女性活躍事例一覧

「時短勤務や育児休業の社員を支える体制が整い、次なるステップへ」

マツダエース株式会社

  • サービス産業
  • 府中町
  • 301以上
  • 登用
  • 職場風土
法人名 マツダエース株式会社
所在地 安芸郡府中町新地3-1
URL http://www.mazdaace.co.jp/
業務内容 マツダグループの一員として、生産設備・カーライフサポート・福利厚生といった面から新規商品・新サービスを生み出し続けてきた総合サービス企業である。機械設備設計・開発・メンテナンス事業、情報技術サービス事業、不動産設計・コンサルティング事業、警備防災・ビル管理事業、リビングサービス事業、保険代理店業と幅広い事業でマツダグループ企業そして地域に対し、総合的なサービスを提供している。
従業員数 1,066
女性従業員比率 24.4
女性管理職比率 4.2%

(2018年4月現在)

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  • 施策の結果、女性管理監督者が増加傾向
  • 管理監督者や女性社員への研修を行い、双方の意識改革・行動改革を促す
  • 女性管理職の活躍。時短勤務が多い職場での新たな試みや後進の育成に熱を込めて
  • 男性の育児休業取得者が定期的に発生。さらなるダイバーシティの推進に向けて

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1.施策の結果、女性管理監督者が増加傾向

マツダグループの一員として、機械設備設計・開発・メンテナンス事業、情報技術サービス事業、不動産設計・コンサルティング事業、警備防災・ビル管理事業、リビングサービス事業、保険代理店業と幅広い事業を行うマツダエース株式会社(以下、マツダエース)。

マツダエースは、2016年3月に女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定した際に「管理監督者(※1課長補佐以上)に占める女性割合が低い」ことを課題として認識し、2021年3月までに管理監督者を当時の2倍(2016年3月時点:7人→2021年3月時点:14人)にすることを目標に掲げ、取組を行ってきた。2017年に60歳になった社員が定年を迎えたため対象外となり、いったん減少しているものの、2018年には同社において最も高い9.0%(13人)に達した。女性管理監督者は順調に増え、目標の14人に近づいている。

図1 マツダエースにおける女性管理監督者(課長補佐以上)数および同比率の推移

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また、2018年における同社の女性従業員比率が24.4%と、2015年の23.7%に比べて0.7ポイント増えた。同社の正社員の平均勤続年数は、男性16.1年、女性13.6年と、2.5年の開きがあるものの、結婚や出産を理由とした退職は2008年頃からほとんどなく、育児休業の取得と勤務の継続が自然な流れとなっているとのことである。

※1 マツダエースにおける「管理職」は部長、課長、「管理監督者」は部長、課長、課長補佐/係長である。

2.管理監督者や女性社員への研修を行い、双方の意識改革・行動改革を促す

女性管理監督者の登用を促進するための具体的な取組について、各事業部からヒアリングした結果、「管理監督者(※1)の意識変革支援」および「若手女性社員のキャリア形成支援」についての要望が多かった。

「管理監督者の意識変革支援」としては、女性社員を部下に持つ管理監督者に参加してもらい、「女性を生かすマネジメントの仕方」に特化した研修を2016年に実施した。まず、事前課題として女性メンバーの育成・マネジメントで工夫していること、苦労していることなどを検討してもらい、研修にて課題を共有した。次に、女性活躍の背景や意義、阻害するメカニズム等、一般的な知識について講義を受けた。その後、参加者である上司に、部下である女性社員から日頃の思い等が書かれた手紙がサプライズで渡された。

4.マツダエース_アララギ氏.JPG「突然の部下からの手紙に驚いたようでしたが、静かに読み入り、感謝の気持ちや良いところが文章にしてあり、照れている様子でした。そして、部下から『見られている』『期待されている』と直接感じることで、研修の後半にあった『マネジメントの理解と実践』へのモチベーションとなり、効果的な研修となったと思います」と、研修を企画した人事部の蘭菜穂子さんは言う。

