女性活躍事例

飲食店舗の拡大に向けての「人づくり」と多様な人材が活躍できる「仕組づくり」

鮮コーポレーション株式会社

  • サービス産業
  • 庄原市
  • 301以上
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 職場風土
認定マーク
社名 鮮コーポレーション株式会社
所在地 広島県庄原市西本町2-18-8 新興ビル4F
URL http://www.v-style.co.jp
業務内容 鮮コーポレーション株式会社は、広島県内で本格グルメ回転寿司「すし鮮」「すし辰」10店舗、焼肉「カルビ屋大福」2店舗、料亭「鄙の料亭 地御前」1店舗、鮮魚店1店舗を営む企業である。庄原市に創業した「西田鮮魚店」から始まり、ショッピングセンターへの出店、当時広島では珍しかったグルメ型回転寿司店を東広島市に出店したことをきっかけに、広島県内に飲食店をチェーン展開する企業へと発展した。
従業員数 585名
女性従業員比率 53.0%
女性管理職比率 16.7%

2018年9月現在

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代表取締役 西田昌史氏

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  • 女性活躍を推進する上で重要となる現状の課題を把握
  • 働き方改革も見据え、店長職に求められる素養も変化
  • 採用・人材育成・昇進、全てのフローで次世代を見据えた変革を

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1.女性活躍を推進する上で重要となる現状の課題を把握

鮮コーポレーション株式会社(以下、鮮コーポレーション)は、広島県内に回転寿司をはじめとする飲食店を13店舗、鮮魚店1店舗を展開する企業である。女性従業員比率は53.0%と約半数を占める。また、女性管理職比率は16.7%で、4名の女性管理職がいるが、その内訳は本部に部長1名、室長(課長相当)2名、料亭「鄙の料亭 地御前」の女将1名となっている。

女性従業員比率、女性管理職比率ともに、「宿泊業、飲食サービス業」の全国平均と比較すると、若干下回っている。(図1参照)。さらに、パート従業員として活躍する女性は多いものの、正規従業員として店舗で活躍する女性が男性に比べると少ない理由は、寿司店、鮮魚店、料亭といった和食を中心に事業展開していることが理由ではないかと、小森智恵子部長は分析する。

図1 鮮コーポレーションと「宿泊業、飲食サービス業」の全国平均の比較

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※1 出典:総務省統計局(2016年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2 出典:厚生労働省(2017年6月)「賃金構造基本統計調査(産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値)」

男性作業中.jpgというのも魚をさばくこと、寿司のネタ切り、シャリの握りなどは日本文化の中で男性の仕事といったイメージが根付いており、同社内でもそのような固定的な役割分担によって仕事の線引きをするといった傾向がみられるからだという。

加えて、本格グルメ寿司を展開する同社において、このようなネタ切りやシャリ握りといった職人技を持たない者には店長を任せられないといったイメージが強いことも、女性店長がいない要因の一つとなっている。その他の理由としては、土日祝も含め夜間まで営業し、勤務時間の長さから仕事と家庭の両立がしづらいといったこともあるようだ。

勤務日や勤務時間については、一般的に飲食店でも抱える課題といえるが、鮮コーポレーションにおける改善の取組について話を聞いた。

2.働き方改革も見据え、店長職に求められる素養も変化

多様な人材が、能力を発揮させることができる職場にすることは、同社の課題の一つである。西田昌史社長は以前から男女区別なく活躍してほしいと考えており、約20年前に、女性従業員に店長を任せたことがあったが、仕事と家庭を両立しながら女性が店長として務まる仕組や風土が会社として整えられておらず、長くは続かなかった。

女性作業中.jpg現在は、働き方改革への対応として、店舗オペレーションの多能工化に取り組んでいるという。従来は、規定グラムの米を正確に取って、手際よくシャリを握る技術を習得した男性正規従業員が主に調理を担当していた。

しかし、2017年の秋以降、シャリを握る寿司ロボットを各店に導入し、最後の成形のみ人の手で実施するようになり、手仕込み・手握りを大切にしながら、一部機械化を進めた。このように可能な部分は「職人技」の仕事を少しずつ減らし、誰でもおいしい寿司が提供できるよう工夫した。

また、多能工化を進めた結果、ホールでの接客だけをしていた女性パート従業員も握りに携わる例が増え、固定的な役割分担意識が少しずつ薄れてきた。

また、2018年から「成長シート」というツールを用いて、従業員の各役割を定義して成長を促す「成長支援制度」の導入を始めたところだ。

成長シートには、会社が従業員に対して期待すること・成果を定める。そして、その成果を上げるために重要な業務、その業務を行うために必要な知識と技術への落とし込み、やるべきことを把握しやすいような書式になっている。各知識や技術の熟達度は「1:持っていない」「2:少し持っている」「3:基本的なものを持っている」「4:優れたやり方を持っている」「5:優れたやり方を人に教え、その人が成長している」という具合に5段階に分けられている。先輩従業員や上司は、その後輩や部下の成長点数が上がることによって、自分の成長点数も上がる仕組となっており、教育を通じて組織全体の成長を促進するとともに、成果を売上数値だけでなく、組織の成長への貢献度でも計るようにする試みだ。その成長シートを利用して、3カ月ごとに振り返り、会社・上司・本人の共通の見える化を目指している。

