働き方改革事例

従業員全員参加の取組を通じて、
やりがいのあるボトムアップ型組織を目指す

楠原壜罐詰工業株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 31〜100
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認定マーク
所在地

本  社:〒733-0012 広島県広島市西区
中広町1丁目16番24号

吉田工場:〒731-0542 広島県安芸高田市
吉田町相合1100

URL http://www.kusucan.com/
業務内容 食品製造業(缶入り清涼飲料水製造が主体)
従業員数 47名(男性42名、女性5名)

(2018年9月現在)

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  • 全員参加の生産保全活動で、無駄やトラブルゼロを目指す
  • 独自の社内表彰制度で、生産性向上へのやる気を引き出す
  • 勤怠管理システムの導入で、出張先からもシフト確認を可能に
  • 100年後の未来の工場イメージをイラストで共有
  • 経営理念や将来ビジョンを記載した手帳型経営計画書を従業員に配布

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取り組んだ背景とは? ~みんながハッピーになるための改革へ

「働きやすい環境づくりは常に考えていましたが、最近は人手不足が顕著で、求人募集を掛けても集まらないのです。そうした中で、2017年度に広島県が実施する働き方改革の外部視点アドバイス事業に参加したことをきっかけに、当社の本格的な取組がスタートしました」と取締役工場長の楠原史朗氏は語る。2017年10月に開催した「働き方改革キックオフ」において、「有給休暇の利用促進」「出勤時間の変動防止」「社内コミュニケーションの向上」を目標に「みんながハッピーになるための改革」を進めることを社長が発表した。
「改革への思いはずっとありましたが、日々の仕事に追われてなかなか前に進まなかったのです。広島県が実施する働き方改革の研修や外部視点アドバイス事業などに参加し、さまざまな助言を受けたことで、具体的に動き出せました」と楠原氏は続ける。


主な取組と工夫点 ~TPM活動やカイゼン大賞で、生産性の向上を意識

全員参加の生産保全「TPM活動」を行い、無駄やトラブルゼロを目指す

「今、最も力を入れているのがTPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス)活動です」と楠原氏。TPM活動とは、トップから現場の従業員まで全員参加の生産保全と呼ばれているもので、チームで集まって話をしながら不具合を事前に見つけ、無駄や故障、不良などのトラブルをゼロにしようというものだ。結果的に、機械の稼働率が上がって予定通り作業が進めば、作業時間を削減できる。2017年12月より推進メンバーの研修を進め、2018年から全社展開として3つのTPMチームを組織した。
「チームでの活動は、ボトムアップ型の自主保全が中心です。専門家の指導を受けながらではありますが、いつ、何をやるかは、従業員自らが決めて活動を進めます。最初は『それで続くのか?』『雰囲気はどうなのか?』と心配しました。でも始めてみると、みんなでワイワイガヤガヤ、楽しそうに意見を出し合いながら活動していました。自発的な活動が結果につながり、成功体験となる。それはやりがいにつながります。それこそが働き方改革だと思っています。稼働率も着実に上がっています」と楠原氏は話す。

カイゼン大賞やMAP賞など独自の表彰制度で、継続的に生産性を向上

「工場の仕事の面白さ、やりがいにつながるものが改善だと思います。自分の発想やアイデアが改善につながって、自分はもちろん、その業務に携わる人が楽になる。そして、それが利益につながるかもしれないという醍醐味を従業員に理解してもらいたい」と楠原氏。
その願いを込め、工場長に就任した約10年前から「カイゼン大賞」の表彰制度を実施している。設備改善提案書を書いて工場長に提出すると、半年に一度、大賞が発表される。継続していくうちに毎回20~30ぐらいの提案書が出るようになり、カイゼン大賞自体の質も上がって、現場の改善に確実にプラスに働いているという。
その他、現場に不良品があったり設備の不具合を見つけたりした従業員には、MAP(みつけてくれて・ありがとう・ポイント)賞を授与するなど、生産性向上に貢献した従業員を評価する制度を整えている。

「勤怠管理システム」で、スマートフォンからもシフト確認を可能に

旧来のタイムカードからクラウドの「勤怠管理システム」に変更し、勤怠の見える化を行ったことにより、有給休暇の取得状況や残業時間等が月の途中でも分かり、管理指導しやすくなった。
「従業員がスマホから入力できるので、出張先から出退勤時間を報告できるようになり、私たち事務スタッフも管理しやすく効率が良くなりました。シフトもスマホで確認でき、急なシフト時間の変更にも対応しやすくなりました」と生産部生産運営課係長の椋木さん。

100年後の未来の工場をイメージしたイラストを作成

会社の120周年記念に合わせ、アーティストに依頼して、100年後の未来の工場をイメージしたイラストを作成した。従業員が毎日見える工場の入り口に設置したり、ホームページに使ったりすることで、働き方改革の方針「みんながハッピーになるための改革」への意識の共有に努めている。
「従業員にとっては、イラストの中に工場の一部がちりばめられているのは面白いですし、従業員の家族や訪れた人が見て、『なんか楽しそうな会社だね』と言われると、うれしいです」と楠原氏。

経営理念や将来ビジョンを記載した手帳型経営計画書を全従業員に配布

会社の経営理念や目標などをしるした、手帳型の経営計画書を2年前に全従業員に配布した。具体的な将来ビジョンや数値目標が記載されており、会社の長期的な展望や計画を目にすることができる。従業員に対しても、経営意識を持つことを促している。


取組の成果

「TPM活動を始めて、機械の平均稼働率が上がり90%を超えています。稼働率が上がっている分、残業時間は確実に減ってきていると思います」と楠原氏。
「有給休暇制度の利用促進の一つとして、アニバーサリー休暇も導入されていますが、従業員同士がお互いの休暇取得について協力し合う体制づくりのきっかけとなり、チームワークもずっと良くなったと感じています」と椋木さんも続けた。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が169.9時間/月
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率81%

育児(直近3年間)

・配偶者が出産した男性従業員のうち、育児休業を取得した者が1名


従業員からの評価

「TPMのチームリーダーをしています。人に教えることは大変ですが、チームでよく話をするようになり、稼働率も上がっているのでうれしいですね。特定の人だけができることを少なくして、みんなができるようになることが重要なので、長期的な展望を持ってがんばりたいと思います。上司が率先して早く帰るので、仕事が終われば帰りやすいのもいいですね」と生産部副工場長補佐の五十川さん。
「2018年に育休を2週間取りました。男性従業員の育休は、会社の第1号だったので、取れるかどうか不安だったのですが、上司から快諾され、家族もすごく喜んでくれました。その後も、子どものために有給休暇をしっかり使っています。従業員同士の壁がなく、コミュニケーションが取れていて働きやすいです」と、生産部製造課主任の戸谷さんも話す。


今後の目標

「TPM活動を通じて、さらにボトムアップ型の組織にすることが一番の目標です。そうすれば、経営陣だけが考えるよりずっといい職場をつくることができると思います。これからも、いろいろな壁に当たると思いますが、一つずつクリアしていくことが大切だと思います」と、楠原氏は今後の目標を語った。

取材日 2018年10月