働き方改革事例

多能工化・業務効率化への取組で、
従業員が育つ団結力のある会社に

有限会社アサヒフィルタサービス

  • 製造業
  • 福山市
  • 1〜30
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認定マーク
所在地 〒720-1131 広島県福山市駅家町大字万能倉393-1
URL https://www.filter.ne.jp/
業務内容 各種フィルタろ材、クリーンルーム機器等の製造・販売
従業員数 9名(男性6名、女性3名)

(2018年11月現在)

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  • 全従業員を対象にした多能工化と、カバーし合う体制づくり
  • 取りたい資格取得を応援する「能力開発制度」
  • 子育て中の従業員の就業継続を会社全体でフォロー
  • 学生向けインターンシップ機会の提供
  • 「奨学金返済支援」で若手従業員をサポート

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取り組んだ背景とは?~ 「残業はできるだけしない」という主義のもとで

空調システムに欠かせないエアフィルタをはじめ、空気清浄に関わる機器・機材などをオーダーメイドで製造し、施工からメンテナンスまで一貫体制で手掛ける同社。23年の歴史を持つが、設立当初から「残業はできるだけしない」という主義があった。「私自身が家族みんなで夕食を囲む家庭に育ったこともあり、従業員にも仕事は効率的に終わらせて、早く帰宅して家族と過ごしてほしいという思いが強いのです」と、取締役社長の宮﨑基氏は語る。
残業しないことが当たり前であることが習慣として社内に根付いていた同社だが、さらなる取組の検討とともに、広島県働き方改革実践企業への認定申請にもチャレンジした。


取組導入のプロセス~ 「組織風土の改善」につながる具体的な目標を定める

今後見込まれる受注増加に対応するためにも、いっそう個々の従業員の業務効率性の向上が必要と感じた宮﨑氏は、2018年度の経営指針に「組織風土の改善」を盛り込んだ。さらにその中に、働き方改革の具体的な目標として、「育児休業後の職場復帰のための業務内容・体制の見直し」「若年層に向けたインターンシップ等の機会提供」「奨学金返済支援による若手人材の確保」を掲げ、2018年3月に全従業員に発表した。現在、各目標の実現に向けて、取組を進めている最中である。


主な取組と工夫点~ 会社を支える「従業員の目線」で職場改善を推進

全従業員を対象にした多能工化と、カバーし合う体制づくり

同社では入社後、配属部署に関係なく、フィルタの縫製に欠かせない「工業用動力ミシン」の操作を学ぶ機会を設けている。従業員は3カ月ほどで一定のスキルを習得できる。そのため繁忙期には営業職や経理職もミシンを操作し、製造をサポートすることができる。また誰かが急に休んだ時、みんなでカバーし合えるように、顧客情報や製品の納期についても共有している。月1回の全体会議をはじめ、週1回のミーティングや毎朝の打ち合わせの中では、それぞれのスケジュールや業務の進捗状況を報告し合っている。

アンケートをもとに職場環境の改善を進める

定期的に実施するアンケートの中から、従業員の率直な思いを拾い、優先順位を付けて改善に反映させている。例えば、「古くて動きが悪い動力ミシンを入れ替えてほしい」という意見に対しては、状況を見ながら順次交換を行う。「オフィス内の暑さ・寒さ問題」といった細かな点にも目を向け、従業員が働きやすいと感じられる環境づくりを進めている。

取りたい資格取得を応援する「能力開発制度」

正社員・非正規社員の隔てなく「能力開発制度」の対象とし、資格取得の支援を行っている。同社ではフィルタを用いた空間づくり(工場内のクリーンブース設計等)に役立つCAD資格などを特に歓迎しつつ、基本的には各人が挑戦したい資格の取得を応援する。若手従業員が自由に学べるチャンスを提供し、成長を後押しすることが目的だ。

子育て中の従業員を会社全体でフォロー

育休を経て職場復帰を予定していた従業員が、「子どもが保育園に入れなかったため、予定通り復職できない」という切実な問題に直面したことがある。そこで職場のミシンを貸し出し、在宅で製造することを提案。結果として、在宅ワークの実施とともに、従業員の離職を防ぐことにもつながった。また子どもの病気などで急に休まざるを得ない従業員に対しては、前述の多能工化を生かして柔軟に対応している。

新卒学生向け就業体験の場を提供

新卒採用への取組として、宮﨑氏自ら工業高校や高等専門学校に足を運び、同社の魅力をPRしている。最近ではインターンシップにも力を入れており、今年、1週間の就業体験を経験した高校生1人が、同社に入社することが決まったそうだ。また「広島県中小企業家同友会」の理事・政策委員長を兼務する宮﨑氏が企画し、約4年前から福山エリアの中小企業の見学バスツアー(高校・高等専門学校の教諭対象)を実施している。「地域経済を支える中小企業をアピールし、地元で働いてもらう若者を増やすために、今後も注力していきたい」と話す。

「奨学金返済支援」で若手従業員をサポート

2017年に大卒で入社した従業員が、多額の奨学金返済を抱えていることを耳にした宮﨑氏。「22歳で就職して、すぐに大金の返済に追われるのでは希望が持てません。少しでも手助けしたいと感じました。2018年12月から該当する従業員に支援金の給付を始めています」と説明する。


取組の成果

「3年前の新卒雇用から、若手従業員を中心とした体制づくりを始め、社内に活気が出てきました」と宮﨑氏。時間外労働の短縮や有給休暇取得への意識が高くなり、効率的に仕事を終わらせるための工夫が見られるようになったと感じている。従業員同士のコミュニケーションも活発になり、忙しい時は一致団結して助け合う雰囲気も醸成されるようになったという。

労働時間(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が148時間

非正規雇用(直近3年間)

・非正規社員に対する能力開発制度の利用が1人


従業員からの評価

転職で同社に入社した小林さんは、「前職場は残業が多く有給休暇もほとんど取れない状況でした。今の職場では『働きやすさ』を普段から実感しています。取引先の担当者の方などからは、「雰囲気がいい会社」「残業が少なくてうらやましい」などの言葉を掛けられることもあります」と話す。


今後の目標や展望など

多品種のフィルタを扱い、加工から販売まで手掛ける企業は数少なく、技術はあっても高齢化で廃業するケースも多いという。そんな業界において同社は、「仕事の吸収力があって、会社のカラーに合わせて自在に変化する若手従業員」に着目し、育成に力を入れてきた。「現段階で構想として思い描いているのは、20代の彼らが40代になるまでに得意分野・やりたいことを見いだして、将来的には独立し、当社をグループ化していってほしいということです。もちろん、相互に助け合う家族的な社風はずっと守り続けてもらいたいです」と、宮﨑氏は語る。常に数年先を見据えて、それぞれが生き残るための強さを身に付けてほしいというのが願いだ。
「これからも『人が成長できる会社』であることに重きを置いていきたいです」と、宮﨑氏は締めくくった。

取材日 2019年2月