働き方改革優良事例

IT技術の導入で生産性の向上を図りつつ、
若手従業員の技術力と定着率アップを図る

株式会社上垣組

  • 建設業
  • 東広島市
  • 31〜100
  • 推進体制(経営者)
  • 長時間労働の削減
  • 多様な人材の活躍
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒739-0036 広島県東広島市西条町田口1437番地
URL http://www.kamigaki.co.jp/
業務内容 建設業
従業員数 37名(男性28名、女性9名)

(2018年10月現在)

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  • IT技術を導入し、生産性向上と若手のやる気を起こす
  • 若手育成のための勉強会と資格取得制度を整備
  • 会議で従業員の意見を聞き、給与は役員との合議制で決定
  • 70歳定年制を採用し、熟練したノウハウを伝承
  • 子育て中の従業員は希望に応じた短時間勤務が可能

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取り組んだ背景とは? ~残業が当たり前の状況を克服するために

公共工事を中心に、道路や河川、上下水道の設計・施工を行う土木部門と、住宅・店舗の増改築を行う建築部門で事業を展開する同社。「ISO9001や14001の認定に取り組んでいる中で、従業員にやる気と夢を持って仕事をしてもらえる環境をつくろうと一大決心をしました。2018年4月のことです」と、代表取締役専務の杉本昇氏。従業員のほとんどが現場監督で、昼間は現場に出て、書類整理などを夜に行うため、残業が半ば常態化していた。三六協定を結んで変形労働時間制を採用しているが、代休を取るだけで精いっぱいだったという。「どうにか工夫して、残業を減らしたいと取組を始めました」と杉本氏。


取組導入のプロセス ~国の補助金を活用して最新のIT技術を導入

そこで着目したのが、経済産業省が実施しているものづくり補助金とIT導入補助金だった。これらを活用して、先端機器やシステムを導入し、生産性の向上と長時間労働の削減に結び付けようと考えた。「建設業は、全体的にIT化が遅れているのですが、国が本腰を入れて取り組みはじめましたので、私どもの会社もその流れに乗って導入を決めました」と、杉本氏は語る。


主な取組と工夫点 ~若手育成や高齢者・子育て支援など多彩な施策

IT技術を導入し、作業の効率化と若手のやる気を起こす

補助金で導入したのは、土木部門ではICT施工ができる建設機械や自動測量機である。ICT施工とは、情報通信技術(ICT)を用いて、施工図のデータなどを管理し施工機器を制御することで、省力化や自動化を図るもの。同社においても現場での測量作業が容易になり、切断加工なども自動化が可能になるため、作業時間の大幅短縮、品質・精度の向上、安全性の確保などが期待できるという。「感覚的には、今までの4分の1ぐらいに作業時間が短くなったと感じます。生産性が上がるのはとてもありがたいですし、先端技術は、何より若い従業員に興味を持ってもらえます。今は入社2年目の従業員を起用して、ICT施工の担当にしています」と杉本氏。
建設部門ではCIM/BIMを導入した。CIM/BIMとは、構造物の形状モデルをコンピューターの3D空間上で描き、調査・設計から施工、維持管理までの各段階で活用することにより、業務の効率化と高度化を図るものだ。同社のソフトでも、図面やデータを読み込ませると3次元で描画され、鉄筋量や型枠の数まで自動で計算してくれる。今までは2人で3日ほどかけていた作業が、1日でできるという。「導入に当たっては、ソフトの習熟やコスト面での苦労もありますが、効率化だけでなく、若手のモチベーションにもつながるので、今後も積極的に活用していきたいです」と杉本氏。

若手育成のための勉強会と資格取得制度を整備

月に2回、部署ごとに約1時間の勉強会を実施している。毎回、先輩従業員が交代で先生となり、ノウハウや技術を教えている。日々の仕事の中でも、先輩がマンツーマンで指導を行い、若手の育成に力を入れている。先端技術の勉強会も、各部で自発的に行われており、全員がその技術を使いこなせるように努力を続けている。また、土木施工管理技士や建築士などの資格取得のために、学校に通う費用や受験料、講習料などを会社が全額負担する制度も整え、若手従業員の育成をサポートしている。
こうした取組により、近年若手従業員の離職は発生していない。

