働き方改革事例

人員配置の最適化を図るプロジェクトで、
施設の安定運営とサービス向上を目指す

社会福祉法人FIG福祉会

  • 医療・福祉
  • 府中町
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒735-0014 広島県安芸郡府中町柳ヶ丘20-2
URL http://www.fig-g.jp/
業務内容 社会福祉事業(高齢者介護・保育)
従業員数 301名(男性81名、女性220名)

(2019年1月1日現在)

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  • 人員配置の最適化を図るプロジェクトの立ち上げ
  • 丁寧な面接で職員の要望を把握
  • 職員のモチベーションを上げる「ほめ達研修」を導入
  • 緊急時臨時託児所を開設し安心して働ける職場づくり

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取り組んだ背景とは? ~さまざまな改善に取り組む中で新プロジェクト始動

安芸郡府中町エリアで、特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホームなどの高齢者施設・事業所を展開する同法人。業界的にも問題となっている採用難や離職率の高さは、同法人でも課題であり、解決のためにさまざまな改善に取り組んでいた。こうした取組の中、2018年2月にスタートしたのが、全シフトに対応できる“F職員”(後述)を中心とした新体制「Fプロジェクト」である。
「職員が働きやすい職場づくりを進めることは、施設の安定運営やサービス向上にもつながるものと考えています。広島県働き方改革実践企業認定制度も、その取組を進める上でのモチベーションになりました」と管理本部長の池田真純氏は語る。


取組導入のプロセス ~人員確保と休暇取得を3年計画の主要目標に

取組スタート時に、2020年度末までの実現を目指して、3つの目標を掲げた。まずF職員の必要人数(87名)を確保すること。次に職員が、年間109日以上の休暇を取得すること。さらに年間6日以上の計画有給休暇を取得すること。そして各事業所との連携・情報共有を行うために、事業本部会議で推進の方向性を話し合うと共に、これらの推進・取りまとめ役として、池田氏をはじめとする管理本部のメンバーも加わって法人が一体となった組織を設置した。
また同法人の働き方改革の要ともいえる「Fプロジェクト」は、施設・事業所内での優先順位を考え、特別養護老人ホームから導入することを決定した。


主な取組と工夫点 ~職場の課題に対応した取組を推進

人員配置の最適化を図るFプロジェクトの始動

日曜日や祝日、時間帯などによって生じていた人手不足を、各事業所のリーダーが休日出勤や残業で穴埋めするケースが少なくなかった。本来はマネジメント的な立場のリーダーが、現場の業務に追われて疲弊し、離職してしまうこともあったという。その解決策として、全シフト(早・遅・夜勤・土日祝日勤務)に対応できる職員をF(Full:フル)職員と定義し、諸手当の大幅増加や夜勤回数の調整などを行う新しい制度を「Fプロジェクト」と命名しスタートさせた。
またF職員以外のL(Limiter:リミッター)職員は、現行の給与水準を維持する一方でF職員への異動も促進、またF職員の新規の求人募集にも注力した。このプロジェクトを2018年2月に打ち出して以来、通所系施設で働いていた4人のL職員が、本人希望によりF職員へ異動し大きな戦力として活躍している。

丁寧な面接で職員のキャリアに関する要望を把握

介護現場を支える職員の意見を、より細やかにそしてタイムリーに吸い上げることを目的に、2018年4月より年7回の面接を人事考課にリンクさせた新たな人事評価制度を実施している。管理職と職員が話した内容は、記録として残すことも制度化。「現在はL職員として働いているが、数年後にはF職員になりたい」などの要望を早めに聞き出し、個々に合った働き方やキャリアプランをサポートすることで、離職の防止にもつながると考えている。

職員のモチベーションを上げる「ほめ達研修」を導入

入職後の各種研修や階層別の研修などはもともと整っているが、2019年度からは外部講師による「ほめ達研修」の実施を予定している。主に管理職やリーダーをターゲットにしたもので、研修に参加した全員が「ほめ達検定3級」を取得し、「ほめて伸ばす職員育成」ができるようになることを目標としている。「ほめられた職員のモチベーションが上がり、毎日の仕事の中に楽しさと幸せを見いだしてもらえるようになれば」と、管理本部人事グループ長の栗栖氏は期待を寄せている。

