働き方改革事例

週休2日制の確立と有休の取得促進で、
仕事と家庭の両立を支援

株式会社かこ川商店

  • 製造業
  • 福山市
  • 1〜30
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認定マーク
所在地 〒720-2124 広島県福山市神辺町川南636番地1
URL https://kakogaward.jp/
業務内容 金属と古紙の資源リサイクル、廃棄物処理業
従業員数 21名(男性13名、女性8名)

(2018年6月現在)

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  • 仕事量を調整しながら、休むという習慣をつくる
  • 休暇予定とシフトを社内に掲示し、協力体制をつくる
  • さまざまな知識や技能を兼ね備えた多能工の育成
  • 業務内容や取組を内外に広く周知

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取り組んだ背景とは? ~社員の採用と定着に感じた危機

「私は6年ほど前に、社長に就任しました。しかしその後、社員の退職が続き、どうやって採用・定着を図っていけばよいか分からないという状態でした」と、代表取締役の水主川嘉範氏は当時の苦悩を語る。
「今、振り返ると、自分なりに頑張っていたが頑張り方を間違えていたと思う。“お客様のために”“仕事の継続のために”“それが社員のため”と思って、時には少ない休日にも出勤してもらっていましたが、そういうことが結果として社員を疲弊させていたと思いますし、それに気がつけなかった自分がいたと思います。」
当時は7~8名の社員がフルタイムで働き、交代できる人員が足らず、休暇が満足に取れない状況だったという。
「先代の社長である父の頃は、最小限の人員で最大限の利益を上げるという方針だったので、当然、制服などもありませんし、完全な休日は日曜と祝日だけでした」と話す水主川氏。入社して3年以内に辞める社員も多く、このままではいけない、何かやり方を変えないといけないと思い、働き方改革に取り組んだ。


取組導入のプロセス ~社員から丁寧に事情や希望をヒアリング

「まず社員の意見を聞くことから始めました。改革という大げさなものではなく、週休2日制を確立するところから取り組もうと考え、丁寧に一人ずつ社員と話をしました」と、水主川氏は語る。就業に関することだけでなく、家族環境や健康状態、地域との関わりなども聞き、社員の置かれている状況の理解に努めた。例えば、「子ども会の役員をしていて、夜会合に出ることが多くなってきている」「地域の祭りのリーダーに選ばれそうなのだが、その場合会社を休むようになるので悩んでいる」など、これまではあえて聞かなかったことを聞き、あえて言わなかったことを伝えてもらい、個人個人と膝を詰めて話をするようになった。また、キャリアアップの目標や、職場や仕事仲間へ言いたいことなどを書くことができる、オリジナルのヒアリングシートも年1回作成することにして、経営者と社員の意見共有を図った。


主な取組と工夫点 ~社員から理解や協力を得ながら

仕事量を調整しながら、休むという習慣をつくる

「まず、高齢の社員を含めて、今後健康や体力面で心配があり、業務を多く抱えているベテラン社員の立場で考えました。社員の仕事量と休息のバランスを取る必要があり、休みを増やすため、新しい採用にも力を入れるようにしました」と水主川氏。社員が休暇をとることによって現場への過度な負荷が掛かりすぎないよう仕事量を調整しながら、どう休みを確保するかが課題だったと話す。最初は1人の人にターゲットを絞り、1カ月に1~2日の休みを増やすことから始め、1人につき3カ月ほどかけ、最終的に約2年かけて週休2日制に移行していった。

有給休暇とシフトを社内に掲示し、協力体制をつくる

有給休暇について、水主川氏は「そもそも休み慣れていないベテラン社員が多いので、こちらから有給休暇を取るように声を掛けて、具体的に休む日も提案しました」と話す。現在は、前月20日までに有給休暇を申請する原則を決めて、全体のシフトを調整している。そして、調整したシフトを社内に掲示することで、誰がいつ休むかが共有され、計画的に業務が遂行できるようになった。計画を立てて、残りの人員で業務が行えるよう協力する土壌ができ、有給休暇は気がねなく希望通りに取得できるという。

さまざまな知識や技能を兼ね備えた多能工の育成

「人材の育成が不十分だったことから、特定の人にしかできない仕事が発生していました。休暇を取ってもらうためにも、1人で複数の作業や工程を担当できる、さまざまな知識や技能を兼ね備えた作業者、いわゆる多能工化が急務だと考えました」と水主川氏。個人ごとに、作業する上で必要な技能の習得状況を見える化し、他の業務を知るために、別業務の社員が現場を見学したり、ベテランの社員が若手に付いて仕事を見守りながら教えたりといった取組を1年かけて実践した。社員からの理解や協力を得るため、社内全体でコミュニケーションを図りながら取組を進め、少しずつ人材を育てていく会社へと切り替えていった。また、業務マニュアルを作成し、社内の各チームがお互いの業務内容を把握できるようにもした。
現場担当の坂本さんは、「現場では、ベテランの人はほとんどの仕事をできますし、若手もこれまでの訓練やコミュニケーションによって、できる業務が増え範囲も広がっています」と話す。