研修後に受講した管理監督者から感想を聞いたところ、「女性の部下に対して具体的な今後のスキルアップのスケジュールの提示ができ、他の部下に対しても行わなければいけないことを実感した」、「部下の話をよく聞き、相手の気持ちを考えた上で意見が言えるようになった」、「研修を受講した管理監督者と話し合いを持つ機会が増えた。それによって自チームをいかに活性化させていくかをより意識するようになった」と、狙い通りの意識の変化が見られたという。

「若手女性社員のキャリア形成支援」も、2016年に「仕事も人生も自分次第」というテーマで研修を実施した。入社4年~12年目の中堅社員が参加し、自分の人生をコントロールすることの意義、最優先事項に集中するための時間管理などを、グループワークを通じて学んだ。自分自身としっかり向き合うことに戸惑う参加者もいたが、狙いとしていた「キャリアを自分事として捉えるきっかけ」となったそうだ。

また、2018年度から「キャリアミーティング」を「自分の成長/今後のキャリアに関する上司との対話」をするための時間に進化させた。3、5年後になりたいイメージや目指す目標を上司と共有し、その目標を達成できるよう管理職による支援も強化した。

例えば、若手社員にも積極的に小集団活動のリーダーとして、チームをまとめていく経験を積ませ、ステップアップしてもらうなど、育成の機会を意識的に考える良い機会となっている。さらに、育児休業や時短勤務制度を利用してもステップアップしていく姿を描き、モチベーションを向上させることを目指していくという。

3. 女性管理職の活躍。時短勤務が多い職場での新たな試みや後進の育成に熱を込めて

マツダエースの女性管理職は2名(2019年2月時点)いるが、ライフサポート事業部保険サービス部営業支援課の課長として活躍する倉橋智子さんに話を聞いた。

5.マツダエース_倉橋氏.JPG保険サービス部では、マツダおよびマツダグループ企業を中心として、個人・法人のお客様へ各種損害保険・生命保険の販売や保険のコンサルティングを行っている。保険サービス部は、女性社員の比率が70%と、マツダエースの中で最も高い部門である。

倉橋さんは1991年に同社に入社して以来、保険事業部の営業事務・管理業務を行ってきた。2005年には、同僚と2人でコールセンターの立ち上げを行った。

「当社にコールセンター業務のノウハウがなかったため、損保会社のコールセンター事業所を視察し、オペレーター業務を現場で体験しました。電話応対、システム端末操作など実務的なスキルを学び、ゼロからの立ち上げを行いました」と、苦労とともに自身の成長につながったことを振り返る。

その後、2006年に課長補佐に昇進し、お客様自身がインターネットで自動車保険の手続きをするためのWebシステム導入などを行い、2012年に営業支援課の担当課長に昇格した。

「さまざまな活動のリーダーとして仕事をする機会に恵まれ、成長につながりました。メンバーを指導していく中で、自分自身のことを見つめ直し、正していくことができましたし、視野も広がったように感じます。チームリーダーの役割は果たしてきましたが、ロールモデルとなる女性管理職の先輩が自職場にいなかったこともあり、管理職になることは考えていませんでした。しかし、上司から励ましを受け、長く組織にいる自分がやらなければと考えて、管理職登用試験にチャレンジしました。現在は、女性の課長補佐が増え女性が活躍しやすい雰囲気ができていると思います。」

