働き方改革事例

システム活用、生産性高めるオフィスに改修
改革の趣旨を深く理解し、従業員に浸透させる

株式会社竹中工務店 広島支店

  • 建設業
  • 広島市
  • 101〜300
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-04
認定マーク
所在地 〒730-0015 広島県広島市中区橋本町10-10
URL https://www.takenaka.co.jp/corp/
業務内容 建設業
従業員数 220人(男性177人、女性43人)
※広島支店(中国5県)の人数

(2019年4月1日時点)

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  • 社長の全国巡回を機に、広島支店でも改革推進
  • 勤務時間の実態を調べ残業を許可制に
  • オフィス改革でコミュニケーションが活性化
  • 育児フレックスタイムなど子育て支援制度を充実

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取り組んだ背景 〜社長の全国巡回を機に、広島支店でも改革推進へ

takenaka_01.jpg大手ゼネコンの竹中工務店が、働き方改革を加速させ、ワークライフバランス向上委員会を設置したのは2017年4月。社長自らが全国の7つの本・支店や作業所に足を運び、支店幹部や内勤者、作業所勤務者と対話を始めた。
これをきっかけに広島支店でも取組を開始。まずは実態調査から始め、勤務時間の短縮を目指すことになった。支店長の藤永弘氏は「建設業は、工期に追われる工事が少なくないため、時期によっては残業が発生。勤務時間は従業員からの申告のまま承認されており、残業が常態化していました」と当時の状況を振り返る。

主な取組と工夫点

パソコン稼働時間を確認、残業は許可制に

takenaka_02.jpgまずは勤怠管理から取組を始め、パソコンの電源オン・オフのログ(記録)を調べるシステムを導入。この記録と申請された勤務時間に差異がある場合は必ず理由を明記し、不明な点があれば確認し、場合によっては記録を是正する制度に改めた。さらに直属の上司が残業を許可しないと、パソコンにロックがかかり、強制的に使えないようにした。管理部長の大塚貴昭氏は「残業抑制だけではなく、申請を通して上司と部下のコミュニケーションは増え、上司が部下の健康状態にも気遣うなどの効果もありました」と話す。

アプリで従業員のスケジュール管理

従業員のスケジュール管理にも着手。全従業員約7500人がお互いにスケジュールをシステム上で確認でき、ほかの従業員の予定を押さえたり、入れてほしくない時間帯に本人がロックをかけたりできる。広島支店は2003年3月に本格導入。「会議はひと枠30分単位で入れるようにルール化。ばらばらと時間を空けて会議を入れるのではなく、例えば会議は水曜日の午前中にまとめ、午後は業務に集中するなど、めりはりが生まれました。報告連絡も徹底され、意思決定しやすくなり、仕事がはかどるなど、効果は大きかったです」と藤永氏。

保管書類を約6割も削減、余剰スペース活用

takenaka_05.jpgオフィス改革も実施。コンセプトは「コンセントレーション」と「コミュニケーション」。藤永氏は「集中力を高めることで生産性を上げることと、コミュニケーションを交わすことで情報交換をスムーズに行える職場づくりを意識しました」と話す。
事務所リニューアルに向け先行して取り組んだのが、保管書類の削減だ。スペースの確保に向け、個々の書類保管量をキャビネット単位で定め、それを超えるものは処分または電子保存した。総務・人事グループ長の尾﨑浩二氏は「思い切って処分するように呼び掛けました。支店長や部長などの管理職が旗振り役となり、約6割の削減に成功しました」

takenaka_10.jpgその結果、生まれた空きスペースを活用し、オフィスの印象を明るくするためカラフルなパーティションで区切った打ち合わせコーナーを新設。またデスクトップパソコンを、ノートパソコンに切り替え、執務スペース以外でも気軽に打ち合わせができるようにした。

takenaka_06.jpg総務・人事グループ課長の本田めぐみ氏は「単にオフィスをきれいにしましょうではなく、業務上で調整や連絡が多い部署を隣接させるなど、関係性の強弱でレイアウトを考えました。打ち合わせがしやすくなり、従業員の対話が自然と生まれるようになりました」と、効果を実感する。

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女性の働きやすさを推進、制度も充実

takenaka_08.jpg小さい子どもを持つ従業員が通常の勤務時間から遅い始業、もしくは早帰りを30分単位で最大2時間半設定できる短時間勤務制度を取り入れている。さらに育児フレックスタイムなどの制度も充実させたほか、女子ロッカールームには搾乳スペースを設置。女性にとって働きやすい職場環境や制度が整えられたことで、時短で働けるように周囲が協力し合う環境も整ってきたという。総務・人事グループの薮美帆さんは「育児、出産を経験した女性への配慮があり、結婚時に仕事を辞めるという選択肢はありませんでした」と話す。

取組の中で苦労したこと 〜改革に消極的な従業員にも、粘り強い呼びかけで理解促す

とはいえ、全てが順調に進んだわけではない。毎日のように顔を見合わせコミュニケーションは取れている、従業員が数人ほどの作業所ではシステム導入の必要性に乏しいという意見もあった。藤永氏は「会社が目指す働き方改革の主旨が伝わっていない時期も。時短や過重労働を避けるための取組でもあるのに、今まで慣れ親しんだやり方を変えること自体に余計な時間がかかるという意見もありました。まずは導入の目的を理解してもらえるよう、繰り返し従業員に伝えました。浸透させるまでに一定の時間はかかりましたね」と語る。

課題や今後の目標 〜作業所の週休2日へ、プライベート充実を後押し

takenaka_04.jpg作業所はさまざまな技能労働者が入れ替わりながら仕事を進めるため、シフト制を導入することは難しかったが、業界を挙げて週休2日の実現を目指している。同社はリーディングカンパニーとして「4週6閉所(4週間で作業所を6日間閉所する)」に対応し、2021年までに段階的に「4週8閉所」に移行させる方針だ。同社が休むことで、協力会社や資材納入会社も休日となり、業界全体への好影響が期待される。社内的には改革を進めることで生産性が向上し、余力が生まれ、自ら学ぶための時間も生まれている。藤永氏は「こうした〝ワーク〟の充実から、個人の〝ライフ〟も充実させていきたい。個人のプライベートな時間を幸せに過ごせるよう、長期の連休なども検討しています」と展望を話す。

従業員からの評価

設計部 構造グループ
小林 春之 課長

takenaka_11.jpg子育て支援などの制度が充実しており、子どもの保育園への送り迎えに利用しています。現在導入に向けて試行している設計部のフレックスタイムは午前10時から午後3時がコアタイムなので、妻が迎えに行けないときは私が対応しています。妻からは助かっていると言ってもらっています。今は残業して成果を出すのではなく、勤務時間内で成果が求められます。最近は優先順位をつけて業務に取り掛かるようになり、仕事もはかどるようになりました。

取材日 2019年5月