女性活躍優良事例

「柔軟な働き方、活躍推進風土の醸成により、
若手の定着率アップを目指す」

株式会社アクセ

  • 卸売業・小売業
  • 尾道市
  • 31〜100
  • 方針・取組体制
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 職場風土
所在地 広島県尾道市久保1-8-1
URL http://corporate.parigot.co.jp/
業務内容 株式会社アクセは、1925年に衣料品雑貨小売商「髙垣大安店」として、尾道に創業。以来、既製服を中心とした総合衣料店として発展、現在では関東、中四国地方、合わせて9店舗を構える。事業内容は、小売事業だけでなく、E-コマース事業、オリジナルブランド事業、グローバル事業、ファッションビル事業も展開している。
従業員数 98名
女性従業員比率 83.2%
女性管理職比率 72.2%

(2018年1月現在)

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代表取締役社長 髙垣 圭一朗 氏

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  • 顧客のニーズに寄り添える環境を作るため、女性活躍を推進
  • 「有志社員によるプロジェクトチーム発足」「読書習慣」で従業員の能力開発
  • 全社員正社員化と、「フレックスキャリアチャレンジシステム」で家庭との両立をサポート
  • 社長の意識、ロールモデルの存在が活躍推進の風土を醸成

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1 顧客のニーズに寄り添える環境を作るため、女性活躍を推進

 (株)アクセ(以下、アクセ)は女性従業員比率が83.2%、また女性管理職比率も72.2%と非常に高い。女性の活躍が際立つ企業であるが、同社の課題を訪ねると「若年層の定着」にあるという。一般的にアクセが属する小売業界は若年層の離職率が高く、大卒就職者の3年以内の離職率をみると、産業分類上の17の業界の中でも第4位(※1)の高さとなっている。

アクセにおいても、結婚・出産で離職する30代前後の女性従業員が多いことは経営課題の1つとなっている。「アパレル販売の仕事は若い時だけ」といった一般的なイメージも背景にあるのではないかと同社は分析する。

type2_acces_3.jpgアクセでは、この課題に対応し、従業員(特に全従業員の83.2%を占める女性従業員)の定着を促すため、「従業員の能力開発」「両立支援制度の充実」「長く働きやすい職場風土の醸成」「ロールモデルの活用、育成」といった様々な取組を実施している。取組のきっかけには、優秀な人材の流出や人材確保の問題対応に加え、「顧客のニーズにより寄り添える店舗を作りたい」という経営層の想いがあった。アクセの20代~70代といった幅広い顧客層に合わせた販売スタッフを各店舗に配置することができれば、顧客ニーズに共感しながら接客することができ、売上増につなげられるというメリットがある。そのためにも、若手の離職を防ぐとともに、幅広い年齢層の販売スタッフを確保することを目指しているのだという。

※1 出典;厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成26年3月卒業者の状況)」


2 「有志社員によるプロジェクトチーム発足」「読書習慣」で従業員の能力開発

定着率向上のためには「やりがいを持って働ける職場環境」の整備が重要である。この職場環境を実現するため、アクセには有志からなる3つのプロジェクトがある。例えば、地方店の活性化を図る「地方プロジェクト」や首都圏での認知拡大・売上拡大を目的とした「首都圏プロジェクト」などで、「若いうちから責任のある仕事を経験できる」場を作っている。

若手からベテランまで自由に参加することができ、1つのプロジェクトは6~10名と少人数であるため、若手でも意見が言いやすい雰囲気だという。また、社長、副社長もメンバーの一員として参画し、若手の意見に直接耳を傾ける。このプロジェクトにおいて自ら発案したテーマについて討議し、賛同が得られれば実現につながるため「自分が会社を動かしている」という実感を得られるとともに、やりがいにつながるよう工夫されている。また、経営陣から直接指導を受けながら論理的思考力、分析力等を磨くことができ、人材育成の場の1つとなっているようだ。

プロジェクトを進める上でも、日頃の業務においても「自分で考える力」をつけることは欠かせない。そのためにアクセで最も力を入れているのが「読書の習慣付け」である。「自己啓発を行うことで、人間力を磨いて欲しい」という経営陣の方針もあり、入社前から内定者にビジネス書を渡し、入社後も月に3~5冊程度の読書を推奨する。また、読書を習慣付けるため、人事考課制度の「自己啓発」という項目において読書習慣を評価し、特に若手従業員の「自己啓発」の評価は重要視しているのだという。

