働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

残業削減額を手当として全従業員に還元
個人プレーから全社一丸へ、目に見える意識改革

テクノス三原株式会社

  • サービス産業
  • 三原市
  • 101〜300
  • 推進体制(総務人事)
  • 長時間労働の削減
  • 休暇取得の促進
認定マーク
所在地 〒723-0051 広島県三原市宮浦5-2-10
URL http://technos-mihara.co.jp/
業務内容 非破壊検査、船舶消防設備整備・点検、構造物調査ほか
従業員数 127人(男性111人 女性16人)

(2019年9月時点)

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  • トップダウンで5日連続の休暇取得を実現
  • 残業削減額を従業員に均等還元、機運醸成へ
  • 徹底した業務分析で見える化、チームの連携強化
  • 横串委員会で業務改善、人材育成やボトムアップにも寄与

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取り組んだ背景 〜創業来の〝モーレツ〟な働き方からの脱却へ

technos_01.jpg船舶の傷や劣化状態を調べる非破壊検査を手掛け、三原市の本社以外に東京、中国、フィリピンなど国内外に事務所を構える。グローバル企業へと発展を遂げる一方で、従業員たちの働き方は「数十年前の高度成長期を引きずっていた」と技術部部長の向田隆行氏。顧客第一主義に加え、「昭和の企業戦士だった創業者の『モーレツ』がそのまま引き継がれたような社風」で、週1回のノー残業デーは形骸化。有給休暇の取得も進まず、従業員から休めないという不満の声も出ていた。さらに、保有資格によって特定の従業員に業務が偏ることが多く、出張から残業に至るまで、各人が個人プレーで行っている状況だった。事業の要である技術伝承などの育成の時間も取れず、会社の将来に危機感を抱き、本格的に取組に着手することにした。

主な取組と工夫点

トップダウンで5日連続の休暇取得促進

もともと周囲の目を気にして、有休を取りにくい風土があったという。さらに海外出張や急な休日出勤も多く、連続した休みが取れないことに不満の声が上がっていた。そこで働き方改革の手始めとして、トップダウンで連続した有休3日の付与に着手。初年度は「問答無用で全員が(週末を含めた)5連休を取る」と決め、会社が指定した日に強制的に休暇を取らせることにした。しかしそれでも「本当に休めるのか」と、従業員に不安が見え隠れしていたと向田氏。管理職の向田氏が最初に休暇を取り、従業員を安心させたという。2年目の2019年4月からは、従業員が希望した日程での連続休暇の取得を推進している。

残業削減額を全従業員に還元

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割り当てられた現場によって、業務量に大きな差が生じ、残業時間に偏りが出ていた。これを解消するため、全体の残業時間を削減する取組に着手。しかし従業員の中には残業代が減ることに不満の声もあった。そこで考えたのが、前年度同月と比べて削減された残業代を、全従業員に一律で還元するシステムだ。個人別ではなく、会社全体で取り組んだ成果が金銭的報酬として全員に均等に配分されるという分かりやすい仕組みで、これを取組の初期に社長が宣言することで、全従業員の機運を高めた。実際に9回+賞与での還元支給があり、従業員の意識が生産性を上げることに向き始めたという。1年後には、月当たりの所定外労働時間を10.4時間も削減(2017年度29.3時間→18年度18.9時間)できた。

徹底した業務分析でチーム内の連携を育む

自分の仕事だけではなく、チームの仕事、組織のミッションに積極的に貢献しようとする意識を育てることを会社の目標に掲げ、営業や技術など各チームで重点推進項目を設定し、徹底的に業務を分析した。例えば技術チームでは、それまで行われていなかった残業時間の一覧を作成し、残業の少ない人がチーム全体をフォローする体制に。これまで個人プレーが多かったが、仕事配分の明確化により、ほかの人を手伝うようになるなど連帯感が生まれた。また、チーム体制により生まれた成果(時短)を技術レベル向上の時間に投入。技術項目を細分化し、限られた時間で効率的な技術育成「最短教育」を行うことにもつながった。

横串委員会が作業効率と環境の改善、ボトムアップに寄与

technos_03.jpg社内制度について従業員からも率直な意見を集め、改善に生かそうと、部門を越えた「横串委員会」を設置。もともと意見交換を行う会議そのものが少なかったため、他部門の取組も知ることができ、相互に情報交換や業務改善について自由な意見を出し合える場を準備した。これまでにリーダー的ポジションに就いたことのない従業員をあえて委員に配置。人材育成の場としての意味も持たせることで、従業員が主体的に取組に参画するボトムアップの風土づくりも進めた。

取組の中で苦労したこと 〜ボトムアップを浸透させる難しさ

残業代還元や5連休などトップダウンでの改善活動は比較的浸透しやすかったものの、ボトムアップの取組には苦労があったと向田氏。横串委員会の会議の開催自体に批判もあり、出席者が受け身で発言もないことが多々あったという。さらに、これまで社内全体の意思疎通に焦点を置いてこなかったためか、新しい制度について情報を共有しても、委員からは「聞いていない、知らないのオンパレードでした」。統一感・連帯感は1日にしてならないことを実感したと語った。

取組の成果 〜改革が新たな風土に、意識が変わり生産性も向上

technos_04.jpg当初こそ発言が少なかった横串委員会だが、問題点を指摘するだけという時期を経て、現在では課題を共有し、その解決策まで積極的に提案するような雰囲気が生まれた。残業や休暇中の従業員がいる時には、各自が互いの状況を把握し、話し合って人員配置を変えたりと、組織としてどうすべきかを考え行動できるようになったという。さらに連帯感の熟成につれて、当初は自覚が薄かった各部門のリーダーも進んで残業削減や有休の取得指導に当たるようになった。改革に取り組んで、時間当たりの生産性は10%以上向上するなど、目に見える数字として証明されている。

課題や今後の目標 〜目標は9連休、さらなる効率化で働きやすさを追求

トップダウンから始めた働き方改革の3年目の目標は、9連休の取得。そのため、今後はさらなる業務の効率化を追求する方針だ。向田氏は次のように語る。「例えば、現場作業を終えた後の報告書作成は会社に戻ってから行っていたため、残業に直結していました。そこで業務管理ツールを導入して報告書の共通フォームを作り、作成にかかる時間を削減したり、あるいは社内で代わりに報告書を作成する従業員を配置したりと、仕組みそのものを変えていくつもりです。9連休は大きな目標ですが、『誰かがやる』から『チームでやる』へと意識が変化した今なら、実現できると思っています」

従業員からの評価

技術部
西條 大治 氏

technos_05.jpgもともと「盆も正月も分からない」というほど、急な仕事が多く忙しい職場だったので、有給休暇の取得や残業を削減という発想すらありませんでした。現在では、各自の行動がチーム全体の業務や成果に関わることを自覚し、「言っても変わらない」から「言えば変わる」の思考にシフト。能動的な意見や提案が目に見えて出るようになりました。横串委員として社内制度を整えていく中で、控え目だった従業員がリーダーとして頭角を現すなど、新たな人材発掘にもつながっていると感じています。何より「5連休に何するの?」と従業員同士で笑顔で盛り上がるなど、以前より社内の雰囲気が明るくなったことがうれしいです。

取材日 2019年9月

テクノス三原株式会社様の具体的な取組過程や内容は、こちら(県内中小企業での働き方改革の身近なモデル事例)をご覧ください。