働き方改革優良事例

目標とするのは、「働き方“生きがい”改革」

田中電機工業株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 301以上
  • 推進体制(経営者)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
  • 時間・場所等の多様な働き方
  • 多様な人材の活躍
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒732-0802 広島市南区大州1-5-24
URL http://www.tanaka-elec.co.jp/
業務内容 電気電子制御盤等の設計・製作・販売など
従業員数 354名(男性290名、女性64名)

seika_header.png

  • 仕事を通した自己実現(生きがい)にも配慮した改革を推進
  • 方針・目的を決定する「働き方改革推進委員会」の設置
  • イントラネットを活用し制度・取組を周知
  • トップが従業員の声に耳を傾ける社内懇親会により、従業員のニーズに対応
  • 有給休暇を取りやすくする時間単位の休暇制度の導入
  • 所定外労働時間一人当たり平均6時間削減(昨年比)

seika_footer.png

トップダウンによるスピーディーな改革推進

イントラネットを通じた労働時間&休暇日数の管理

type1_tanakadenki_2.jpg代表取締役会長の田中秀和氏は、広島商工会議所の副会頭を務め、働き方改革の必要性は早くから認識していたが、胸の内では次のような悩みを抱いていたという。
「上澄みだけの改革を行うと、仕事に対する達成感を奪うことにならないだろうか。特に成長著しい若手従業員たちは、納得がいくまで仕事と向き合いたい、自己実現を図りたいと願う者も少なくない。とはいっても、今後少子化が進み人材が不足していく中、企業として多様な働き方を推進していくことも必要だ。バランスのとれた改革を行っていくにはどうしたらよいものか」

しかし悩んでばかりで足踏みしているわけにもいかない。田中会長はトップダウンによる改革推進を決断し、社内に「働き方改革推進委員会」を設置。同委員会のもと方針や目標を決定し、社内イントラネットを通じて、まずは時間外労働削減の徹底、有給休暇取得向上期間の設定などを全従業員に周知した。
「改革を行うにしても、一律に行っては問題が生じます。われわれは受注産業ですので、自分たちの都合で会社を運営するわけにもいきません。正直言って、最初は目標が達成できるか不安でしたが、生産性向上のための増員や委託会社の増加などにより、時間外労働を削減することができました。個々の従業員がタイムリーに時間外労働の状況を把握できるシステムを導入するとともに、毎週の部長会で報告を行うことで、従業員および所属長の意識も大きく変わりました」と、田中会長は取組の手応えを語る。実際に従業員に対して、目標を明確化、周知することで、従来あった付き合い残業は減ったそうだ。また、有給休暇取得向上期間を設置することで、それまで有給休暇を取らないことがプライドになっていたが、従業員の意識も変わり、有給休暇が取得しやすい環境になったとのこと。

type1_tanakadenki_5.jpgこうした努力により、時間外労働は、昨年比で一人当たり月平均6時間削減できた。取組の結果に手応えを感じてはいるものの、やはり繁忙期における時間外労働にどう対処するかはいまだ課題だという。その解決策としては、「委託会社のさらなる増加」「業務分担の変更」「生産管理システムの再構築」「人員の増加」などを検討しているそうだ。

従業員の声に耳を傾ける、社内鍋パーティー

従業員のニーズにトップダウンで柔軟に対応

type1_tanakadenki_3.jpg実はこうした取組が行われる以前から、同社では職場環境改善に関する改革がトップ主導でスピーディーに実施されていた背景がある。例えば有給休暇を取るにしても、病院に寄ったり、保育園に子どもを迎えに行ったりなど、半日もかからない用事で丸1日の有給を消化するのはもったいない。そこで同社では、4・5年前より、時間単位の有給制度を設置しているが、驚いたことにこうしたアイデアは、トップである田中会長から提示されたものだという。

