働き方改革事例

『皆が誇りを持てる良い会社』を目指して、
ボトムアップの改善と健康経営を軸に改革!

アクト中食株式会社

  • 卸売業・小売業
  • 広島市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒733-0832 広島県広島市西区草津港2丁目6番60号
URL https://www.act-cs.co.jp/
業務内容 総合食品商社
従業員数 437名(男性285名、女性152名)

(2018年7月現在)

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  • アンケートや社長自ら従業員との対話で声を吸い上げ取組着手
  • 業務改善プロジェクトの発足で、従業員の声をもとに業務を効率化
  • 個人ごとの「早帰りDAY」の設定で実施を徹底
  • 柔軟な働き方、健康セミナーの実施で安心して働ける職場づくり

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取り組んだ背景とは? ~「皆が誇りを持てる良い会社」と「健康経営」を目指す

業務用食品卸業・米穀卸売・全酒類卸売、業務用食品スーパーFC本部の運営を行っている同社では、2013年頃までは従業員の離職が相次いで発生していた。「人材不足の厳しい状況下でも、何とか業績を上げつつ、労働環境も改善していかなければならないと思っていました。従業員が生き生きと働き、お客さまに喜んでもらい、なおかつ収益を得るのが良い会社だと考えています。そこで、これら3つの要素を満たすことを目指し、『皆が誇りを持てる良い会社を目指す』という基本方針を立てました」と代表取締役の平岩由紀雄氏は振り返る。
さらに、従業員が重い病気を患い休職したことも契機になり、「健康経営」も目標に掲げ、社長自らが旗振り役となって本格的に働き方改革への取組を始めた。


取組導入のプロセス ~状況を把握しトップダウンで改革

まず、社長自らが会社の現状を把握するために、全従業員を対象にしたアンケートを実施し、若い従業員を集めて直接意見を聞いた。従業員からの「休みを取りづらい」「労働時間が長い」といった不満を受けて、労働環境の改善に取り組みながら、従業員の満足度を上げていくことを重視した。
そこで2015年度の目標に「有給休暇の取得2日」(2016年度より5日)と「1人当たりの1日の労働時間1時間削減」を掲げて具体的な取組を開始し、生産性の向上と労働環境の改善に取り組む方針を全従業員が集まる経営計画発表会で周知した。
2017年度には、独立行政法人中小企業基盤整備機構の支援も加わり、社長がリーダーを務める業務改善プロジェクトチームの活動も加速した。従業員が心身共に健康的に働ける「健康経営」の土壌づくりを図りながら、生産性の向上による残業時間の削減を推進している。
これらの取組について平岩社長は次のように語る。「会社の体質を根本的に変えたいと考えました。今までは目の前の業績ばかりが気になって、業務改善を先送りしている傾向がありました。そこで私が、毎月の会議などを通して、特に管理職層に対して何度も取組の必要性を説き、本当に伝わったかどうかまで確認するなど、会社の思いの共有を徹底しました。こうしてやらざるを得ない環境をつくりながら、こつこつと改善活動を行ってきました」
社長直轄のプロジェクトチームで、管理部門も巻き込むことが、スピーディーに制度導入や改革を進めることにつながっている。


主な取組と工夫点 ~新人からの改善提案も歓迎し、従来の「当たり前」を改善

残業時間の削減、有給休暇の取得率向上などのために、社会保険労務士法人と今後の制度設計について50時間以上の協議を行い、さまざまな取組を実施していった。

現場からの改善提案で業務を効率化

前述のプロジェクトチームの活動は主に、現場からの改善提案をもとに、地道な業務改善を行っている。
従来は電話・ファックスでの注文受付や、取引先への集金に多くの時間がかかっていた。そこで、取引先に取組の目的を丁寧に説明し、お願いすることで、少しずつネット注文や口座振替への切り替えが進み、業務時間の削減につながった。
「今までは当たり前だと思ってやってきたことにも、改善の余地はあります。注文受付の変更は、当時入社1年目の従業員の提案で実施したものです。業務改善について、現場の従業員から提案が出てくるのはとてもうれしいです」と平岩社長は言う。
商品の配達についても、お客さまと配達日時の段取りを前もって行うことで、再配達や調整時間の削減ができ、配達担当者が不在の場合にも、他の担当者が代わりに配達ができるようになるなど、効率化につながっている。特に残業が多かった営業ドライバーを中心に、大幅な残業時間の削減を実現している。
また同社では、年に一度の慰労会を兼ねた「経営計画発表会」の場において、優秀な業務改善提案を行った従業員や、業務以外の部門で会社に貢献した従業員を表彰するなど、従業員のモチベーション向上も図っている。

