女性活躍事例

「イベント対応のためのフレックス制が
ワーキングマザーにとって追い風に」

株式会社サンフレッチェ広島

  • サービス産業
  • 広島市
  • 31〜100
  • 両立・継続支援
  • 職場風土
所在地

広島県広島市西区観音新町4-10-2
広島西飛行場ターミナルビル1階

URL http://www.sanfrecce.co.jp/
業務内容 (公社)日本プロサッカーリーグ(通称、Jリーグ)が設立された翌年の1992年、プロサッカー事業を展開する株式会社サンフレッチェ広島が設立された。事業内容としては、プロサッカーチーム サンフレッチェ広島FCの運営、サンフレッチェグッズの販売、サッカー競技及びその他のスポーツ協議会等各種催し物の企画運営、サッカー教室の運営並びにサッカー指導員の養成、派遣を行っている。地域に根差したスポーツクラブとして、サッカーを通じて青年健全育成・スポーツ振興・地域貢献・社会貢献に寄与することを目的としている。
従業員数 46名
女性従業員比率 39.1%
女性管理職比率 15.4%

(2017年9月現在)

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代表取締役社長 山本 拓也氏

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  • 子育て層が働きやすいフレックス勤務制度と「産休育休は当然」という社風で、女性の高定着率を実現
  • トップダウンではなくボトムアップからの環境づくり
  • 勤怠管理システムの導入で、複雑な労務管理をスムーズに
  • 「管理職育成」における次なる課題

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1 子育て層が働きやすいフレックス勤務制度と
「産休育休は当然」という社風で、女性の高定着率を実現

type2_sanfrecce_3.jpg「当社は社風としてフレックス勤務しやすいです。子供の参観日があるからと早退し、そのまま戻って来ない従業員も普通にいるくらい、決められた勤務時間内に、個々が求められた範囲の仕事をすれば良いという風土があります」と語るのは、株式会社サンフレッチェ広島(以下、サンフレ)の杉原総務部部長(以下、杉原部長)。プロサッカーチームの運営を行う同社は、土日祝日やナイターなどイベントが多く、勤務時間を固定化しにくい業種である。

そのため早くからフレックス勤務制度を導入し、仕事はもちろん、プライベート等の都合に合わせて働きやすい職場環境を整備してきた。特にフレックス勤務制度をフル活用しているのがワーキングマザーだ。子供を午前中病院に連れて行かなければならない時も、勤務時間を調整することでカバーすることが可能であるからだ。

フレックス勤務制度に加えて、「産休育休も当たり前」というのがサンフレ従業員の共通認識である。女性従業員は、当然の権利として法定の産休育休を取得し、特別な事情がない限り、職場復帰することが通常である。杉原部長が他社の友人と話した時、法定の制度があるのにそれを使えていない従業員がいるという話を聞いて驚いたというほど、サンフレでは当然の風土であり、女性の平均勤続年数は、男性の7.0年に対して7.2年と同水準となっていることからもそれが覗える。

サンフレは、全従業員数が46名と小規模なので、産休育休で抜けた穴は残った従業員でカバーしている。男女区別なく「すべての業務を全員で行う」という意識が根本にあるようだ。例えば、普段は事務所で勤務している従業員も、試合があれば、準備から片付け、受付等まで何でも行っている。様々な業務を経験してきた従業員が正規、非正規問わず多く在籍し、お互いにカバーできる状況をつくり、チームプレイで業務を行っている。

2 トップダウンではなくボトムアップからの環境づくり

type2_sanfrecce_4.jpg制度がいくら整備されていても、それが利用できなければ意味がない。サンフレにおいて、ワーキングマザーが働きやすい理由は、ワークライフバランスを大切にする社風にもあるようだ。実は設立当初からそのような風土であったわけではなく、社会情勢に合わせて少しずつ醸成されてきたのだという。

興味深いのは、こういった風土が経営トップからではなく「ボトム」、つまり長く勤務する従業員からつくられてきたということであり、経営者もこの風土を尊重している。社長、本部長等の経営層が3~4年周期で変わるため、働き方など仕組みがうまく機能しているものに関しては、これまでトップダウンで変更されたことはない。産休育休の取得、子供の病気に係る早退、学校行事への参加など、これまで従業員が実践してきた習慣が自然と引き継がれ、「ボトム」が中心となって働きやすい環境をつくってきたという。