こういった取組の効果として、入社2~3年目で仕事が辛くなってきた時に先人の言葉に救われた、管理職になってマネジメントの仕方を本から学んだ、といった現場の声が聞かれるようだ。経営陣としては、読書を通じて「人間力を磨いてほしい」という想いもあるそうで、経営推進本部人事担当の川邊氏は、「弊社のような視点で、社員教育にも力を入れている会社は、アパレルでは珍しいのでは」と話す。

3 全社員正社員化と、「フレックスキャリアチャレンジシステム」で家庭との両立をサポート

結婚・出産を機に離職することを防ぐため、アクセが整備している制度が3つある。それが「全スタッフ正社員制」と「フレックスキャリアチェンジシステム(以下、「フレックスキャリア」)」、そして「短時間正社員制度(※2)」だ。

まず、「全スタッフ正社員制」は「販売員の社会的地位を向上させたい」という髙垣社長の強い想いにより、平成9年から導入している。そして正社員のまま、長く働き続けられる環境を整備するために始めたのが、「フレックスキャリア」制度と「短時間正社員制度」だ。

「フレックスキャリア」制度は、育児休業復帰後や個々人の事情に合わせて、日々の勤務時間を変化させて働くことができる制度である。一例を挙げると、育休復帰後、子どものお迎え等で通常シフトの時間で働くことが難しい従業員は、勤務時間の変更をすることができる。

具体的には、図1をご覧いただきたい。店舗で働く従業員Aさんの勤務体制は、通常、週4日9時間勤務、週1日4時間勤務の「週40時間シフト制」であるが、「フレックスキャリア」を利用すると、Bさんのように、週1日を9.5時間と勤務時間を増やすことで残りの週4日は7.5時間勤務で働くことができる。例を挙げたBさんはこの週だけで見ると、合計週39.5時間勤務となるが、年単位で見ると週40時間勤務となるよう勤務時間や勤務日を調整するのだという。

図1 「フレックスキャリアチェンジシステム」を利用した場合の働き方例
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この「フレックスキャリア」を活用することで、週1日だけ家族などの協力を得ることができれば、他の日は保育園の送り迎えや家庭の事情に合わせて、出社・退社時間や勤務日の調整ができるので、家庭との両立がしやすい。また、月8~9日の公休については、子どもの学校の参観日や休暇等に合わせて自身の休みを調整することもできる。

現在、この制度を利用しているのは子どものいる従業員9名。制度があることで、土日祝、遅番シフトにも、子どもが「いる」「いない」に関わらず従業員が出勤しているため、不公平感なく仕事に取り組むことができているそうだ。

この「フレックスキャリア」は年単位でみて週40時間働くことのできる従業員に適用しているが、事情によっては週40時間働けない従業員もいる。そういった従業員に対して適用しているのが「短時間正社員制度」だ。月の労働時間がフルタイム(週40時間)正社員の3/4以上あれば、賃金はフルタイム正社員と同一の時間賃率で算定し、社会保険も同様に加入させる。もちろん、雇用形態は無期雇用の「正社員」で、賞与、退職金等の待遇もフルタイム正社員と同様に算定する。つまり、フルタイム正社員より短い時間しか働けなくても、フルタイム正社員と同等の待遇を受けられるという訳だ。

今後は、従業員の年齢が上がるにつれて、介護との両立問題も出てくると予測しているが、この「フレックスキャリア」と「短時間正社員制度」をうまく活用しながら、制度整備を進めたいと考えているという。


※2 短時間正社員制度…ここでいう短時間正社員とは、フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い正規型の社員のことで、次のいずれにも該当する社員のことをいう。
 ①期間に定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している。
 ②時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員(※3)と同等

※3 フルタイム正社員…1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務等)で、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した正社員。
 育児・介護休業法で規定されている短時間勤務制度の利用者も上記の条件に該当すれば短時間正社員に含まれる。

〔参考〕厚生労働省「短時間正社員制度導入支援ナビ」
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/outline/

