女性活躍事例

「長く働きやすい制度整備と能力開発支援により、ワークとライフを両立しながらキャリアアップも」

株式会社ホテルグランヴィア広島

  • サービス産業
  • 広島市
  • 301以上
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
  • 職場風土
法人名 株式会社ホテルグランヴィア広島
所在地 広島市南区松原町1-5
URL https://hgh.co.jp/
業務内容 「ホテルグランヴィア広島」を運営。国際文化都市である広島の玄関口にふさわしいエクセレントホテルとして、JR西日本ホテルグループの一翼を担う。2025年春に控える「広島駅ビルの建替え計画」に合わせ、広島駅南口にて「ホテルヴィスキオ広島」開業準備を進めている。
従業員数 306名
女性従業員比率 32.7%
女性管理職比率 13.5%

(2021年2月現在)

seika_header_sesakuyaseika.png

  • 社員のライフイベントに合わせた制度変更や退職者再雇用で、優秀な人材を確保
  • 従業員の能力開発をサポート。グループ内で経験を積み、未来の幹部候補生を育成する制度を構築
  • 活躍中の女性管理職をロールモデルに、2022年女性管理職比率15%達成に向けて

seika_footer.png

1.社員のライフイベントに合わせた制度変更や退職者再雇用で、優秀な人材を確保

 1987年の開業以来、広島の玄関口である広島駅直結という抜群のロケーションとおもてなしの心で、国内外を問わず多くの人に親しまれてきた「ホテルグランヴィア広島」(開業当時は「広島ターミナルホテル」。1995年に現在の名称に変更)。今回は、総務部総務課長空本祐始氏(以下、空本総務課長)に、「広島の顔」であり続ける同ホテルの女性活躍推進状況と今後のビジョンについて聞いた。

同ホテルでは、直近5年間における新卒採用者の女性比率は66%と、女性の割合が高い。そのような中、ライフステージの変化に影響を受けやすい女性従業員が、長く働き続けられるためのさまざまな取組を進めてきた。「2021年に、短時間勤務制度の利用期間を法律で定められている3歳から5歳まで延長しました。将来的には、小学校入学時まで利用できるようにする予定です」と空本総務課長は言う。こうした制度改正等は、定期的に開催される全従業員と経営層との意見交換会の中で挙がってくる要望やアイデアがもとになっているといい、「これからも従業員の意見を尊重しながらより働きやすい環境を整えていきたい」と話してくれた。
24時間体制のホテルだからこそ、長く安心して働くことができ、ワーク&ライフ、キャリアアップを両立できる環境づくりが重要なのだ。

お客様に直接サービスする宿泊、宴会、レストラン等のスタッフは繁忙期の勤務時間が長くなるといった特徴があり、育児や介護などを理由に、一時的にワーク&ライフを両立することが難しいケースが生じるが、妊娠中や育児休業復帰後は、勤務時間の調整やバックオフィス業務に配置転換を図るなど、従業員それぞれの置かれた環境に合わせて臨機応変に対応するよう心がけているのだという。

また、一度退職した従業員が復帰するケースもあるそうで、語学留学を理由に退職し、帰国後に復職、現在は宿泊部で次長を務める女性管理職や、ブライダルで正社員として活躍し、結婚を機に退職、その後、アルバイトとして同部署に復職した女性従業員もいるそうだ。

空本総務課長は、「スキルを有する人材のライフプランやライフステージに柔軟に対応し、今後も即戦力として活躍してもらいたいと考えています」と話す。

ホテル業界は転職も多く、人材の流出入が激しいという。だからこそプロフェッショナルマインドと豊富な経験を持つ優秀な人材を確保し続けるためには、こうした環境づくりが欠かせないそうだ。

