女性活躍事例一覧

「新入社員の定着、育児休業後の復職などをとにかく手厚くサポート」

株式会社第一ビルサービス

  • サービス産業
  • 広島市
  • 301以上
  • 両立・継続支援
  • 登用
  • 職場風土
認定マーク
社名 株式会社第一ビルサービス
所在地 広島市中区大手町5-3-12
URL https://www.midori-gr.com/daiichibs/
業務内容 中国・四国地方で不動産業、介護事業、保育事業、給食事業、商業施設運営等を行うみどりグループの中核を担う株式会社第一ビルサービスは、プロパティマネジメント、ビルメンテナンス、マンション管理といった不動産総合サービスを提供している。管理業務は民間施設のみならず、公営住宅、総合公園、学校等の公共施設の管理にも多くの実績をもつ。2012年より商業施設「マリーナホップ」の経営を引き継ぎ、2017年「マリホ水族館」の運営を開始。
従業員数 779名
女性従業員比率 42.9%
女性管理職比率 11.5%

(2018年4月現在)

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③代表写真.jpg

代表取締役 杉川 聡 氏

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  • 3年間で従業員・女性管理職数大幅UP。えるぼし・働き方改革実践企業にも認定
  • 保育料負担、時短期間の延長など育児休業からの復帰を手厚くサポート
  • 新卒の定着率は90%!仕事の楽しさ・厳しさを体で覚えるユニークな研修

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1.3年間で従業員・女性管理職数大幅UP。えるぼし・働き方改革実践企業にも認定

中国・四国地方で不動産業、介護事業、保育事業、給食事業、商業施設運営等を行うみどりグループの中核を担う株式会社第一ビルサービス(以下、第一ビルサービス)は、ビルメンテナンス、マンション管理といった不動産総合サービスを展開する企業である。近年、これまで行っていた民間施設の管理に加え、地方自治体等が限定して管理していた公共施設の管理も数多く受託。それにより幅広い年齢層の従業員を雇い入れ、従業員数は3年間で151名増加した。

注目したいのは女性従業員比率だ。第一ビルサービスが属するサービス業の女性従業員平均39.3%(※1)に対し、同社は3.6ポイント高い42.9%が女性従業員となっており、現在、過去3年間で最も多い334名の女性従業員が活躍している。(図1)

図1 第一ビルサービス、サービス業の全国平均の比較

④図1 第一ビルサービス.jpg

※1 出典:総務省統計局(2016年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2 出典:厚生労働省(2018年4月)女性の職業生活における活躍推進に関する法律に基づく認定制度に係る「産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値」について(改訂)

⑤小迫部長写真.JPG取締役で総務サービス部・人財サービス部部長の小迫好幸氏は女性従業員の増加に関してこう話す。「当社では、深夜のビル管理対応といった、ごく一部の仕事は女性に担当させないといった配慮はありますが、それ以外は性別による仕事の区別はありません。また、ビルメンテナンス、マンション管理といったビジネスは、お客様へのサービスを着実に行えば安定的に進められるため、厳しい営業ノルマはありません。そういったことを理解し、働きやすいと思っていただけた結果が近年の女性従業員の増加につながっているようにも思います」。

⑥えるぼしマーク.png 第一ビルサービスは、2018年3月に"えるぼし認定企業″(※3)として最高位である3段階目の認定を受けただけでなく、同年9月に働き方改革実践企業に認定された(働き方改革の記事はこちら)。ワークライフバランスや働き方の見直し、多様な人材の活用を重要な経営課題の一つとして考え、会社全体で取り組んでいることの証であろう。

※3 えるぼし認定企業とは
策定した行動計画の届出を行った事業主のうち、女性活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主は、厚生労働大臣の認定を受けることができ、認定マーク(愛称「えるぼし」)を用いて女性の活躍を推進している事業主であることをアピールすることができる。

2.保育料負担、時短期間の延長など育児休業からの復帰を手厚くサポート

第一ビルサービスは1963年に清掃会社として設立し、その後、多様化する顧客のニーズに応えるため、建物総合管理会社として業態を広げ、さまざまなサービスを充実させてきた。「代表取締役の奥様は、お子さんを背負いながら会社で働いていた」というエピソードは、今でも受け継がれ、仕事と子育ての両立を図ろうとしていたことを物語っている。それが現在の同社の「仕事ができるのは家族の支えがあってこそ」、「男女区別なく活躍できる環境を整える」といった、会社の風土の源となっているようだ。