会議で従業員の意見を聞き、給与は役員との合議制で決定

毎月1回、全体会議や各部署会議、現場ごとに全員を集めて行う原価報告会を開催し、その中で従業員の意見や要望を聞き、対策を講じている。その他にも年に一度、自分の給与に対する意見を表明できる機会を設けている。「プロ野球選手が年棒を決めるイメージで、もっと給料を上げてほしい・評価をしてほしいと申し出た従業員と協議の場を持ちます」と杉本氏。杉本氏と当事者が毎回15分ずつ、合意するまで話し合いを続ける。この会議を10回以上繰り返す従業員もいるという。「5〜6年前から行っていますが、自己アピールできる従業員の方が頼もしくていいですね」と杉本氏。

70歳定年制を採用し、熟練のノウハウを伝承

2010年から定年を70歳に延長した。「65歳は早すぎるということで、定年を70歳にしましたが、もっと活躍してほしいと思っており、80歳にしたいぐらいです」と杉本氏。現在、70歳になった従業員2人が、そのまま現役を続行中だという。「ミスが起こりやすい場面や書類の書き方のコツなど、経験しなければ分からない熟練者のノウハウを若手に伝承してもらいたいです」

子育て中の従業員は希望に応じた短時間勤務が可能

書類づくりなどをサポートする従業員を積極的に採用しており、体力が求められる建設業界にあって、女性従業員が多い同社。2010年に育児の支援を強化した。育児中の短時間勤務については、期限や時間の制限をなくし、例えば、子どもが小学生になっても短時間勤務を利用することができる。さらに子育て中の従業員は、土曜日・日曜日・祝日は基本的に休みにしている。

親睦会や安全大会でコミュニケーションを促進

「経営層がいると気兼ねもあるかと思うので、親睦会は各部署で行ってもらっています」と杉本氏。年3回の親睦会は全額会社負担で、ゴルフ大会や釣り大会、飲み会などが行われ、従業員がコミュニケーションを深めている。毎年6月には全従業員と協力業者が集まって安全大会を開催した後、バーベキューをするのが恒例になっている。


取組の中での苦労話

「2018年は豪雨災害があり、社長を含めて多くの従業員が総出で緊急対応を行い、大変な年でした。そのため動き出したばかりの働き方改革で、思うような成果を上げられませんでした。それでも、経営層と従業員が一緒に力を合わせたことで、会社が改善していこうとしている思いは、従業員に伝わっていると思います」と杉本氏。


取組の成果

「現場によって、どうしても労働時間に偏りが出ますが、従業員たちが自主的に『応援に行こう』と言うのです。今までは上から言わなければやらなかったのに、従業員同士で解決しようという雰囲気が感じられるようになりました。4年ぐらい前から新卒社員が入社したことも刺激になり、若手を大切に育てようという意識がみんなに芽生えているのもありがたいですね」と杉本氏。

労働時間(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が173.8時間

高齢者

・70歳の定年制度で、65歳以上6人が継続就業

若年者(直近3年間)

・正社員として就職した新卒者等のうち、同期間に離職した者の割合が0%


従業員からの評価

「有給休暇は、子どもの学校行事や用事があるときに使っています。以前、子どもが入院するなど体調が悪い時期がありましたが、仕事中に『少し家に帰ってもいいですか?』と相談したら気持ちよく帰らせてもらえ、乗り越えることができました。途中で抜けた時間は、有給休暇として柔軟に対応してもらえましたので、助かりました」と、総務部の福光さんは感謝する。


今後の目標など

「創業100年を迎えましたので、次の100年に向かって、つないでいける会社にしていきたいです。そのために、若い人たちから選ばれる会社を目指し、福利厚生も充実させて、良い人生設計が行える体制をつくりたいと考えています。建設業は3Kだと思われがちですが、最先端のIT機器の導入が進むとイメージも変わるはずです。若手従業員の採用を定期的に続けるためにも、今後もIT化を進め、働き方改革に取り組んでいきたいと考えています」と、杉本氏は締めくくった。

取材日 2019年2月