女性活躍優良事例

「女性管理職率が50%越えの背景には
『子連れ出勤』など独自の施策」

サンキ・ウエルビィ株式会社

  • 医療・福祉
  • 広島市
  • 301以上
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 職場風土
所在地 広島市西区商工センター6丁目1番11号
URL http://www.sanki-wellbe.com/
業務内容 サンキ・ウエルビィ株式会社は、中国4県(広島県、山口県、岡山県、島根県)に100以上の事業所を展開し、介護が必要でない高齢者の方から中・重度の介護が必要な方までをサポートする、様々な介護保険サービスや生活支援サービスを提供している。また、介護に関する教育講座の開催など教育関連事業も手掛ける。
従業員数 1,889名
女性従業員比率 88.0%
女性管理職比率 55.6%(拠点長を含めると79.2%)

(2017年8月現在)

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代表取締役社長 川本 康晴 氏

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  • 人材不足を背景に「女性が働きやすく、離職しない職場環境づくり」へシフト
  • 採用数増に向けた女性向け広報誌の発刊と「再雇用優遇制度」
  • 「子連れ出勤制度」「育休や時短の延長」「介護休暇365日」など法を超えた手厚いケア
  • 女性管理職の多さで、昇進への抵抗感を払拭

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1 人材不足を背景に「女性が働きやすく、
離職しない職場環境づくり」へシフト

女性比率と女性管理職比率ともに高い医療・福祉業界であるが、その業界平均をさらに上回っているのが、広島市西区商工センターに本社を構えるサンキ・ウエルビィ(株) (以下、サンキ・ウエルビィ)だ(図1)。中国4県に100以上の事業所を置き、高齢者への訪問介護サービスを中心に、デイサービスやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの居住系サービス、また障害者への訪問介護や就労移行支援サービス、さらに介護職員初任者研修や同行援護従業者・ガイドヘルパー養成研修等様々な事業を展開する、中四国最大規模のリーディングカンパニーである。

冒頭にも述べたように、介護業界は他の業界と比べて女性の従事者が圧倒的に多く、また管理職登用がされていることから、女性の活躍が進んでいるといえる。しかし、年々進む高齢化により介護職員需要が急増する中で(15年間で約3.3倍、2025年には約38万人の需給ギャップが生じると推計※1)人手不足は深刻な課題となっており、サンキ・ウエルビィにおいても例外でない。

サンキ・ウエルビィでは、3~4年前から人手不足が顕著(平成29年の従業員数は平成26年比7%減)になり、従業員の高齢化に伴い、結婚や出産等のライフイベントにより退職する割合に比べ家族の介護で退職する割合が増えていた。こうした状況に対応するため、サンキ・ウエルビィでは「女性が働きやすく離職しない職場環境づくり」を目指す取組を開始。人材不足に対して「採用」「定着」の2つの切り口から対策を行うほか、キャリアに応じた研修制度を充実させ、管理職育成にも力を入れている。

※1 厚生労働省(2017年)「介護人材確保地域戦略会議(第5回) 資料1『福祉・介護人材の確保に向けた取組について』」

図1 業種別の女性比率、女性管理職比率と同社の位置

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2 採用数増に向けた女性向け広報誌の発刊と「再雇用優遇制度」

介護業界における人手不足の最も大きな理由は「採用の難しさ(応募者数の少なさ)」である※2が、サンキ・ウエルビィは新卒採用に関して、平成24年から男女合わせて10名前後の採用数を毎年確保している。
その背景には、新卒採用方法に工夫があった。
まず、自社ホームページやリクルートサイトの「採用情報」ページに、若手の従業員や女性管理職がイキイキと働いている写真やインタビュー記事を掲載。
新卒採用で入っても年代の近い先輩が働いていることや、和やかで明るい職場アピールすることで、学生が親しみやすいイメージを醸成している。(サンキ・ウエルビィの採用情報ページはこちら


type2_sankiwellbe_4.jpgさらに平成27年からは、女性が活躍できる職場であることを積極的に広報する目的で「ウエルビィ女子」を発刊。主にはリクルーティングのための冊子であるが、作成の目的はそれだけではない。1つは、同社だけではなく“大変な職業”という負のイメージがある介護業界全体のイメージアップを図ること、もう1つは、この企画により従業員の意欲向上を図ることだという。
その効果について尋ねると、「ウエルビィ女子」の発刊により応募者数が顕著に増加したとまでは言えないが、採用担当者が従業員の母校に持参するなど、採用につながる側面もあったそうだ。

また、「ウエルビィ女子」に掲載するための取材を受けた従業員は、「改めてサンキ・ウエルビィで働くということを考え、自分のキャリアを振り返ることができ、モチベーションアップにつながった」と話すなど、従業員の働く意欲の向上という効果もあったという。


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また、「ウエルビィ女子」発刊と同年に、退職理由を限定しない「再雇用優遇制度」を導入。過去に勤務経験のある従業員の再雇用にも着手した。退職前と同じ職種で戻る場合は退職時の賃金を保障したり、雇用契約等に関わる提出書類の提出ルールを緩和する等、スムーズな業務従事を後押ししている。現時点において実際に当制度を利用して再入社している従業員は数名程度であるが、今後制度を継続していく中で効果を期待する。