個々の状況に応じた「早帰りDAY」の設定で実施を徹底

残業時間の削減と、従業員一人一人の業務効率化に対する意識を高めるため、「早帰りDAY」を設けている。個々の業務内容に応じて繁忙日が異なるため、同社では全社一斉ではなく、従業員自身が業務内容や状況に応じて、個別に実施日を設定している。「早帰りDAY」当日には、その日の早帰りのメンバーが一覧で貼り出され、「早く帰ること」を社内に宣言し、共有している。
さらに毎日、時間に対する意識を高めてもらうことを目的に、定時10分前の17時20分に「ほたるの光」を流し、早帰りを促している。「今までは、業務が終わっても残っている従業員が少なくありませんでした。しかしこうした取組によって、早く帰る意識が社内に浸透してきたと思います」と専務取締役の平岩宏隆氏。
総務部門においては、毎日定時10分前に終礼を新たに実施することにした。現在の進捗状況を確認し、残業を申請する場合には不要な残業がないかを確認しながら、部署内での協力体制も強化する。

柔軟な働き方、健康経営で安心して働ける環境づくりへ

出産や子育てなど従業員の事情に合わせて、正社員、限定社員、パート・アルバイトなど勤務形態の転換に柔軟に対応している。非正規社員から正社員へ登用する社内制度により、人材の循環を円滑にし、社内の活性化を図っている。
従業員の健康も第一に考える社長の思いから、医師による「生活習慣病とがんにならない食生活セミナー」の社内開催や、外部セミナーへの参加費の負担なども行っている。各支店では新たに「計画的年休日」を設け、お客さまに対しても、取組に対する理解をいただくように努めながら、従業員が安心して休めるよう整備した。こうした取組により、従業員が心身共に健康で安心して働き続けられる環境づくりを進めている。


取組の成果

採用についても順調で、一度会社を離れ転職した従業員が復職する事例も複数ある。全社的に業務改善に取り組むことで、従業員一人一人が取組を前向きにとらえ、作業時間を考えながら効率を意識して動くようになっているという。「これまでの取組を通して、一番に従業員の成長を実感しています。人が育つことで業務もどんどん効率化され、会社としてもさらなる高いレベルを目指せるようになります。今まではできないと思っていたことが、実際にやってみるとできたということで自信になります。それにより、更なる取組にもつながっています」と平岩社長は語る。

労働時間(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が139.4時間
・常用雇用者一人当たりの所定外労働時間(月平均)約2時間削減

非正規雇用(直近3年間)

・非正規社員から正社員へ転換する社内制度を3人が利用


従業員からの評価

総務課の大畑さんは、取組について次のように語る。
「早帰りDAYなど残業時間削減の取組により、一人一人が業務の効率を意識するようになり、仕事にメリハリが付きました。従業員全員で生産性の向上について考え、業務の改善と標準化に向けて意見を出し合ったことで、働き方改革が進み、社内に一体感も生まれています」
皆で取り組むことで、コミュニケーションが活発化し、協力体制がより一層強まったという。さらに次のように続ける。「有給休暇を取得しやすい環境が整い、子どもの学校行事や病気の際にも大変助かっています。子育てをしながら働きやすい職場だと思います」


今後の目標

「お客さまの繁栄、仕入れ先さまの発展、全従業員の幸福、これら三方よしの経営理念をいかに徹底してやっていくかが大切だと思っています。そのためにも、1人当たりの生産性を上げて、収益を上げ、給料もアップするなど労働環境の改善に取り組んでいきたいと思っています。いろいろなことを同時進行しながら取り組まなければなりませんが、現場の主体性を引き出せるマネジメントに変化してきたと思います。持続的に従業員の心技体を向上させることが、今後の企業経営の鍵を握ると思っています」と平岩社長は締めくくった。より一層、健康経営を重視しつつ、従業員の意識を高めながら、働き方改革を進めていくという。

取材日 2018年9月