管理職になって大切にしていることは、上司、同僚、部下との信頼関係だそう。「管理職は担当業務を持つプレイヤーではないため、メンバーを信頼し認め、組織として良い仕事、成果につなげていくことが求められます。私の管理する営業支援課9名のうち3名が、育児中のため時短勤務を活用しています。突発的な事項にも対応し、メンバーの精神的・時間的な負担を軽減するために、1業務を2人で担当する『助け合い体制』をトライアル中です。対応できる人が増えることで急な休みが発生してもスムーズに対応できます。また、時短勤務者にも、可能な時には時間延長をしてもらうなど、お互いが協力し、助け合う雰囲気づくりを心掛けています。時短勤務者もその他のメンバーも『助け合い体制』の必要性を理解し、納得した上で前向きに取り組んでいるため、良い方向に進んでいます。」と、倉橋さんならではのマネジメントについて教えてくれた。今後は、1人でも多くのリーダークラス、管理職のロールモデルをつくり若い世代からキャリア意識を引き出せるよう育成していきたいという。

4.男性の育児休業取得者が定期的に発生。さらなるダイバーシティの推進に向けて

マツダエースは2010年に「お父さん研修」を開催し、21名の男性社員が参加した。ワークライフバランスに対する啓発を目的として、父親としての役割や、仕事と子育てについて、さまざまなグループワークを通して考える研修だ。受講者からは、「母親向けはよく聞くが、父親のセミナーはあまり聞かないので新鮮で良かった」、「ワークライフバランスを良好に保つと、仕事も人生も良い傾向になることを上司にもっと理解してもらいたいと感じた」、「時間を大切にすることの必要性が理解できた」などの反応があったという。

この研修の効果もあってか、その後男性の育児休業取得者が定期的に出てくるようになり、2018年は初めて約2カ月間の長期取得者が生まれた。

表1 マツダエースの男性社員、育児休業利用実績(2018/12現在)

職種期間
2018 技能 約2ヶ月
2016 企画 約1週間
2015 事務 約2週間
2014 事務 約1ヶ月
設計 約2週間
企画 約2週間
2011 事務 約1ヶ月
幹部 約2週間

6.マツダエース_島原氏.JPG「人事部門などから積極的に男性社員に対して育児休業の利用促進を行っているわけではないのですが、定期的に取得者が出たり、取得期間が長くなったりしてきました。夫婦共に、育児にしっかり関わり、仕事でもステップアップを目指すケースがあり、家庭内で話し合い、育児休業を決めているようです」と、人事部課長の島原幸恵さんは話す。2011年に育児休業を取得した社員は、「お父さん研修」の受講者だそうで、この研修が後押しの1つとなったようだ。

2カ月間、育児休業を取得したある男性社員は、「子供と関わりたかったし、妻の育児負担を軽減したかったが、職場に迷惑をかけてしまうという不安があった。しかし、若手の男性社員のロールモデルになりたいと思い、上司に告げると快諾していただいた。取得をして良かったことは、妻と共に悩み、手探りで子育てをする中で、さらに絆が深まったこと。お互いに感謝を言葉にするようになった。子育ては辛いことも多いが、楽しいこと、うれしいこともそれ以上に多い。長い会社員生活の中で育休取得はプラスとなる。積極的に取得をしてほしい」と、感想を寄せてくれた。

マツダエースは個々の力をより発揮できる組織を目指している。女性活躍という視点だけでなく、年齢や個々のライフスタイルに合った多様な働き方ができる制度や環境の整備を進め、ダイバーシティ推進活動として今後も力を入れていく。

取材担当者からの一言

マツダエースにおいて、男性社員のワークライフバランスに対する啓発研修を比較的早い2010年に行い、夫婦共に育児休業制度を利用して「仕事を続け、またステップアップも目指す」などの動きが出てきているというのが、特に印象的であった。そのような新しい価値観や働き方に対して、上司となる管理職層が「キャリアミーティング」で理解を示し、部下の能力を発揮させるべくステップアップを支援する良いスパイラルが定着してくると、組織力が一層高まるのでは、と感じた。

●取材日 2019年2月

●取材ご対応者
マツダエース株式会社
総務・人事本部 人事部 課長 島原 幸恵 氏
ライフサポート事業部 保険サービス部 課長 倉橋 智子 氏
総務・人事本部 人事部 蘭 菜穂子 氏