なぜトップが気付くことができたのか。その理由は、トップと従業員がフランクに意見を交換し合えるコミュニケーションにある。同社では、ほぼ毎月社内で「鍋パーティー」を開催し、会長・社長・従業員が同じ鍋を囲んで仕事の話はもちろん、たわいない世間話や家庭のことを話しながら、交流を図る機会が設けられている。この直接的なコミュニケーションが、トップが従業員のニーズを把握しスピーディーな改革を可能としているのだ。
「時間単位の有給休暇の他に、全従業員へのメンタルヘルスケアの実施や、1子につき月1万円の子ども手当支給なども行っています。わが社は、“個”の成長が会社の成長にもつながると捉えています。従業員が安心して仕事に取り組めるように、経営陣は彼らの本音にアプローチする努力が必要です」


type1_tanakadenki_7.jpgこういった改革を受けて、入社13年目の二木さん(コンピュータ開発担当)は以下のような感想を語ってくれた。
「残業をする場合は、必ず事前申請が必要ですので、自然と残業時間が抑制されるようになりました。また助け合いにより、業務の標準化が促進されるようになったのもありがたいですね。有給も時間単位で取得できますので、私のような子育て世代の従業員はすごく助かっています。妻と子どもが風邪で同時にダウンした時などは、有給を利用して病院に連れて行くこともできました」
制度の導入により、同社の従業員も自然と働き方の意識改革が促されているようだ。

type1_tanakadenki_8.jpg

これからの課題は多様な働き方の追求

個人の成長を促す働き方改革

type1_tanakadenki_4.jpgまずは時間外労働の削減と有給休暇取得率向上に力を注いできた同社だが、田中会長の頭の中には次なる改革の構想がすでに出来上がっている。
「弊社は“個人の成長”が“会社の成長”に直結すると考えています。会社としては、成長を重ねてきた優秀な従業員をたやすく失うわけにはいきません。しかし昨今は、介護の問題や家族の病気の問題などがあり、優秀な人材を確保していくには、多様な働き方をカタチにしていかねばならないと実感しています」と語る田中会長。

その言葉の背景には、家族の介護によりやむを得ず退職を希望する従業員や、配偶者の入院で在宅勤務を希望する従業員にどう対応するかなどの問題があるのだが、早速、同社ではそうした従業員のニーズに応えて、今年8月から「在宅勤務制度」の導入を開始。さらに、経験豊かな従業員が少しでも長く活躍できるように、定年退職の年齢を60歳から65歳へと引き上げることを決定した。また安芸高田などに工場を持つ同社は、地域の皆さんの「働きたい」という意思に応えるため、再雇用年齢を65歳から70歳に引き上げ、より多くの方が活躍できる社会の実現に一役買っている。こうしたスピーディーな改革が実現できるのは、やはり活発な社内コミュニケーションが功を奏しているのだろう。トップと従業員の距離感が近いからこそ、問題がすぐさま顕在化し、改善に向けた素早い一手が打てるのだ。

type1_tanakadenki_6.jpg実際、取組を行った感想について尋ねると、「“案ずるより産むがやすし”でしたね」と、田中会長は笑顔で答えてくれた。取組を行う際、障害を感じたことは今のところ何もないそうだ。ただ一つ気になることは、同社の場合、個人技が問われるエンジニア集団ゆえに、仕事にはどうしても「孤独感」が伴ってしまう。従業員からもそうした声が上がっており、既にメンタル的なケアも行っているが、今後も会社を挙げて考えていかねばとも考えているそうだ。

最後にこれから働き方改革に取り組む企業に向けてアドバイスを求めたところ、「従業員が幸せを感じて、初めて会社の未来も明るいものとなります。今後も弊社では、従業員が働くことを通して、自己実現できるような働き方改革を推進していく所存です。弊社としては、“働き方”のあとに“生きがい”の一文字を加え、“働き方生きがい改革”となるよう努力したいと考えています。これから働き方改革の取組を進める企業にも、改革をきっかけに、生きがいを見いだせる働き方を模索してほしいと思います」と力強いエールを送ってくれた。