働き方改革事例

効率化・技能向上とともに、
やりがいのある職場へ風土改革

東洋省力株式会社

  • 製造業
  • 広島市
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認定マーク
所在地 〒731-5109 広島県広島市佐伯区石内北5丁目4-22
URL http://toyo-shouryoku.co.jp/
業務内容 金属製品製造業(板金製缶加工)
従業員数 23名(男性17名、女性6名)

(2018年11月現在)

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  • システム導入やデジタル化などを進め、業務を効率化
  • 短納期の仕事は見直し、生産工程は営業が組む
  • 「マイホリデー制度」で有給休暇取得を促進
  • 報奨金制度や休暇制度でスキルアップを支援
  • 「業務改善提案制度」が社内の風土を変革

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取り組んだ背景とは? ~トップのトイレ掃除から始まった職場改善

食品機械や医療薬品機械に使われるステンレス製品を主力とし、半導体・産業機械・船舶・太陽光・店舗家具など、さまざまな分野で使われる金属製品の加工を行っている同社。
「社内を変えようと思ったきっかけは、私が社長に就任した7年前にさかのぼります」と、代表取締役の日高正典氏は思い起こす。「清掃を担当していた従業員が辞め、誰かがトイレ掃除をしなければいけなくなったのです。最初はみんなで順番に行っていましたが長続きせず、誰も掃除をしない汚いトイレになってしまいました。そんなある日、とある会社を訪問した際、そこの社長自らがトイレ掃除をしている姿を見掛けました。理由を聞くと、『従業員が仕事に集中できるなら、トイレ掃除は自分の仕事だと思えばいい』と言われて、私の考え方が変わりました。翌朝から私がトイレ掃除を始めると、いつしか従業員も身の回りを掃除するようになり、毎朝のルーティンワークになりました。職場環境改善の第一歩は、このようなことではないかと考えています。働き方改革も、自然と身に付き職場になじんでいくのがよいと考えています」


取組導入のプロセス ~環境整備からキャリアアップ、情報の共有化へ

環境面では、3K(暗い、汚い、キツイ)のイメージがある製造業。そのイメージを払拭するため、工場内の水銀灯をLEDに取り換え、屋根に遮熱塗料を塗り、水洗いの必要な業務がある場所はお湯が使えるようにした。ロッカールームや女性用の広いトイレを増築するなど、時代のニーズにあった環境整備を進めた。
さらに、システム導入などによる業務効率化や、技能向上に向けた取組も推進。2018年には、無駄な労働時間を削減し、生産性の向上を図ることを方針に掲げ、導線の効率化を図るための社内のレイアウト変更や、業務に関する情報の共有化など、多角的なアプローチで改革を推進している。


主な取組と工夫点 ~効率化を進め、極端な短納期は見直す

システム導入やデジタル化などを進め、業務を効率化

二重三重の入力をなくすため、2014年に受注管理システムを導入。合わせて、紙類のスキャニングによるデジタル化、状況を確認できるネットワークカメラの社内設置、ファックスで入った情報を担当部署のパソコンに送信する仕組みの整備など、これまでも、情報の共有化とデジタル化を進めて効率化を図ってきた。
こうしてIT化を行った受注出荷・見積もり発行・調達業務だが、それぞれが独立したシステムのため、データを一元管理できていなかった。データ入力もそれぞれのシステムを立ち上げて作業するため、作業時間は長くなる。これを解決するため2018年には、より高度な生産管理システムを導入し、情報化と入力作業の一元化を行った。

短納期の仕事は見直し、生産工程は営業が組む

「極端に短納期の仕事は受けません」と、営業兼生産管理部長の宮川さん。「当社では、納期の短縮ばかりを追求するのではなく、加工方法の工夫やコスト削減など、総合的なメリットを提案します。価格を抑えられるなどお客さまにも満足していただける提案をすることで、信頼関係が得られ次の受注にも結び付きます。無理な受注をしなくなったことで、売り上げは逆に上がりました」
また同社では、営業担当が中心となって生産工程を組む。生産の現場主導で工程を組むと、できるかできないかだけの判断になってしまう。しかし営業担当であれば、時間調整や外注という選択肢なども合わせて検討できるため、総合的な判断が可能となり、残業時間の削減にもつながるという。