緊急時臨時託児所の開設で安心して働ける職場に

同法人で働く職員の70%は女性で、育休取得率は100%を維持している。子育て中の職員を支援できるように、事業所内保育園「チェリー保育園」も完備。また2年前からは、台風などの気象警報発令時に、臨時の託児所を開設している。警報が出て保育園・小学校が休みになった場合、職員は子連れで出勤し、子どもを預けて就業することが可能。「毎回10人ぐらいの子どもが一緒に過ごしています。昨年の豪雨災害時は、連日のことで大変でしたが、臨時託児所の存在は職員には大好評でした。今後も実施していきます」と、池田氏は話す。


取組の中での苦労点

Fプロジェクトのスタート時は、「同じ職場の仲間をF職・L職で分けることに違和感がある」という職員や、「F職で働きたくても家庭の事情でL職にとどまるしかない」というジレンマを抱える職員が見られた。その都度、法人全体としての方針を説明し、一人一人に丁寧なフォローを行った。
また、プロジェクトが動き始めた数カ月後に、F職員の離職者が出るという事態が起こり、あらためて職員定着のための改善の必要性を痛感したという。人事等の問題については各施設内にとどめず、事業本部長と管理本部長、そして人事担当者にスピーディーに上げ、それら諸問題を共有する中で職員と直接、密に話す機会を設けるようにした。これらの取組により、離職者は1年前と比べて半減している。


取組の成果

Fプロジェクト導入の半年後には、夜勤回数や残業の減少が数値として表れるようになった。無理のないシフトが組めるようになってきたので、各自の希望に合わせた休暇も申請しやすくなっている。現在、特別養護老人ホームのF職員の人数自体はおおむね確保できてきたが、法人の全職員の満足度という面を考えると、まだ計画は完成形とは呼べないという。今後、特別養護老人ホーム以外の施設にもFプロジェクトを浸透させ、安定した運営とサービスの向上を目指していく。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が163.2時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得日数は5.5日

育児(直近3年間)

・在籍中に出産した女性職員のうち、育児休業を取得した者の割合が100%

非正規雇用(直近3年間)

・非正規職員から正職員へ転換する社内制度を16人が利用している


職員からの評価

特別養護老人ホーム副施設長の宮地さんは、新プロジェクトの導入で職員は肉体的・精神的に随分ラクになったという。「他の職員を見ても、身体と気持ちのゆとりから、より親身に入所者に寄り添えるようになったのではないかと感じています。小さなことですが、職員が入所者さまと話す機会が増えました。自然と入所者さまにも多くの笑顔が見られるようになっています。また以前は、各自が自分の担当業務で手一杯でしたが、最近は後輩の指導・教育にも力を入れられるようになってきたと感じます」と話す。
一方、子どもの成長に合わせて夜勤が可能になり、在宅部門やヘルパーから特養に異動したF職員たちからは、「初めは夜勤に慣れなかったのですが、今では夜勤明けの時間を有意義に使えるようになりました。フィットネス通いで体力を付けています」という声や、「異動は自分の転機になりましたし、人材の入れ替わりで現場にも良い変化がもたらされているように感じます」といった感想が寄せられている。


今後の目標など

今回のFプロジェクトを、特に採用面でPRしたいという同法人。求人では、安定性の高い働き方や諸手当の充実などを打ち出している。「今は、少しずつ取組の成果が出てきている段階です。働きやすい環境や満足できる職場は、人にも勧めたいと職員も思ってくれるようです」と、池田氏は話す。
事業所内保育園「チェリー保育園」や臨時託児所など、同法人ならではのアピールポイントをさらに見直し、ホームページ等をうまく活用しながら、発信力を高めていく必要性もあると感じている。Fプロジェクトを着実に進展させながら、採用の拡大も図れるよう、多様な工夫を重ねていきたいという。

取材日 2019年2月