女性活躍事例

「広島県を代表する企業の一つとして、先進的かつ独自の取組が多数」

マツダ株式会社

  • 製造業
  • 府中町
  • 301以上
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 評価・処遇
  • 登用
社名 マツダ株式会社
所在地 安芸郡府中町新地3-1
URL http://www.mazda.com/
業務内容 乗用車・トラックの製造、販売などを行う。「走る歓び」を原点に「SKYACTIV TECHNOLOGY」などのエンジン技術や、生命感あふれる動きを表現した「魂動(こどう)Soul of Motion」というデザインテーマのもと、人生を豊かにするクルマづくりに挑み続ける。その他、マツダ病院の運営も行う。
従業員数 22,612名
女性従業員比率 9.2%
女性管理職比率 2.9%

(2018年3月現在)

seika_header_sesakuyaseika.png

  • 各領域で女性管理職が活躍する組織への改革
  • “リケジョ”採用拡大と充実した制度・働き方改革で就業継続支援
  • 各社員の「力を最大限発揮させる」ための取組

seika_footer.png

1.各領域で女性管理職が活躍する組織への改革

マツダ株式会社(以下、マツダ)は、多様な背景や価値観を持つ社員が自分らしく生き生きと活躍することで大きな成果を生みだすことができると考え、2014年8月に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「2020年までに女性幹部社員(主幹以上の管理職)数を2013年比3倍に」とする数値目標を掲げ、取組を進めている。女性管理職は取材時点(2018年12月)においては44名で、2013年度の20名に比べ2倍以上となっている(図1)。

図1 マツダにおける女性管理職人数と女性管理職比率の推移(幹部級以上)

mazda_zu1.jpg

女性管理職が活躍する部門は、開発、生産、マーケティング・セールス、購買、管理部門(経営企画や人事・法務など)など、多岐にわたる。うち、部長は4名で、開発に1名、管理部門に1名、病院に2名の配属となっている。また、マネージャー(課長級)は4名で、開発に1名、管理部門に2名、病院に1名となっている。他の管理職も、難易度の高い業務を行う主幹として各部門で活躍している。

国内自動車メーカー8社における女性管理職比率(※1)をみると、日産自動車においては10.7%であり、全国の製造業平均である7.3%(※2)よりも高いが、他7社は4%未満と低く、各社取組を進めているところである(図2)。例えば、トヨタ自動車においては、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画で、女性管理職数を2014年基準として、2020年に3倍、2030年に5倍とする目標を掲げている。同様にSUBARUでは、2014年を基準として、2020年までに5倍以上にすることを目標に掲げている。また上場企業では、取締役会において多様化が求められる中、国内自動車メーカー各社においても、女性役員が増えつつある(※3)。

図2 国内自動車メーカー8社の女性管理職比率と女性役員比率

mazda_zu2.jpg

※1 女性管理職比率は、各社のホームページ、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」により収集(出典の詳細は下部参照)
※2 厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査 図11 産業別女性管理職割合 課長相当職以上(役員を含む)(企業規模10 人以上)」
※3 女性役員比率は、ダイハツ工業のみ厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」ダイハツ工業株式会社「11. 役員に占める女性の割合」(更新日:2016年04月01日)、他は内閣府男女共同参画局(2018年7月)「有価証券報告書に基づく上場企業の女性役員の状況(業種別一覧)(平成29年4月期~平成30年3月期決算)」輸送用機器

2.“リケジョ”採用拡大と充実した制度・働き方改革で就業継続支援

マツダにおける女性社員の新卒採用は近年増えている。事務系では、2017年度に42%となり、男女半々に近づいていて、技術系、技能系においても増加傾向にある(図3)。

図3 マツダにおける新卒社員の女性比率の推移

mazda_zu3.jpg

工学を学ぶ女子学部生比率は2018年度には15.0%、理学では27.8%であり(※4)、2015年度における、各13.6%、26.8%(※5)と比べて、1.4ポイント、1.0ポイントずつ増えている。このように、近年増加傾向にある理系の女子学生を確実に取り込み、マツダにおいても技術系の女性の採用を増やしてきた。

具体的には、2019年度のリクルートサイト「新卒採用情報」の社員紹介ページにて、技術系社員を21人紹介しているが、うち10名を女性社員とし、先輩社員が生き生きと働いている様子を伝えている。また、理系を対象としたセミナーへの積極的な参加や、学校訪問の際に女性社員が女子学生と対話するなどの取組を行っているそうだ。

またマツダは、多様な働き方に対応し、就業継続のハードルを下げるための取組を長く続けてきた(※6)。

例えば、コアタイムなしのフレックスタイム勤務は2000年に整備、社内保育施設は2002年に開設、転勤する配偶者に同行するための赴任同行休職は2003年、法定以上の育児休職の期間(3年)や在宅勤務制度を2008年に運用開始するなど、「ワークライフバランスの促進」のための制度は、比較的早くから充実している。さらに、有給休暇の計画的な取得の促進も進め、2013年度は取得率77%(平均取得日数14.7日)であったが、2017年度には88%(平均取得日数16.9日)に増加。2017年度から過去5年間の育児休職利用者の復職率はいずれも98%以上で、さらに復職1年後の在籍率も85%以上と高く、働きやすい職場環境づくりが進んでいる企業といえるだろう。

