働き方改革事例

小規模だからこそできる働き方改革で
働き続けたいと思える会社へ

有限会社高松製作所

  • 製造業
  • 福山市
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認定マーク
所在地 〒720-1134 広島県福山市駅家町中島269番4号
URL https://tkmts.co.jp/
業務内容 精密機械加工
従業員数 12名(男性5名、女性7名)

(2018年6月現在)

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  • 多能工化によるカバー体制の構築
  • 一人一人の技術を向上させる教育体制
  • 有給休暇の計画的付与
  • 採用、機械の導入、大切なことは従業員と一緒に考える

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取り組んだ背景とは? ~従業員が長く働き、能力を伸ばせる会社を目指す

切削加工を得意とし、マシニングや旋盤などを使って精密な加工品を製作している同社。今後進むと予想される人手不足への危機感から、若い人が活躍できる会社に変わろうと、約8年前から現場を中心に据えた職場改善に向けて取組を始めた。
「当社は“ものづくり”の会社です。従業員の技術力がそのまま、会社の力になりますが、2・3年程度の期間では熟練工は育ちません。会社の力を伸ばしていくためにも、従業員が長く働き続けて、能力を伸ばしていける環境をつくる必要があるのです」と、代表取締役の高松信二氏は話す。


取組導入のプロセス ~従業員の意見を取り入れ、快適な職場環境へ

同社の平均年齢は28.5歳であり、若い従業員が多い。高松氏は、「従業員に長く働いてもらうために、“どういった会社にしたいか”という内容で、従業員と話し合っています」と語る。
月1度の社内会議に加え、業務改善の会議や人材育成のための教育会議などを行い、役職に関係なく意見交換できる場を設けた。すると、もっと短納期で仕上げてほしいという会社の考えや、休みをしっかり取りたいという従業員の思いが明らかになった。そこで、両者の思いを両立させるために、従業員のスキルアップに取り組んだ。複数の機械を使えるようジョブローテーションを組んだり、研修の時間を設けて技術指導を行ったりするなど、それぞれの技術力の向上を図った。こうした取組による多能工化が進めば休みのカバー体制が整い、生産性を落とすことなく、従業員もより休みやすくなる。会社と従業員の双方にメリットが生まれる好循環を目指している。


主な取組と工夫点 ~従業員との対話・コミュニケーションを重視

一人一人の技術を向上させる教育体制

「小規模だからこそ目が行き届き、会社全体が一体となって常に技術を磨きつつ、一人一人がものづくりに集中できます。そのような環境が整っているのが、当社の強みです」と、高松氏は語る。
同社を支える従業員一人一人の技術を向上させるため、切削や加工の手順、例題やテストまでを盛り込んだ教育工程を作成し実施するなど、勉強と技術習得のために時間も割いている。さらに、個々の能力や性格は異なるため、若手従業員とベテランの熟練工をペアにして個別に3カ月・6カ月の教育体制を組み、技術や意識面の指導を行っている。若手従業員の基礎知識の向上や幅広い視野の習得に加え、指導側の熟練工も基礎を学び直せるとともに、新しい発想も得られるなど双方に良い効果がでているという。

有給休暇の計画的付与

毎年12月に翌年の営業日カレンダーを作成するが、その際、有給休暇の計画的付与を行っている。各自の有給休暇について3~4日の希望を出し合い、思い切って全社を休日にすることもある。場合によっては、全員が休む方が、製造工程の面から見ても効率的だと考えるからだ。その他、子どもの看護や親の介護、本人の通院などに対応するため、半日単位の有休の取得を認めているが、「有休に関しては、従業員の声を聞きながら、個別の状況に対して柔軟に対応していきたい」と、高松氏は話す。

採用、機械の導入、大切なことは従業員と一緒に考える

新たに人を採用する時は、「どんな人材が欲しいのか」を従業員と一緒に考えることを大切にしている。採用では、まず3カ月間はアルバイトの見習いとして働いてもらう。そして2カ月を過ぎたところで、本人の意思を確認した上で、現場の従業員の意見も聞きながら本採用に移る。これにより、ミスマッチングを防ぎ、スムーズな定着を図っている。
従業員の意見を尊重するのは、採用だけではない。機械の購入等においても、適宜、従業員にヒアリングを行った上で導入するなど、大切なことは従業員と一緒に考えている。


取組の中では課題も

「誰かが休んだ時のカバー体制はまだまだ課題です。会社のキャパシティーに合った受注量でなければ人手が足りなくなってしまいます。一人一人の生産性向上や、多能工化による協力体制の強化も不可欠です」と、高松氏は課題を語る。受注と生産体制のバランス調整が重要だという。


取組の成果

「当社では、従業員の個別の成果を賞与に反映しています。そして有給休暇については、従業員の権利であることをしっかりと伝え、余裕を持って取得してもらっています。きちんと評価した上で、休める体制を整えることで、従業員の士気が上がりました」と高松氏。さらに、人手不足解消のために始めた働き方改革だったが、今では求人を出していなくても入社希望の問い合わせが来るようになってきたという。「従業員と一緒にどういう会社にしたいか、意見交換をしながら取り組んできた結果だと感じています」とも話してくれた。

仕事と家庭の両立

・女性従業員の育児休業取得者 2人(100%)(直近3年間)
・男性従業員の育児休業取得者 1人(100%)(直近3年間)


従業員からの評価

同社で初めて、産休・育休を取得した製造チームの中塔さんは、「社長から、初めてのことだから復職後まずは1カ月働いてみて、どういう形の勤務にしていくか考えていこうと言ってくれました。さまざまなことに柔軟に相談に乗ってもらえています。この会社だったから2人目の出産も決意することができました」と語る。中塔さんは、同社で初めての産休取得者ということで、自分で作業マニュアルを作り、休みの期間に他のチームメンバーが困らないように工夫したそうだ。
「先輩から積極的に話し掛けてくれるなど、社内全体が気軽に話せる雰囲気があるので、分からないことがあれば先輩方に気軽に聞くことができます」と、製造チームの里崎さん。「年配の熟練工の方は、答えをすぐに教えるのではなく、まずはアドバイスのもと自分で考える機会を与えてくれます。有給休暇に関しては、子どもの運動会や行事に合わせて取得しています。仕事のモチベーションにもつながるので、メリハリを付けて働けています」と、製造チームの園尾さん。休みの時も、チーム内のメンバーがほとんどの機械を使えるので安心して休めるという。こうした多能工化や、全員が限られた時間の中で協力しながら作業を行う意識づくりにより、お互いが不在の時に協力し合う体制・雰囲気ができているという声が上がっている。


現在取り組んでいる上での課題や今後の目標など

「健康なくして働き方改革はないと、従業員にいつも話しています。しっかり身体を休めるからこそ、効率よく仕事ができるのです。また、全従業員が挑戦を行いながら、業務を通して人間的に成長できることが理想です。そんな会社を目指していきます」と高松氏。今後も人材育成をはじめ、生産性の向上、休日の増加、健康に向けた制度の整備に尽力するという。最後に高松氏は次のように話してくれた。「小さい会社だからこそ、経営者が従業員と同じ目線でいることを大事にしながら、ここまで取り組んでこられました。われわれのような小規模の会社にこそ、勇気を持って働き方改革に取り組んでほしいです」

取材日 2018年10月