働き方改革事例

業務生産性の向上から生まれる、
質の高いワークライフバランスを目指す

株式会社北川鉄工所

  • 製造業
  • 府中市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒726-8610 広島県府中市元町77-1
URL http://www.kiw.co.jp/
業務内容 鋳物製品・産業機械・工作機器等の製造販売
従業員数 1047名(男性908名、女性139名)

(2018年10月現在)

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  • 業務の「指示の仕方」を見直し、手戻りを防ぐ
  • 朝一ミーティングでの生産性向上と会議の効率化
  • 時間管理の徹底とフォロー体制の整備
  • 人事制度などについて話し合う場の設置
  • 「ママ両立支援プログラム」で産休から復帰までを支援
  • 若手従業員の定着に向けた手厚いフォロー

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取り組んだ背景とは? 〜生産性の向上と質の高いワークライフバランスの追及

創業100年を迎えた同社は、国内はもとよりアメリカをはじめ海外にも拠点を持ち、自動車部品や建設機械、工作機器などの製造を行っている。同社が働き方改革を本格的にスタートさせたのは2015年。残業時間の多さ、有給休暇取得率の低さが課題となり、従業員の健康や生産性などを考慮した結果、現場に任せっきりでは改善が進まないと考え、見直しに着手した。
「製造業は景気の影響を受けやすく、繁忙期は残業や休日出勤で対応していました。さらに、忙しい中でどう生産性を上げるのか、効率化を図るためにも、働き方を見直す必要がありました。そこで風土や意識の面と、措置や制度面の両面からアプローチして、『生産性の高い創造的で豊かな仕事』『業務生産性の向上から生まれる、質の高いワークライフバランスの実現』を目指しました」と取り組んだ背景を語る、経営管理本部人事部部長の陶山勉氏。こうして同社の働き方改革は始動した。


取組導入のプロセス ~無駄な時間の削減には、管理職の意識改革を重視

まずは無駄な時間の削減に着手したが、その取組を従業員に浸透させるには、管理職の意識改革が先決と考えた。管理職を対象とした研修を年に2回実施し、社外から講師を招き、部下への接し方や目標設定、時間管理などに関する講義を実施した。時間外労働の現況や各種制度についてもきめ細かく説明するなど、具体的な数字を提示しながら管理職の理解を促した。


主な取組と工夫点 ~時間の効率化とコミュニケーションの強化

業務の「指示の仕方」を見直し、手戻りを防ぐ

「業務の中で特にロスが多いのが、上司から部下へ指示された業務の手戻りです」と陶山氏は語る。そこで、同社では上司から部下へ業務を指示する際は、求めている完成イメージと完成日を明確に伝えること、完成の8割の段階で確認することをルール化した。指示内容が曖昧だと、部下はやり直しを求められることが多く、効率が悪い。さらには、お互いが不愉快な思いをすることも生じるため、両者のコミュニケーションの悪化を防ぐことも目的にしている。

朝一ミーティングでの生産性向上と会議の効率化

事務部門では、上司が部下の仕事を把握するために、課単位または係単位での「朝一ミーティング」を毎日実施している。各自が当日行う業務内容を報告することで「見える化」し、管理職が仕事の優先順位などの指示・指導を行い、生産性の向上を図る。その他、会議時間の短縮による効率化の取組も行っている。会議室には独自に作成したポスターを掲示し、会議の時間短縮や効率化を促す運営ルール(①会議の準備、②目的・目標を達成する、③開始時間厳守・短時間)を徹底。さらに、スタンディングテーブルを設置し、簡素化・効率化を意識させるように工夫している。

時間管理の徹底とフォロー体制の整備

営業職は時間管理が難しく、時間外労働が多くなりやすい。そこで時間管理の徹底とフォロー体制の整備に取り組んでいる。無駄な残業を行わないように、直行直帰も促している。毎月、残業時間と残業代のデータを支店や営業所に送って指導した結果、時間外労働の削減に効果が表れているという。
また担当営業が不在でも、他の従業員が対応できるよう、問い合わせマニュアルを作成した。サービス部門への問い合わせも、直接本社へ電話してもらうよう変更した。さらに、特定の従業員が情報や業務を抱え込まないよう、情報を共有しフォローし合える体制も整備した。