※4 文部科学省(2018年)「平成30年度学校基本調査」10 関係学科別 学生数(9 - 1 )
※5 文部科学省(2015年)「平成27年度学校基本調査」10 関係学科別 学生数(9 - 1 )
※6 マツダサステナビリティレポート2018「ワークライフバランスとダイバーシティ推進に向けた主な施策」

3.各社員の「力を最大限発揮させる」ための取組

各社員の「力を最大限発揮させる」ための取組は、一般的によくある課題であるが、同社では2003年から独自の人事制度「とびうお」の運用を開始し、「選択と自己実現」と「ワークライフバランスの促進」「人・仕事・処遇の最適なマッチング」という、社員の声を反映した3つの柱に基づき、その実現を目指している。

「選択と自己実現」については、職種や役職に応じたさまざまなキャリア開発・スキルアップ支援のための教育・研修や、キャリアチャレンジ(社内公募・FA)制度で社員自身がキャリアを考える機会などを設けている。また、年1回、「コンピテンシー評価」制度という、自分自身および上司、部下、同僚/関係先から見た客観的評価(360度評価)が、事務系・技術系社員を対象に行われている。その結果は、キャリアミーティング(年4回実施する話し合い制度)において上司からフィードバックされ、社員の成長と活躍を支援するツールとして活用するとともに、全社における人材の適正配置の参考情報としても活用しているという。

「人・仕事・処遇の最適なマッチング」については、2003年より「総合職」「一般職」の区分を廃止し、性別、年齢、国籍、勤続年数などにとらわれることなく「仕事のレベル(事務・技術系)」に応じた等級に再格付けを行った。そのことにより、社員一人一人の業務レベルと実績がダイレクトに処遇に反映されるとともに、将来のキャリアを限定せず、一人ひとりの能力、希望に応じた異動や昇格が可能になった。当時、フォードとの経営統合により、経営層や社員に外国人が増えたことも強力な追い風となり、社員が持つ「属性」ではなく「個人」の能力に応じた育成、活用を行うことが風土としても急速に根付いていった、

このように性別、年齢、国籍等にかかわらず能力を発揮した社員を評価し、活用する制度、風土はあるが、管理職として高い役割・責任を担って活躍している女性社員はまだ少ないのが現状だ。そこでポテンシャルのある女性社員を取りこぼすことなく育成し、早期に管理職にするため、登用候補となる女性社員の個別育成計画の策定を開始した。

具体的には女性社員一人一人の活躍の可能性を見据え、経験の蓄積・スキルの獲得や課題の克服に向けて、どのような仕事を付与し、どういったジョブ・ローテーションを行うかについて、部門マネジメントが育成計画を検討し、人事考課や異動時期、幹部登用試験を受けるタイミングなどを、個別状況を見ながら継続的にフォローしている。

このような「個別対応」により、確実に女性管理職が増えてきた。4、5年前は各職場にロールモデルがいないといった声が聞かれたが、前述の通り2013年度に比べて約2倍となり、幅広い部門に女性管理職が増え、雰囲気も変わりつつあるようだ。

取材担当者からの一言

マツダにおいては、2000年代初頭からの継続的な取組により、各種制度の整備やその利用が進み、女性社員が就業継続しやすい職場となっているようだ。次のフェーズとして、さらに活躍してもらうために、女性管理職登用に現在取り組んでいるところである。

他の企業の取材で課題として多く見られた、就業継続のための制度、人事評価制度、人材育成などのハード面は、マツダではすでに整っている。次なるステップとして、より個人・現場の状況に沿った、意識改革やキャリア形成支援といった、ソフト面での取り組みにフォーカスしている。

広島県における中核企業であるマツダの多様性の推進が、他の企業にも伝播していくことだろう。

●取材日 2018年12月

●取材ご対応者
マツダ株式会社
人事室 人事ソリューショングループ 廣岡 真央氏

※1 各社の女性管理職比率、出典の詳細

社名女性管理職比率の出典
日産自動車 「サステナビリティレポート 2018」 (2018年7月発行)P123
2017年度の管理職の女性比率
三菱自動車 「三菱自動車CSRレポート2018」(2018年10月発行)P75
女性の役職登用状況、2018年7月時点の女性管理職比率
マツダ 「マツダサステナビリティレポート2018」(2018年10月発行)P89
2017年度の女性管理職比率(幹部級以上) ※2018年3月31日現在
トヨタ自動車 「就職四季報 女子版 2020年版」(2018年12月発行)P296
【女性の役職者数】186名(男女計9,977名)
ダイハツ工業 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」
ダイハツ工業株式会社
「10. 管理職に占める女性労働者の割合」(更新日:2016年04月01日)
SUBARU 「CSRレポート2018」(2018年10月発行)p170
2017年度、管理職人数(男1,020、女13)
スズキ 「2018スズキCSR・環境レポート」(2018年8月発行) P147
2017年度、管理職数(男1,037、女12)
本田技研工業 本田技研工業「Honda SUSTAINABILITY REPORT」(2018年6月発行) P94
パフォーマンス報告、人材、人材関連データ、2017年度の女性管理職比率(日本)