報奨金制度や休暇制度でスキルアップを支援

人材育成のための仕組みづくりにも積極的に取り組んでおり、2017年度から「セルフ・キャリアドック制度」を導入した。スキルマップを作って職能体系図を貼り出し、自分が今どの位置にいて、上を目指すためにはどの資格やセミナーを受講したらいいかが明確に分かるようにしている。そのスキルアップを支援するために、「技能検定等合格報奨金制度」も開始した。資格やセミナーの受講希望者は、グループリーダーに申し出れば受講費用を会社が負担し、合格すれば奨励金が支給される。資格の更新料も会社が負担する。さらに講習やセミナーが休日に行われた場合は、前後4週間以内で代休を取る「教育訓練等休暇制度」を整備し負担を軽減。人材育成と技術力の向上を図っている。

「マイホリデー制度」で有給休暇取得を促進

誕生日や結婚記念日、学校行事などに有給休暇を使ってほしいという願いを込めて、「マイホリデー制度」を実施している。1〜2カ月前に申請し、各人の取得予定日は従業員全員が見られる場所に掲示する。「有給休暇を取る従業員のことを考えて、工程の前倒しや変更を考えてほしいのです。遠慮して休まない従業員もいますので、私の手帳には従業員やその奥さん、子どもさんの誕生日を記入しておいて、誕生日のある月に有給休暇を申請していない従業員には、声掛けをします」と日高氏。
2018年からは「ノー残業デー」も実施している。毎週水曜と土曜は定時退社促進日、給料日は定時退社日として、月5日以上の定時退社を目標としている。

「業務改善提案制度」が社内の風土を変革

「小さな提案でいいので、会社に意見を出してほしい」という趣旨で始まった「業務改善提案制度」。着想・コスト・実用性について改善委員会で評価し、良い提案は具現化されるとともに賞金が授与される。その一例として、手芸の得意な従業員が検査用の机カバーを布で作ったり、バレエのインストラクターをしている従業員が昼休憩にストレッチ体操を行ったりと、会社主導では思い付かないユニークな取組も実現している。従業員が主体となって行う改善提案は、社内の風通しのいい風土をつくっていく効果がある。

高齢者のための短時間勤務制度や職場環境の整備

65歳以上の高齢者には、短時間勤務制度を導入し、時間外勤務は行わせず土曜日は必ず休みにしている。休憩室はエアコンを備え、横になれるベンチシートも設置。食堂には血圧計を常備して体調管理を促すなど、高齢者が働きやすい環境を整備している。


取組の中での苦労点

日高氏は、取組の過程における苦労を次のように語る。「一番大変だったのは、自分の考えを変えることです。社長だからやらなくてよいのではなく、社長だから先頭に立ってやらなければならないということです。労働時間に関しても、以前から私が一番長時間働いていました。自分の業務を時間内に終わらせるためには、権限委譲が必要なこともあらためて気付きました。また、現場作業は長年の蓄積で属人化していて、作業方法も暗黙知になっているものが多かったのを、見える化したり標準化したりするのにも苦労しました」


取組の成果

「ここ最近、工場を含めて、社内に笑い声が絶えないですよ。冗談を言い合って、みんな仲が良く雰囲気もいい。取組が進んでいる証しだと思います」と、日高氏は成果を実感している。

労働時間(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が173.2時間

高齢者(65歳以上)の活躍

・65歳を超える従業員の短時間勤務制度を2人が利用


従業員からの評価

「マイホリデー制度を使って、参観日などの学校行事に参加できるようになったのがうれしいです。平日の参観日には、半日休暇を使って行きます。共働きなので、子どもが急に熱を出したときには、私が保育園に迎えに行くことも多く、家族もとても喜んでくれています。突発的なことでも、他のメンバーの協力体制があるので、気兼ねなく帰れます。事前に有給休暇の予定が分かるので、作業のスケジュールを調整するなど、休みやすい雰囲気づくりをみんなで進めています」と、宮川さんは話す。


今後の目標など

「期を終えるごとに、PDCAの進捗具合を見極め、トライアンドエラーを繰り返すしかないと思います。さらに休日や有給休暇の取得を増やし、生産性向上を図ることで売り上げも伸ばして、他の企業が見学に行きたいと言われるような会社を目指していきます。そうなれば、従業員も誇りを持って、さらにいきいきと働けると思います。広島県働き方改革実践企業に認定されたことでも、かなり効果があると考えています」と、日高氏は締めくくった。

取材日 2019年2月