また、ナイター試合の片付け等で24時まで業務が終わらない時も、家庭の事情がある従業員は先に帰宅させるなど、制度だけでカバーできない部分は従業員同士の配慮によって実現させてきた。ボトムアップでつくられた風土だからこそ不満も少ないようだ。

3 勤怠管理システムの導入で、複雑な労務管理をスムーズに

フレックス勤務制度は従業員にとっては柔軟に働ける制度であるが、一方、企業にとっては従業員の労務管理が難しいという側面がある。

従来はその管理を手作業に近い形で行っていたが、平成23年、数百万円をかけ「勤怠管理システム」を導入した。このシステムに変更したことで、タイムカードでの管理を廃止し、各自が出勤退勤、残業、休暇等をシステム上で申請、その都度上司が承諾している。このシステムにより、誰がいつ働いているのか、また各個人がどれだけ働いているのかを総務部で簡単に把握できるようになった。例えば、子育て中の従業員が所定時間よりも少なく働いていた場合、足りない時間をどのようにカバーするかが「見える化」される。これらを人事面談時の参考にしているといい、労務管理の枠を超えた活用がされているようだ。

4 「管理職育成」における次なる課題

今後の課題として、男女ともに管理職の育成が挙げられる。
杉原部長は「管理職になれば、1プレーヤーとして動くやり方とは異なり、部や部下のマネジメントが求められ、リーダーシップを発揮する必要があります。こういったことを日々の業務の中で自ら学びながら身につけていった管理職もいれば、未だに1プレーヤーのままで十分なマネジメント力を備えていない人もいますので、研修制度等により『管理職としての働き方』を指導していく必要があると考えています」と述べる。

女性に関していえば、ワーキングマザーが働きやすい反面、管理職を目指さない者が多いという課題がある。土日や祝日、夜の時間帯に業務が入ることが多く、リーダーはできるだけ現場にいることが望まれる。つまり管理職になると必然的に不規則な勤務時間や土日祝などの勤務が増える形態を取らざるを得ない。そのため、今の生活リズムを崩してまでそういった働き方を選び、管理職を目指すという女性がほとんどいないのが実情だという。

杉原部長は「女性自身が昇進昇格を望めば、もちろんそれを止める者は社内にいません。本人に働き方の希望を聞いて、業務の割り振りを行っているのが現状」と話す。実際、サンフレには女性管理職が2名おり、その内の1人、事業本部商品企画販売部部長の石川さんは、パート従業員で入社したが自身の希望で正規の従業員になり、その後も主任、担当長、課長、部長と実績評価に応じて登用されている(石川さんの記事はこちら)。

今後、サンフレにおいて管理職を目指す女性を増やすためには、現在の管理職の働き方を見直す必要があるのかもしれない。

取材担当者からの一言

変形労働時間制の1つであるフレックス勤務制度を採用している会社は全体の4.6%(図1)となっており(※1)、広島県内でも現在、数十社が導入しているようだ(※2)。各企業における制度の導入目的は様々で、朝の通勤ラッシュを避けるなど、従業員のメリットのみを重視した目的のものは、単に出勤時間を遅らせる制度として形骸化してしまい、失敗するケースもあるという。現に、従業員からの評価が高くても当制度を廃止する企業もあり、1,000人以上の大企業に関してはピーク時から大きく減少している。

サンフレは、プロサッカーチームの運営という特殊な業種であり、平日のみの決まった時間内に全員が業務を終えるという形は取れないことを理由に、「会社のため」に導入したフレックス勤務制度が結果として従業員にとっても働きやすい制度としてうまく機能しているといえる。また、制度の運用状況を「見える化」することも重要だと感じた。50人未満という規模を生かして、会社及び従業員同士で状況を把握し、運用を上手く行っている様子がうかがえた。

※1 出典:厚労省平成28年就労条件総合調査
※2 出典:広島県商工労働局雇用労働政策課平成28年10月「県内企業働き方改革取組実態調査結果報告書」

図1 フレックスタイム制を導入している企業の割合の推移
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出典:内閣府 男女共同参画白書 平成28年版

●取材日 2017年9月
●取材ご対応者
管理強化本部 総務部部長 杉原 寛和 氏