働き方改革事例

業務効率化や人材育成により
生産性を向上し、深刻な人手不足に対応

有限会社高山工業

  • 製造業
  • 世羅町
  • 1〜30
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認定マーク
所在地 〒729-3307 広島県世羅郡世羅町大字伊尾2703-1
業務内容 アルミダイカスト製品の加工、研磨
従業員数 20名(男性15名、女性5名)

(2019年1月現在)

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  • 従業員一人一人との面談で、相談に細やかに応える
  • 社内リーダー会議で、残業時間等を把握し改善策を打つ
  • 独自のノウハウを凝縮した業務マニュアルで効率化を推進
  • 70歳までを対象とした再雇用制度
  • 非正規社員の正社員への転換制度を積極的に実施

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取り組んだ背景とは? ~個人面談で思いを聞くことからスタート

1985年の創業以来、世羅郡世羅町で自動車に用いるアルミダイカスト製品の加工や検品等を行っている同社。代表取締役の髙山稔基氏が、働き方改革への第一歩を踏み出したのは、2015年頃に始めた個人面談がきっかけだという。個人面談は、1年に一回、髙山社長が従業員一人一人と、30分近い時間をかけて、仕事上の改善点や業務上の提案等について話す他、就業時間や給与面に対する意見を聞いている。「仕事を進めていく上での意見を聞く機会は多いのですが、従業員の就業環境に関する思いが気になって、私の方から尋ねることにしました」と髙山社長。従業員の抱えるさまざまな事情や思いを受け止め、働き方改革を宣言することからスタートした。


取組導入のプロセス ~人材を育成し、労働生産性の向上を目指す

まず社長方針として、「社員がその能力を発揮し、仕事と生活の調和をはかり、働きやすい職場環境を目指す」ことを掲げた。そして、「2019年4月までに、従業員が希望する場合に利用できる短時間勤務制度を導入し、2021年4月までに、有給休暇の取得率を40%以上とすること」を具体的な目標に設定した。そして、その実現に向け、従業員の労働生産性の向上を図るため、人材育成制度をはじめとした働き方改革の仕組みを整えることとし、専任の推進担当者を設置した。


主な取組と工夫点 ~独自ノウハウを凝縮した業務マニュアルで効率化とスキルアップ

従業員一人一人との面談で、相談に細やかに応える

髙山社長と従業員の面談は、個人別にヒアリングシートを用意し、年1回じっくりと時間をかけて行っているが、ケースによっては随時の個別面談も行っている。「当社は、従業員20名ほどの家族経営的な会社です。仕事中以外にもみんなと顔を合わせる機会が多く、いろいろな話をします。そのような環境ですので、仕事のことに限らず生活面のことでも、困った問題が起きれば、時間を取って従業員の相談に応じるようにしています」と髙山社長は話す。
働き方改革の推進担当者である髙山さおり氏は、特に女性の従業員が相談しやすいように気を配っている。内容によっては、素早く髙山社長に相談し、社内のリーダー会議に図ることもある。スピード感を持って対応することで、言いやすい雰囲気づくりや、コミュニケーションの活性化につながっているという。

社内リーダー会議で、残業時間を把握し抑制策を打つ

髙山社長の下には3人のリーダーが配置されているが、毎月1回、髙山社長を加えた4人でリーダー会議を開き、翌月の生産計画や、従業員の残業時間と有給休暇取得状況についての報告・確認を行っている。生産計画により、翌月の作業時間の目安を立てると同時に、残業時間を抑制するための数値目標も立てることができる。また、工場内の人員配置の他、本社工場と同じ町内にある第二工場との作業の割り振りも行うことで、業務量の平準化も行っている。
有給休暇についても、生産性とのバランスを考慮しながら、状況に応じて会社側から取得を勧める声掛けを行っている。