これにより組織の成長への貢献度が高い人材が店長へと昇進する仕組が整えば、本人も周囲も店長になることを認める雰囲気が醸成され、女性パート従業員からも昇進することが期待される。近年は、経営幹部の意識も、調理というよりも店舗マネジメントができる人材が店長になるべきという考えに変わってきているという。

さらに働き方改革への対応を考える上でも、多能工化や個々人の成長による効率化を進めることは急務だ。勤務時間を今より短くしても、変わらない売上や利益といった成果を出せるようにし、今支払っている残業手当をボーナスとして支払うことを目指したいという。

3.採用・人材育成・昇進、全てのフローで次世代を見据えた変革を

一方、本部で経理、企画・広報、人事等を取り仕切るのは、小森智恵子部長をはじめとする女性管理職3名だ。

本部の様子.jpgこれは、そもそも社長の考えである「能力の高い人材であれば、男女区別なく仕事を与えて活躍してもらう」という方針の通りで、店舗と比較すると勤務時間の面で仕事と家庭の両立がしやすいことから自然発生的に本部に女性従業員が多くなったといえそうだ。例えば、小森智恵子部長は専業主婦を経て、パート従業員として入社後、キャリアを重ね、部長へと昇進している(小森さんの記事はこちら)。また、管理室の室長(課長相当)も、パート従業員から室長になっている。さらに、企画・広報担当として室長を務める女性管理職は、広告宣伝、ホームページの作成、店舗のディスプレーやデザイン等を行い、長きにわたって会社を支えている一人である。

店舗においても、従業員の能力開発や正規従業員への登用を行っている。

鮮コーポレーションは、人材の能力開発を重視しており、階層別の研修に力を入れているという。新入社員研修から始まり、副店長以下向けの数値管理を中心とした基礎講座、店長や幹部向けのマネジメント研修、全国・海外の繁盛店の視察なども定期的に実施している。さらに、フラワーデザインの講師の資格を持つ従業員が「店舗に花を飾る研修」を10年以上担当している。この研修は年4回、季節の変わり目に開催され、店舗に勤務する女性従業員だけでなく、男性従業員も毎回参加して和気あいあいと制作し、持ち帰り、独自のアレンジを加えて、店舗に飾るという。また、店舗の女性従業員向けに、仕事と家庭ともに充実させるための「女性スタッフセミナー」を開催しているという。そこには店舗関係なく集い、コミュニケーションをとることで「よし、もう少し頑張ってみよう」と従業員に思ってもらい、仕事においても家庭においても生き生きと過ごしてほしいという鮮コーポレーションの思いがある。

若い女性作業中.jpgのサムネイル画像また、優秀なパート従業員は正規従業員への登用を行っている。例えば、鮮魚店に勤務する女性従業員は、勉強熱心で業務知識が豊富であり、魚さばきの腕前も良く、接客の評判も良いため、周りの従業員にも認められ、正規従業員に登用されたという。パート従業員は、同社を支える大切な人材であり、今後も能力開発や登用などを進めたいと小森部長は話す。

さらに、新卒採用にも力を入れる。学校訪問、就職説明会におけるアクションやブースのデコレーション等の強化、採用ホームページの刷新、経営者と学生との会話を増やすといった積極的な採用活動により、2018年度はゼロであったが、2019年春の採用予定者が現在5名ほど決まりつつある。うち3名は女性を予定しているとのことで、今後の育成および定着に期待がかかるところだ。

取材担当者からの一言

鮮コーポレーションは、2018年に回転寿司2店を新規に開店し、少しずつ規模を拡大させている。全国的にも深刻な人手不足の中、店舗を運営する人材の採用、育成、維持は、ますます重要な要素となっているのだろう。

取材の中で、働き方改革および女性活躍含む多様な人材が活躍できる職場づくりに向けて、試行錯誤している様子がうかがえた。和食といった伝統的な食文化を中心に提供する同社ではあるが、ロボットやITなどを利用した効率化、職人技からオペレーションの均質化・マニュアル化へ移行するという「仕組づくり」と、店舗をマネジメントする「人づくり」に注力している。

他の大手飲食店チェーンでもやはり10年以上前から女性店長を育成する取組が開始され、近年では非正規従業員から昇進するケースが増えているようだ。鮮コーポレーションの本部においては、本人のやる気次第で伸ばすということが実践されており、本部だけでなく、店舗にも制度として展開すれば、多様な人材の能力を伸ばす道は開けると思われた。

2019年には、経営者が交代し、30代の社長が誕生する予定であり、新たな世代へのバトンタッチとなるだろう。事業の永続を目指して新たなステージに入るようだが、人材の多様化への進展にも期待がかかる。

●取材日 2018年9月
●取材ご対応者
鮮コーポレーション株式会社
本部 部長 小森 智恵子 氏