4 社長の意識、ロールモデルの存在が活躍推進の風土を醸成

制度整備とともに女性活躍に欠かせないのが、「女性が活躍できる職場風土」である。アクセの風土を形作っているのは、他でもない髙垣社長だ。髙垣社長は、日頃から現場をまわり、従業員一人一人とコミュニケーションを取るよう心掛けている。それぞれの声に耳を傾け、「従業員は全員、1つのファミリー」という意識を持って接しているため、そういった意識が従業員の間にも根付いているとパリゴ広島店店長の中野氏は言う。そのため、子どもがいる従業員に対しても不要な遠慮はしない。一方で、家族の急な病気などの時は「カバーするのはお互いさま。ファミリーのようにみんなで助け合ってやっていこう」という雰囲気ができているので、安心して仕事にあたることができるのだという。こういった意識、姿勢は今では管理職にも受け継がれ、風土醸成の要になっているようだ。

type2_acces_6.jpgさらに、風土づくりの1つとして、様々なキャリアや家庭環境を持った従業員をロールモデルとして社内外に周知しており、それが「採用」や「従業員のキャリアアップ」においても効果を発揮しているという。例えば、採用説明会やアクセの採用HP等で、ロールモデルの従業員にコメントをしてもらうことで、応募の段階から就職後のキャリアイメージを描いてもらえるよう工夫している。業界の特性上、女性の応募者が多いため、女性従業員のロールモデルは採用活動において欠かせない存在だ。また、このようなロールモデルの姿を社内の若手従業員が見ることで、若手従業員自身のキャリア形成にも役立っているのだという。

さらに、社内ロールモデルの効果は見る側だけでなく、ロールモデルとなった本人の意識の変化にもつながっているようだ。同社で仕事と家庭を両立しながら店長を務めている中野さんに話を聞くと「私の働く広島店には育児と両立しながら働いているスタッフも多いので、子育て、時短勤務をしながらも、結果・成果を出し続けていく『背中』を見せることが、後進のために一番大事かなと思います」と話していた(中野さんの記事はこちら)。この発言からもわかるように、ロールモデル自身が「後輩育成のために」と自覚を持って仕事に当たることで、次のロールモデル育成につながる良い循環をつくっている。

こうした様々な取組の結果、アクセでは女性従業員の定着率が徐々に上がっており改善方向にあるという。定着率の上昇に伴い、家庭と仕事を両立しながら働き続ける女性従業員が増え、「若い時しか働けない」という従業員のイメージも徐々に変化しているそうだ。

さらに、近年、結婚・出産で退職した従業員が、再度アクセに就職をしたいと希望する「元従業員」も年に1~2人出てきているという。川邊氏は「アパレル業界だからといって、女性が長く働けないということはない。若い世代に向けた新業態が、PARIGOT既存店の各店舗内でショップインショップとしてスタートしたので、新卒採用も増やしつつ、次のロールモデルとなるような人材の育成をがんばりたい」と意気込んでいた。

取材担当者からの一言

アクセが導入している「フレックスキャリアチェンジシステム」は、様々なニーズに合わせて勤務時間を柔軟に設定することができる「変形労働時間制」の一例である。アクセは店舗の営業時間の長さをうまく活用しており、店舗経営をしている他の企業にも転用できそうだ。

また、週40時間働くことのできない従業員にも「短時間正社員制度」を適用し、「全スタッフ正社員制」を実現している。近年導入企業が増加しているこの制度は、育児・介護等の理由で意欲や能力はあるけれども働く時間に制約がある人だけでなく、「決まった日時だけ働きたい」「定年後も働き続けたい」といったニーズにも、正社員としての雇用で応えることがことができる画期的な制度だ。アクセにおいては、正社員は必ずしも固定した時間のフルタイム勤務である必要はない、という柔軟な考え方で変形労働制の特性を上手く生かしており、従業員の家族の協力も得ながら、子どもが「いる」・「いない」に関わらず公平に勤務体制を組んでいるところが先進的である。

この制度をうまく活用できる背景には、社長を中心に、役員、管理職が全従業員を「1つの家族」として捉え、全社員が公平に扱われていると感じる風土がある。今後も取組を続け、さらなる成果・実績を積んでいけば、「アパレル業界は営業時間に合わせた変形労働制で、女性が長く働きにくい」という世間のイメージを根底から払拭できるかもしれない。そして、この制度を上手く活用することで、アパレル業界だけでなく、同じ悩みで苦しんでいる他の業界や企業にとっても行く道を照らす光となるだろう。


●取材日 2018年1月
●取材ご対応者
経営推進本部 人事担当 川邊 由布子氏