独自のノウハウを凝縮した業務マニュアルで効率化や技術力向上を推進

「新入社員が見ても、一目で作業フローが把握できるよう、マニュアルには具体的な内容を詳しく記載しています」と髙山社長。単に作業手順を示すだけでなく、熟練従業員が培ったコツや勘も見える化し、手順の中に盛り込む。内容は随時改訂を加え、独自のノウハウを凝縮したものとしてブラッシュアップされている。このマニュアルによって、作業の効率化や生産性向上などが図られることはもちろん、熟練のノウハウが共有されることで若手のスキルアップにも役立っている。さらに、それまで指導者によってバラバラだった教え方が分かりやすく統一され、一定水準の品質確保が可能となり、製品ロスの減少にもつながっているという。

70歳までを対象とした再雇用制度

同社では、以前は60歳が定年で、その後は本人の希望があれば、65歳まで延長して再雇用を行っていた。しかし2018年に、65歳になった従業員が定年を迎える直前に行った個人面談で、本人から働きたい気持ちを受け、再雇用制度を70歳までさらに拡充した。
「新入社員を雇用した場合、作業に慣れるまで2~3年ほどかかり、一から育てる一方で、熟練の技や長年培ってきた“勘”の伝承も必要になります。高齢の従業員には、まだまだ元気に働いてもらえていますので、本人の意欲があれば、ずっと続けてもらいたいぐらいです」と髙山社長。

非正規社員の正社員への転換制度を積極的に実施

同社に限らず、中山間地域の中小企業にとっては、人手不足は近年厳しさを増している。こうした状況を受け、非正規社員の正社員転換にも積極的に取り組んでいる。子育てが落ち着いた非正規社員など、本人からの希望に応じ勤務時間の短縮などにも配慮しながら正社員へ転換しており、最近は、年に1~2名ほどが、新たに正社員となって活躍している。


取組の中での課題

さまざまな取組にチャレンジする中でも、一番の課題は、やはり人手不足だという。髙山社長は「今は、会社を大きくするよりも、しっかりと社内の生産体制を整え、効率化を図ることが優先だと感じています。業務マニュアルを取り入れたのも、その対応の一つですし、生産性向上のためには機械化も進めています」と話す。


取組の成果

推進担当者の髙山さおり氏は、次のように話す。「当社のような小さい会社では、やりたいことが会議で議題に上がっても、日頃の業務に追われて、次のステップにはなかなか進めません。しかし働き方改革を宣言し、やらないといけないことをルール化すると、なし崩しにはできなくなります。そして取組を進めてみると、従業員からの相談を受ける機会が増え、今まで以上に従業員の顔が見えるようになり、従業員同士のコミュニケーションも活発になったと感じています」
有給休暇の取得や労働時間に対する社内の意識が変わるなど、取組に対する意欲が高まっているという。

労働時間(直近1年間)

・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が177.6時間

65歳以上の再雇用制度

・65歳以上の高齢者を再雇用する制度を2名が利用


従業員からの評価

「従業員全員が、職場環境を良くしていこうと思うようになりました。活発にコミュニケーションを取り、情報共有を行いながら仕事に取り組んでいます」「短時間で、いかに効率よく仕事をこなすかを考えて行動するようになりました。仕事以外の時間も増え、自分自身のストレス解消や、リフレッシュできる環境が整ってきたと感じています」といった声が上がっている。


今後の目標など

同社では、2016年に同じ世羅町内に第二工場を新設したが、本社工場と少し離れた第二工場との間において、従業員のより密なコミュニケーションが必要だと感じているという。また、人手不足が深刻化する中、働き方改革を実践することで、人材確保への効果にも期待を寄せている。
「従業員の中には、私の親族もいますし、近所の人、同じ世羅町内の人も働いています。今までもずっと、家族経営のような雰囲気で仲良く働いてきましたが、さまざまな取組を行うことでさらに親密になった気がします。魅力あふれる職場づくりを続けて、それを社外へもっとアピールしていきたいと思います」と、今後の意気込みを髙山社長は語った。

取材日 2019年2月