働き方改革事例

障害者、高齢者など多様な人材が活躍
清掃ロボットなどで品質向上、競争力強化

三栄産業株式会社

  • サービス産業
  • 広島市
  • 301以上
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  • entrydatajireikaikaku2-11
認定マーク

所在地 〒730-0011 広島県広島市中区基町5-44
URL http://3ei-kk.com/
業務内容 ビルメンテナンス業
従業員数 367名(男性176名、女性191名)

(2019年4月時点)

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  • 障害者の積極雇用で人材確保
  • 管理部門の休日数を大幅増
  • 多能工化でフォロー体制充実
  • ロボットなど新技術導入で業務改善

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取り組んだ背景 〜人材獲得が経営の重要課題 障害者を積極雇用、戦力化へ

saneisangyo-kaityo.jpg1958年の創業以来、広島県内を中心に建物・施設の清掃や設備運転管理、警備などを手掛ける。これらは人手が掛かる労働集約型の仕事で、以前から人材確保が経営課題の一つだった。新規受注の獲得で業績は堅調な一方で、近年の売り手市場で採用対策は急務の状況にある。米山真和会長は社長に就いた2014年に、人材を安定的に確保するため障害者雇用の方針を打ち出した。「今後、労働者が減り続けることへの危機感は強いです。障害者雇用を本格化したきっかけは、ある製造工場で高い能力を発揮する障害者の働く様子を見学したこと。それまでも法定雇用率の2%を超えていましたが、改めて〝戦力〟として障害者を迎え入れられると確信しました」
同年に障害者就労継続支援A型事業所を運営する「オンザライズ」を広島市西区に設立。就労に必要な技能を身に付けてもらい、就職を支援している。双方の希望に合った場合に三栄産業に入社してもらう仕組みをつくった。着実に雇用を増やし、各現場で欠かせない人材として定着している。18年10月にはM&Aで東広島市の同A型事業所「きのこ村」の経営を承継した。現在、グループ8社で障害者約60人が活躍。雇用率は11%に達し、同業者の中でも高い数値だという。


主な取組と工夫点 ~多様性を受け入れる社内体制と最新技術による業務改善

障害者の個性に合わせて指導

入社する障害者はA型事業所で訓練を終えているが、各現場で掃除内容や扱う道具が異なり、最初の数カ月はつきっきりで指導を続ける。またまわりの健常者の従業員にコミュニケーション方法の研修会を開くなど、受け入れ体制の充実を進める。現場を統括する山本和志係長は、「障害を持つ方の就労には、大変なことが多いのも事実。それを理解した上で、それぞれの個性を見ながら指導しています。現在は従業員5人のうち2人が障害者という現場も。何よりまじめに働いてくださり、助かっています」

多様な人材の活躍へ、体制整備

saneisangyo02.jpg同社には65〜70歳の従業員が約200人在籍し、全体の約7割を占める。中には70代後半の現場マネージャーもおり、高齢者の活躍が業務を支えている。65歳まで雇用を自動延長し、以降も大半の従業員が継続して働き続けているという。グループ会社では高齢の従業員が孫を子守りするときに使える「孫休暇」という制度を導入。三栄産業でも検討を進めている。このほか外国人技能実習生や生活困窮者など、さまざまな背景を持つ人材を受け入れ、試行錯誤しながらも和気あいあいと働く社風をつくっている。

部署横断組織を立ち上げ、年間休日数の増加へ

18年夏に部署を横断する「生産性向上委員会」を立ち上げた。課長クラス5人ほどが定期的に集まり、長く働き続けてもらうために従業員の処遇改善について話し合っている。そこでの議論がきっかけとなり、同年9月から管理部門の年間休日数を79日から104日に大幅に増やした。

多能工化、道具を見直し業務改善

saneisangyo03.jpg清掃業務は広島市内を中心に約80の現場を抱え、それぞれ職場環境は異なる。必要最低限の人員で業務を回しており、病欠者などの代わりを見つけるのに苦心することも。その対策として進めているのが「多能工化」だ。日頃から通常とは異なる現場で研修し、各現場のルールや業務内容を指導。有事には職場を横断的に担当できるように育成している。また安全で効率的な職場を目指し、掃除機のコードレス化を推進。本体を肩から下げたり、背負える軽量タイプで、機動性が高まり時間の短縮になる上に、階段のような足場の悪い場所で転倒など労働災害の削減につなげる狙いだ。

清掃ロボット導入で品質向上

17年12月、取引先のエントランス広場に清掃ロボット2台を導入した。プログラミングで制御し、自動で動き回りゴミを集める。目のシールを貼り、「Qちゃん」の愛称を付けた。かわいらしさを演出し、取引先からも好評という。19年にはさらに2台を追加するなど、今後も導入を進める方針だ。米山会長は、「たまに不具合があり、従業員が調整しながらの日々ですが、完全に使えるようになってからの導入では遅い。日進月歩で技術は向上しており、ロボットに任せられる分野はますます広がる。業界に先駆けてさまざまな業務改善に取り組んでいく」
小宇羅元俊社長は、「単に掃除をすれば済む時代は終わった。ロボットなど独自性のある提案で、品質の点からも満足していただけるサービスを目指します」

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取組の中で苦労したこと 〜働き方の変更に従業員の抵抗も

業務改善のために新機能の道具やロボットの導入を進めているが、現場が抵抗を示すこともある。管理部の山本友也さんは、「慣れた働き方を変えることに、抵抗感が生まれるようです。労働時間の節約や安全性の向上につながり、本人のためにもなることをよく説明し、理解してもらっています」

課題や今後の目標 〜安心して働き続けられる環境つくる

障害者は、両親と暮らしていることが多い。そこで社会課題となっているのが、両親の死後の対応だ。生活を支える存在を失い、生活に困ることも多い。同社の障害者は20〜30代が中心で親も若いため、すぐに対象となる人はいないが、将来を見据え17年7月に備後地区で障害者グループホームの運営に乗り出した。将来にわたって安心して働き続けられる体制の整備を目指す。また高齢の従業員に対して、米山会長は、「決して日の当たる業務ではないが、多くの方が定年後の第二の人生の働き先として選んでくださっていることに感謝しています。給与のほか金銭的でないものを含め、できる限りの処遇改善を進めていきたい」

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従業員からの評価

saneisangyo-Wyamamoto.jpg管理部
山本 友也 部長(左)
労務管理などを担当しています。私自身が「イクボス宣言」をしており、3歳の子供が病気のときに休みを頂くことも。社内でのフォロー体制ができています。誰もが休みやすい雰囲気があると思います。

クリーン事業部 管理課
山本 和志 係長(右)
清掃現場の管理者として勤務。同じ現場で高齢者、障害者、外国人、生活困窮者が同時に働くこともあります。受け入れるのは大変ですが、指導する側も仕事に責任感が生まれ、良い学びになっています。



取材日 2019年5月