保育料の1割補助制度は約15年前から、小学校6年生まで時短勤務可能の制度は5年前からなど、就業継続を支援するための独自の制度を整備している。また、育児休業などの取得予定者と管理職等が早い段階からコミュニケーションをとることが重要と考え、面談には、育児休業取得予定者本人と人事担当者、加えて取得予定者の直属の上司が同席している。面談では支援制度の相互理解、業務の引継ぎやフォロー体制の確認を行うだけでなく、休業によるブランクの不安を払拭し、円滑に職場復帰できるよう、職場復帰のイメージを本人と管理職(上司)で話し合う。

また、2015年に策定した「一般事業主行動計画」(※4)において、女性管理職の割合が少ないという課題認識のもと、男女平等に能力によって公平に評価でき、昇進昇格ができる制度の整備を進めた。また、入社5年目には長期的なキャリアパスを策定してもらい、キャリア育成のための研修を男女共に実施し、ワークライフバランスを配慮した人材の配置なども実施した。

ちょうど管理職になる世代の人財が育ってきたこともあり、2016年に1名だった女性管理職は、2018年に3名へと増えた。ここ数年で若手従業員が出産ラッシュを迎え、現在4名の従業員が育児休業を取得している状況であるというが、就業継続はもちろん、キャリアアップも、同様に支援していくという。

その他にも働き方改革として、会議時間は30分と定め、無駄な議論につながってしまいがちな長時間の会議は廃止するなど、働きやすい環境整備に努めている。

※4 次世代法による「一般事業主行動計画」…次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間、(2)目標、(3)目標達成のための対策およびその実施時期を定めるもの。従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられている(100人以下は努力義務)。

3.新卒の定着率は90%!仕事の楽しさ・厳しさを体と心で覚えるユニークな研修

「業界的にも人手不足が慢性的な状況で、人材確保の難しさを感じています」と話す小迫部長。しかし、第一ビルサービスでは毎年コンスタントに新卒採用を行っており、図2を見ても分かるように同社の過去3年間の新卒採用者の定着率は90%で、大変高い。

図2 第一ビルサービスの過去3年間の新卒採用者数と離職者数

⑧図2.jpg

⑨新卒者.JPGその秘訣の一つが、新人社員向けに実施される「体験研修」。新入社員が自ら企画立案したものを、代表取締役へ直接プレゼンし、研修内容を決めていく。過去には、無人島で5日間サバイバル生活、ベトナムの孤児院での交流、タイにあるミャンマーの難民キャンプで子供たちに絵本の読み聞かせなどを行うなど、ユニークな研修が実行されているという。

自身もこの研修を体験した人財サービス部の玉川課長はこう話す。「同期で一生懸命企画し、社長にプレゼンをします。しかし、なかなか企画は通りません。行う意味や価値を問われた時に、うまく答えられないこともあり、相手に納得してもらう難しさや、社会人として社内で意見を通す厳しさに初めて直面しました。やっと実現した無人島生活では、同期とたくさんぶつかり、それを乗り越えたからこそ、本当の仲間になれたように思います」。

⑩ボランティア.JPGあらかじめ決められたカリキュラムを実行していくのではなく、自らが企画・提案・予算管理・運営を全て行うことで得られる学びは大きい。新入社員への教育において、社会人の基礎や部門業務の習得を促すことはもちろん大切だが、第一ビルサービスでは、入社した従業員を「ワクワク・ドキドキさせる」、仕事の厳しさだけでなく「面白さ」を伝える、チームワークを強める、ということに重点を置いている。こういった教育方法が新入社員の定着率の高さにもつながっているのではないだろうか。

取材担当者からの一言

企業における女性管理職の割合は、男性管理職に比べて少ない状況にあり、その背景として「必要な知識や経験等を有する女性がいない」「女性が管理職やキャリアップを希望しない」ことが挙げられる(※5)。第一ビルサービスでは、早くからの取組により女性の就業継続が実現し、次の段階として、管理職増加に向けた施策を実施し、成果を挙げつつある。従業員がキャリアアッププランを考え、会社も結婚・出産といったライフイベント後でも能力を伸ばせるような役割を与え、支援していくといった取組により、今後も女性管理職が増加することが期待される。

また、多くの企業が悩む「新卒者の定着問題」を解決している同社の新人研修は興味深い。若手が「雰囲気の良さ」、「仕事のやりがい」を重視するといわれる昨今、同期との強い人間関係を構築するとともに、社長と直接話すことや、社会的な問題解決につながるような内容を企画して実行することを通して「やりがい」につながっていると思われた。

※5 出典:平成28年 広島県女性活躍推進実態調査 「問26-1 女性の管理職が少ないまたはいない理由」

●取材日 2018年10月

●取材ご対応者
株式会社 第一ビルサービス
取締役 総務サービス部 部長・人財サービス部 部長 小迫 好幸 氏