本給をしっかり上げた影響もあってか、多くの従業員は会社の方針に賛同してくれました。時間外手当が生活給となっているのは、長い目でみると会社・個人双方にとってプラスではありません。『働いた時間の長さ』『休まないこと』を評価する傾向があることは深刻な問題です。基本給をアップさせて従業員のやる気を高め、どこにいても通用するUTTプレイヤー(※2)になれば必ず時間短縮はできるはずです」と話す。

また、この取組において特筆すべきは、時間外労働時間が減っても営業成績は下がらなかった点だ。「業績と労働時間は比例しない」と新海専務執行役員は見る。「従業員には『作業ではなく仕事をしましょう』と伝えています。作業は時間と人を増やせば解決できるけれど、仕事は解決できない。だから、いかに仕事をするかが大事なんですね。でもパワーは要りますよ。そのためにもONとOFFの切り替えをいかにうまくしていくかが重要でしょうね」。

 同社の特徴としてもう1つ注目したいのは、「有給休暇取得率(※3)の高さ」にある。取組を始める前(平成23年)はフレンド社員を除く従業員の有給休暇取得率は、41.7%だったものの、平成28年には86.5%と44.8ポイントも上昇している。


図1. 寺岡醸造における有給休暇取得率の推移

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特に、女性従業員に限っては99%とほぼ全員が有給休暇全日を取得している。新海専務執行役員のリーダーシップのもと「有給休暇7割消化」の目標を掲げて実践した結果がこれだ。毎期首に従業員全員に1年間の有給休暇の計画を提出させている。しかし1年先のことまでわからないと不満を訴える従業員もいた。そこで「計画は計画として提出する。後に、変更しても良いから付与された有給休暇のうち7割は必ず消化するように」と経営管理部から話をし、目標達成に近づけている。  

寺岡醸造は土日祝が公休でないため、有給休暇を土曜日に充てることを希望する人が多い。土曜日に有給休暇者が集中し過ぎないよう調整しながら、できるだけ柔軟に取得できるよう個々の状況に応じた配慮を行っている。

新海専務執行役員は有給休暇制度について「取得が従業員の“義務”」と語る。「有給休暇にしても産休育休にしても従業員の“権利”ですから、会社として当たり前のことをしているだけですよ。管理部で年に2回のフレンド社員へのヒアリングを行い、会社にとって必要な情報を吸い上げながら、従業員からの意見を反映するようにしています。不満を解消しながら制度を改善していくことで当社の従業員満足度は高いと思います」と専務のこういった自信のある発言からも取組が成功していることを証明していると言えるだろう。

※1 フレンド社員を除く正社員、嘱託社員(60歳以上の再雇用)、契約社員のこと
※2 ユーティリティープレイヤー(Utility Player)の略。
1人でいくつものポジションをこなすスポーツ選手を指すことが多い。
※3「有給休暇取得率」は、年次有給休暇取得日数÷年次有給休暇付与日数×100で算出

3 未来への生き残りを見据え
「選ばれる会社になる」「国際化への対応」のための改革

このように新海専務執行役員が働き方改革を進めてきた背景には「選ばれる会社になる」「国際化への対応」という2つの目的がある。

「少子高齢化が進み、生産年齢人口が縮小する中で人を集めるためには選ばれる会社にならなければいけないと考えています。今、会社を選ぶ価値観、世の中が求めるハードルが変わりつつあります。業績や生産性だけでなく福利厚生を充実させ、家庭との両立をサポートし、従業員のポテンシャルを高めるということを通じて『あの会社良いよね、あの会社でがんばりたい』という印象が生まれます。そして、それが結果的に従業員の幸せ、会社の業績、社会貢献につながっていくと考えています。何よりも『人を大切にする』ことは大きな価値ですよね。世間や時代に求められる前に自ら整え、論より証拠として実践することが重要だと思っています」と新海専務執行役員はいう。

さらに「選ばれる会社になる」ためには、「国際化に対応できる柔軟性も大事」だと同氏は訴える。「日本はOECD(※4)の中で生産性が低く、ヨーロッパに出遅れています。国際化が進み、これから異なる文化を持った人たちに商品を提供していくためには、自らも発想を変えていかないといけません。ヨーロッパのように当たり前に休める環境、産休育休は取って当然という雰囲気・風土をつくることが大事ですし、それに業績と労働時間は比例しないという事実を示していくことも必要です」。
福山市の100年企業はすでにはっきりと世界を見据えて未来へ向かっている。

※4 OECD…「Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構」の略で、本部はフランスのパリ。
先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、1)経済成長、2)貿易自由化、3)途上国支援に貢献することを目的とする機構である。日本は1964年に加盟。

取材担当者からの一言

明治に創業した寺岡醸造は、女性の活躍、働き方改革について世間の動きよりも早い時期に取り組み、成果を上げてきた。「残業代に頼る考え方」からいち早く脱却するため、ただ単に「残業しないで」と従業員に呼びかけるのではなく、基本給のベースアップを先に行い、従業員が納得する形で時間外労働を削減してきた。
また、専務執行役員の強いリーダーシップに導かれ、改革を進めたことが比較的短期間での成果をもたらしたのだろう。昔から続いてきた伝統を守るためには、時代に則した改革が必要であり、これこそが企業の存続発展につながると考える。

type2_teraoka_7.jpg●取材日 2017年10月
●取材ご対応者
専務執行役員 新海 広伸氏
経営管理部 課長代理 小森 みゆき氏