※2 (公財)介護労働安定センター『平成28年度 介護労働実態調査』

3 「子連れ出勤制度」「育休や時短の延長」「介護休暇365日」など
法を超えた手厚いケア

現在、サンキ・ウエルビィは社内の子育て世代が全体の34.2%と「ワーキングマザー」の割合が比較的高い。社内に両立や両立支援の意識を浸透させるため、全管理者には広島県が発行する、働く女性に関わりの深い、法的基礎知識や仕事と家庭の両立に役立つ情報などを掲載した「働く女性応援よくばりハンドブック」を配布している。また、産休・育休を取得する予定(将来も含む)の従業員には、適用できる具体的な社内制度の説明資料を配布し、両立支援制度に関する周知を行っている。

制度面に関しては、従業員がより継続就業しやすいように「育休は3歳まで」、「育児短時間勤務は小学校の就学始期まで」、「介護休業は通算365日取得(回数制限なし)可能」等、“法を超える”制度の導入を行っている。その結果、同社における産休育休の取得率はほぼ100%であり、夫の転勤等で中国地方の外に出るなどやむを得ない理由で辞める従業員を除き、結婚・出産を理由とした退職者はほとんどいない。こういった制度をさらに普及させ、今後は「介護と仕事の両立」ができる職場環境整備も目指す構えだ。

加えて両立支援制度の中で、サンキ・ウエルビィ独自の制度として特筆したいのが、平成28年夏から導入を開始した「子連れ出勤制度」だ。
子どもの預け場所が確保できない時に、事業所に子どもを連れてきても良いという制度である。制度導入から平成29年8月現在までに35名の従業員が利用している。
事業所の出勤形態はシフト制になっているため、例えば保育園の開園前に出勤しなくてはならない場合もある。そのようなとき、開園までの間子どもを事業所に連れてきてもよいというものだ。

また、研修等で帰宅時間が遅くなる場合、学校が終わって子どもが1人で留守番しなければならない状況が生じた場合などにも利用可能。利用する子どもの年齢制限も設けていない。
事業所に滞在する従業員が少ない訪問介護事業所においては運用が難しい制度ではあるが、介護センター等の事業所では、子どもが利用者の方々と一緒に遊ぶことで、利用者の笑顔が増えるなど、従業員の両立支援制度に留まらないプラスの効果も生んでいる。

そもそも同制度は、ワーキングマザーが多い一部の事業所で非公式に行われていたものであったが、時間による制約を少しでもカバーし合うことで離職を防ごうという従業員の声や、子どもとお年寄りが仲良くし、笑顔が増えるという効果に目をつけ、全社で「制度として」導入することとした。この制度ができる以前に、上司の配慮により子連れ出勤を行っていた経験のある現福山ブロック長の三島潤子さんは、「子どもが親の働いている姿を見られるので、年を追う毎に自分(母親)のことを理解してくれるようになる。また、利用者の方も子どもと遊べることを喜んでくれていたので相乗効果もあり非常に良かった」と話す。(三島さんの記事はこちら)

4 女性管理職の多さで、昇進への抵抗感を払拭

サンキ・ウエルビィでは「人づくり(人材育成)」が企業の原点と考えており、従業員が長期的に成長・活躍できるように、研修制度の充実や評価制度の整備を行ってきた。人事制度の基本構造やキャリアパスについても会社ホームページで公開することで、会社の思いを従業員、採用応募者に明確に伝えている。(図2、3)
人材育成に関しては、新人スタッフから経営幹部になるまでを段階ごとに分け、それぞれの段階に応じた人材像や知識・能力を明確にすることで、長期的視点に立った等級別の人事制度、研修制度を整備している。また、資格を取得しながらステップアップできるように「資格取得支援」を実施。会社が業務上必要な資格取得に係る費用の一部を負担している。
この支援の背景には、必要とする資格が決まっている介護業界の特性上、他の会社に行っても高いレベルで通用する人材になれるようにという業界全体のレベルアップを図りたい人事担当者の想いもある。

さらにはグループ内または外部の幹部養成研修への派遣や社内マネジメント研修の開催など、人材育成の取組も行う。人事面談は半期ごとに行い、本人の希望を含め、上司とキャリアパスを協議。そこで、上司からキャリア形成についてサポートやフィードバックを受けることにより管理職育成につなげている。平成29年7月時点で男性管理職9名に対して、女性管理職は14名。ロールモデルが多くいるため、女性が管理職になることへの抵抗は少なく、当たり前の風土となっているそうだ。

図2 研修制度とキャリアパス

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図3 人事制度の基本構造

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取材担当者からの一言

福祉業界は他業種に比べて、女性活躍が進んでおり、見習うべき点が多々あるはずだ。
サンキ・ウエルビィは、女性活躍が必須な業種であるため、完全に平等なキャリアパス、評価、研修、賃金制度等が整備され、結果として女性管理職が50%近い。
ロールモデルが多数いることで女性が管理職になるのはごく自然な流れとなっている。他業種が見習うべきは、当たり前のことではあるが性別に関係なく処遇すれば、きちんと管理職として活躍してもらえるという点ではないか。

一方、介護業界の人手不足はたびたびマスコミにも取り上げられており、よく知られるところである。そのような状況下でサンキ・ウエルビィでは、目先の「人材確保」ではなく、今後の業界を支えていけるような人材を育成することに力を入れているのが特徴である。介護サービス事業を行う会社の根底として「人づくり」が大切であると強調し、従業員がより良い環境で長く介護職として活躍できるように、人事担当として会社の制度整備に尽力する話が印象的だった。


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●取材日 2017年8月
●取材ご対応者
写真左:経営企画室 取締役室長 武部 清隆 氏
写真右:人事部 取締役部長 川本 雅夫 氏