業務内容や取組を内外に広く周知

仕事内容を「かこ川商店のできること」としてホームページで紹介し、内外に分かりやすく発信した。あらためて業務の可視化を行ったことで、問い合わせへの対応などもしやすくなり、事務部門が休んでも困らずにフォローできるという。
さらに「かこ川商店ジャーナル編集室」を設け、『KAKOGAWA journal』を毎月発行している。「日々の業務や社内の取組の他、リサイクルできるごみの処分に関する情報を載せています。お客さまにもっと、かこ川商店の良さやリサイクルの良さを知ってもらいたいです」と水主川氏。この他にも、小学校を訪問し環境授業をして、身近なごみと資源のことを子どもたちに考えてもらったり、再利用できる資源に実際に触れてものづくりを体験できる、子どもたちに向けたワークショップも開催している。このような取組で、働く人がわくわくする職場になり、それがお客さまに伝わることが、企業の成長につながると考えている。


取組の中では課題も

「多能工化に向けて、教育・訓練を行っていきましたが、かつて仕事は見て覚えろと言われてきたベテラン社員にとって、経験のない若手を相手に、手取り足取り教育することは慣れるまで難しかったようです。最初は、どう教えていいのかも分からないと、戸惑う人が多かったです。しかしそのことで、ベテラン社員には『自分にできること』と『人にコツを教えてできるように育てること』の大きな差を感じてもらえた。部下を育てることが上司である自分の次の成長につながり会社の成長につながると実感してもらうことが大切だと思いました。」と水主川氏。
さらに休暇については、「休みたい人がいれば、働きたい人もいます。お子さんの送り迎えや家族の通院の付き添いなど、丸一日ではなく、短時間だけ仕事を抜けたいといった事情の人もいます。そういった個々の事情を聞きながら、休暇の取り方や時短勤務などへも、さらに柔軟に対応していく必要があります」と語る。


取組の成果

社員と面談を重ね、休暇制度や社内環境の改善、人材育成等を実践してきたことで、社内の雰囲気が変わってきたという。休暇が取れない状況から、次第に積極的に休みを取る風土ができつつあり、休暇の取得率は上がってきている。

成果1 地域のことや両親の介護に関わったり、参観日・入学式・卒業式など子どものことに積極的に参加することができるようになった
成果2 休暇を家族や地域活動のためだけに使うのではなく、1人で街を歩く、本を読む、趣味に打ち込む等自分のために時間を使うことができるようになり、心身をリフレッシュし、エネルギーをチャージすることで仕事に集中できるようになった
成果3 休暇を取ることによって、特定の人にしかできない仕事の存在が明らかになり、それを補えるように予め休暇前に報・連・相をして社員がカバーし合うというチームワークが生まれた

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が155.9時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が54.4%、平均取得日数は6.8日

育児と仕事の両立(直近3年間)

・育児休業 男性1名、女性1名


社員からの評価

総務担当の池田さんは、「私自身は午後だけの半日勤務です。事務所は、フルタイム以外にも午前・午後だけの半日勤務や、16時までの勤務といったように、勤務時間が細かく分かれています。なかなか時間が合わない人もいますので、業務の引き継ぎや気付きを記す伝言ノートがあり、交換日記のようにやりとりをしています。今は、コミュニケーションが取りやすい職場になっていると思います」と話す。
「まだ入社2年目ですが、ベテランも多い中、社内の風通しが良く、雰囲気もいいです」と、坂本さん。続けて「妻が出産する際、予定日を社長に伝えていたのですが、こちらがお願いする前に業務の段取りをしてくれており、気兼ねなく出産後の休暇を取ることができました」と喜びを話す。坂本さんは男性の育児休業取得者第一号になったという。


今後の目標など

「個々の事情や年齢などに配慮した働き方改革の必要性を、より一層感じています。少人数だからこそできることもあると思いますので、体調やスキルなども考慮して、社員のワーク・ライフ・バランスを充実させたいです」と、水主川氏は目標を語る。
今後も社員とコミュニケーションを図りながら、介護世代、子育て世代の働く環境に対応するためにテレワーク・在宅勤務等ができる環境を整えて、仕事と家庭の両立を支援できる柔軟な体制づくりを整えていきたいと考えている。

取材日 2018年11月