.従業員の能力開発をサポート。グループ内で経験を積み、未来の幹部候補生を育成する制度を新設

 同ホテルでは、採用後、1カ月程度の研修期間を経て現場でOJTを経験し、ジョブローテーションで3年から4年ごとにさまざまな部署を経験する。空本総務課長自身も、入社後にレストランやバーを経験し、マスターバーテンダーやウイスキーエキスパートの資格を取得したそうで、同社では、キャリアアップを目指し、主体的に資格取得やコンテスト等にチャレンジし、スキルを磨く従業員が多いという。昇格や昇進に関しても、「性別は全く関係なく、能力と適性を見て判断」されるのだそうだ。組織としても、「従業員の能力開発や自己実現の機会を提供できるように制度を整えている」と話し、各種公的資格認定試験やTOEIC受験、各種通信教育など、従業員の能力開発に対して経費補助等のサポートを積極的に行っている。

 JR西日本ホテルズ(以下、ホテルズ)では、2013年に「ゼネラリストコース制度」を新設した。この制度はホテル単体ではなくてホテルズ全体を活躍のフィールドとして、最終的にホテルのマネジメント職(経営層)を早期育成する取組なのだそうだが、同ホテルではこれまで14名がエントリーし、うち3名が女性なのだそう。

「今後は、ホテルズ各社へ出向し、さまざまな経験を積み、優れた経営感覚を養って、ホテルズの未来を改革できる人材を育成することが目的です。今後、活躍のフィールドをホテルズ全体に広げていってもらいたいと考えています。最近は、若い女性も積極的に手を挙げるようになりましたが、制度上、転居を伴う異動を避けては通れません。そのため、子育てなどのライフイベントの影響を比較的受けやすい女性が手を挙げにくいこともあり、今後、異動のタイミングなど運用について、柔軟に対応できるよう検討していきたいと考えています」。

3.活躍中の女性管理職をロールモデルに、2022年女性管理職比率15%達成に向けて

 同ホテルでは、2022年度末までに女性管理職比率を15%まで引き上げることを目標に掲げているが、既に5名の女性管理職が活躍しており、多様なキャリアを歩んできたロールモデルとなっている。

企画部次長今岡恵美氏(今岡さんの記事はこちら→)は、アルバイトとして入社し、料飲部に配属。ソムリエールの資格を取得後、正社員へと登用された。その後、社内初となる育児休業を取得し、その間、専門学校にも通って業務に必要な資格を取得。復職後は、その資格を生かして企画部で活躍するなど、仕事と育児とキャリアアップを両立してきた女性管理職だ。

宿泊部次長大石千恵美氏(大石さんの記事はこちら→)は、「ホテルで働きたい」という自身の夢を叶え、新卒で同ホテルに入社。主に宿泊部に属し、入社10年目に語学留学のため退職。約1年間の留学期間を経て復職し、グループの中では女性初となる収益責任者(レベニューコントローラー)として、ホテルの収益の柱を支えてきた。
同ホテルでは、女性も重責のある役職を務めるなど前例をつくり、キャリアアップしてきたからこそ、後進の育成につながっている。

トリミング済_空本写真.jpg最後に、同ホテルの今後のチャレンジについて聞いた。
「2025年広島駅南口リニューアルに伴い、開業する『ホテルヴィスキオ広島』の準備を進めています。時代とともにホテルに求められる役割も変化してきました。新型コロナウイルスといった、これまで経験したことのない経営環境の中で、改めて、ホテルのあり方を見直していかなければならない時期にきていると考えています。今いる人材を生かして業務効率化を図り、軌道に乗せるか等、会社一丸となって取り組む中で、多様な人材が活躍し、それぞれの能力を発揮できる職場とすることも、一つのキーワードとなっています」と話してくれた。

●取材担当者からの一言

広島におけるシティホテルの先駆け的な存在として、地元広島はもちろん、国内外の利用客に愛されてきた同ホテルだからこそ、従業員のプロフェッショナルマインドが非常に高く、それが主体的な能力開発につながっていると感じた。そうした従業員に応えるべく、組織も就業継続や両立支援、キャリアアップを可能にするさまざまな制度や、柔軟な対応で支援している。また、それぞれの持ち場で経験を積み、会社の制度を活用し、「ワークorライフ」ではなく、自身が主体的に選びとりながらワークandライフを両立する。性別を問わず、管理職として活躍できる組織文化が醸成されつつあるようだ。

●取材日 2021年2 月
●取材ご対応者
総務部 総務課 課長 空本 祐始氏