人事制度などについて話し合う場の設置

2カ月に一度、労働組合の代表、人事部長らが参加し、人事制度などについて話し合う場を設けている。組合を通して届いた従業員の声をもとに、時差出勤制度の時間設定の拡大やリフレッシュ休暇、バースデー休暇などが実現している。時差出勤制度については、時間設定を3パターンから5パターンに増やし、適用できる条件に従来の通院や育児、介護のほか、自己啓発を追加した。スキルアップのための時間を確保したいという、従業員の声を反映させたものだ。

「ママ両立支援プログラム」で産休から復帰までを支援

産休、育休明けのスムーズな職場復帰を支援することを目的に、「ママ両立支援プログラム」を実施している。産休から職場復帰までの流れなどについてマニュアルを整備し、産休に入る従業員の上司が理解すべきことなどを明示している。休業前と復帰前には面談を実施し、復帰後の勤務形態などについても相談できる体制を整えた。休業中も適宜情報共有を行い、安心して職場復帰できるように配慮している。

若手従業員の定着に向けた手厚いフォロー

離職率が高くなりがちな、入社3年目までの若手従業員へのフォローも手厚く行っている。例えば、入社するとまず集合研修の合宿があるが、最初の土曜日には花見を行い、役員と新入社員の交流の場にしている。大卒の研修期間は1年間だが、前半は事業体験研修として職種に関係なく、各部門の現場や本部などを回る内容にしている。営業・技術・生産などの実務を体験させることで、知識が広がるだけでなく、職場の雰囲気を肌で感じ会社の考え方なども理解できるという。さらに、3年間は大卒・高卒共に集合研修を定期的に開催し、面談も実施している。その他にも、地元で開催される備後国府まつりに参加し、みんなで踊りの練習を行うなど、さまざまな研修やイベントを通じて同期の絆や、社内での交流を深めている。


取組の中で苦労した点

さまざまな施策を発信しても、果たして従業員が実行してくれるのか。そこが悩みという陶山氏。「会社側の一方通行にならないように、働き方改革を推進する方法に頭を悩ませます。まず管理職に理解してもらい、従業員に浸透させていく。そのために管理職の研修を徹底し、取組・成果・今後の計画などデータを交えながら話し合います。1年や2年で変化するものではないので、諦めず粘り強く意識改革をしていこうと考えています」


取組の成果

同社における取組の成果の一つに、継続雇用の申請率、若手従業員の定着率が高いことがある。特に「年間離職が少ない大企業ランキング」では堂々の第1位だ。これは、東洋経済オンラインが2018年8月に発表したもので、2015年度離職率が0.6%(7名/1257名)で日本一となった。「もともと離職率は低く、特別に狙ったわけでもなかったので、うれしいと同時に驚いています」と陶山氏。

労働時間・休暇(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が174.0時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が62.4%、平均取得日数は13.0日

多様な働き方(直近3年間)

・時差出勤制度を4人が利用

育児(直近3年間)

・在籍中に出産した女性従業員のうち、育児休業を取得した者の割合が100%


従業員からの評価

営業部業務統括課課長の桑田さんは、同社初の女性課長で、育児休業を取得した最初の従業員でもある。「育児休業がまだ珍しい時代、当社に制度ができ、私が活用すれば他の女性従業員も取りやすいだろうということで取得しました。家族の協力があり、仕事も面白くて、出産を機に退職という選択肢はありませんでした」
育児休業から職場復帰したばかりの杉岡さんも、その過程を次のように語る。「女性従業員が育児休業を取得することは風土としてしっかり根付いているので、私も育児休業を経て復職という流れは自然でした。1年間の育児休業を取って復職しましたが、大きな不安はありませんでした。休業中も重要なことは会社からメールで届きましたので、変化が分かり職場の状況を把握しやすかったです。復職の1カ月前には面談もあり、いろいろ相談できました」


今後の目標など

「安定志向から挑戦志向への変革」という目標を掲げている同社では、生産性だけでなく従業員のスキルアップも重視している。自ら考えて主体的に行動する目標管理制度や、それに基づいた成果・役割を重視する人事制度への変革も目指す。新製品の開発や市場開拓などを推し進めるのは、チャレンジ精神旺盛な人材の力。持続的に事業を成長させていくために、人が主役の改革を進めていかなければならないという。
「そのためにも“働きがい”の追求が課題です。それが今後の当社の発展を支えていく力になると考えています。また府中市で創業した100年企業として、“地域貢献”も私たちの使命です。働きがいがあり、地域貢献できる会社づくりが、競争力強化にもつながると感じています」と陶山氏は締めくくった。

取材日 2019年2月