働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

業務の効率化と社内ルールの明確化で働き方を変える
関係者の皆が幸せになれる「四方よし」の実現目指す

佐藤産業株式会社

  • 卸売業・小売業
  • 尾道市
  • 31〜100
  • 推進体制(経営者)
  • 長時間労働の削減
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒729-0142 広島県尾道市西藤町226
URL https://www.satosangyo.com/
業務内容 家具の企画、販売
従業員数 34人(男性15人、女性19人)

(2019年10月時点)

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  • 1分単位タイムカードに変え、さまざまな無駄を排除
  • 管理職へ権限委譲、意思決定スピードアップ
  • ジョブローテーションで有休を取りやすく
  • ノー残業デーの導入で残業時間の削減に成功

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取り組んだ背景 ~離職者が増加、まずは業務効率化から

satosangyo_01.jpg尾道市に本社を置き、1918年(大正7年)に創業した老舗の家具メーカー。2007年にベトナムにあるグループ現地法人に製造拠点を移し、翌2008年10月に佐藤友彦氏が代表取締役に就いた。国内は家具の企画・販売に特化し、インターネット販売や、販売店への卸売りを通じて全国に商品を届けている。
同社の働き方改革の原点は、佐藤氏が代表就任時につくった企業理念にある。「売り手よし・買い手よし・世間よし」の「三方よし」に、「働き手よし」を加えた「四方よし」を掲げた。以降、従業員を含めた、会社に関係する全てのステークホルダー(関係者)の幸せの実現を目指して経営を推進している。
全国的な人手不足の中で2018年頃から、思いがけない離職者が続いた。その対策として2018年から、本格的に働き方改革の取組を始めた。まず業務効率化や生産性の向上を達成して業績を上げることで、その成果を従業員に還元し、結果的に満足度を上げるという流れで改革の方針を固めた。並行して、働きやすい職場を実現する制度づくりに着手し、2019年に平均の有給休暇取得日数を3日間増やすという3年間計画を立てた。

主な取組と工夫点

タイムカードを1分単位に変更、時間意識を高める

2019年3月からタイムカードのシステムを30分単位から1分単位に変更し、働いた時間を実態に即して給料に反映できるように改めた。佐藤氏は「さまざまな仕事の段取りも1分単位でスケジュール化するように従業員の意識が変わり、効率的に働く姿勢が生まれてきました」と、効果を実感する。詳細にスケジュールを立てることで、やらなければならない業務が整理され、数分であっても無駄にせず、その間に他の業務に取り組めるように工夫をしているという。
時間への意識を高めるために、会議の改善にも着手。単なる情報共有や、調整を行うだけの会議は無くした。参加人数は話し合うテーマに関連する7人程度までとし、進行役は周到な事前準備を行い、1時間以内で必ず結論を出すルールも設けた。

ジョブローテーションによる多能工化、休みやすい職場に

satosangyo_02.jpg同じ地域に住む女性従業員が多いため、子どもの学校行事が重なり、有給休暇の希望も自ずと重複してしまうという課題があった。そういった場合でも従業員が休みやすい環境をつくるために、業務の平準化や、ジョブローテーションによる多能工化を推進。専属の従業員が不在であっても、業務が滞らずフォローし合える体制づくりに取り組んでいる。女性に限らず男性の休暇取得も促進し、2019年8月には会社で第1号となる男性の育児休業取得者も出た。

管理職への権限委譲で意思決定スピード向上

働き方改革の推進役を担う管理職の育成にも力を注ぐ。マネジメントなど各種研修を充実させているほか、部課長に一部権限を委譲し、所属部署の状況に合わせてさまざまなことを判断できる裁量権を与えた。「以前は、あらゆる決定権が社長に集中していました。」と、佐藤氏。2007年のベトナムへの製造拠点の移転の際に、佐藤氏が出張する時は、その間に一切の意思決定が行われずに停滞する状況に陥っていた。前述の改善ルールを定めた会議も、意思決定のスピード向上に寄与している。

毎週木曜をノー残業デーに設定

satosangyo_03.jpg以前、繁忙期には午後10時ごろまで残業することもあったという。2019年6月から毎週木曜にノー残業デーを導入。また、管理職から意識を変えようと、残業が多い従業員がいる場合タイムカードの自動計測システムで、該当者の所属長宛てに残業状況を報告するメールを送る仕組みを導入した。佐藤氏は「上司から部下への声かけが徹底できるようになったほか、上司が退社するまで部下も残業するという慣習がなくなりました」と話す。ほぼ全従業員が終業の午後5時から6時までには退社し、他の曜日でも午後7時には誰も会社にいないという。

取組の中で苦労したこと ~従業員ミーティングから経営課題が噴出

製造部門を移管した頃、佐藤氏はベトナムで過ごす時間が多く、日本にいる従業員とコミュニケーションが取れていないことに課題を感じていた。そのため、帰国したタイミングで各従業員に対して3カ月に1回のペースで1対1の直接ミーティングを実施した。組織の指揮命令の体系や、責任の所在などが整っていないことを原因とする、会社のさまざまな課題が明らかになったという。佐藤氏は「自分一人が会社を良くしようとしても、誰もついてきてないと感じていました。自分のスキルの低さを疑った時期も。書籍を読みあさるなど勉強し、従業員とのコミュニケーションを重ね、今でも試行錯誤を続けています」と語る。

取組の成果 ~残業時間削減と労働生産性の向上に成果

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社内業務の効率化、タイムカードのシステム変更、ノー残業デーの実施などの成果として、2016年に226時間だった従業員1人当たりの平均残業時間は、2018年には114時間と、半減させている。また、会社の成長のバロメーターとして算出している労働生産性は2018年7月に前年比から6㌽アップし、さらに翌19年7月にはさらに前年比6㌽上昇させた。
また、さまざまな取組の中で従業員同士のコミュニケーションが活発になり、「社風が明るくなった」、「有休が取りやすくなった分、人数の少ない部署をフォローしあう意識が高まった」などの声が上がっている。

課題や今後の目標 ~時間ではなく〝成果〟を正当に評価する制度に

さらなる生産性向上に向け、働いた時間数ではなく、時間内で生み出した新しい価値を評価する制度を検討している。現在は労働時間に応じた評価制度のため、労働を通じて生んだ価値が同じ場合、長い時間をかけた方が報酬が高くなる。これまでよりも短時間で集中して働き、業績向上や残業削減などにつなげる狙いという。

従業員からの評価

業務課
村上 瞳 氏

satosangyo_05.jpg土・日曜が休みで、平日は遅くても午後6時頃までには退社でき、買い物をした後の夕食など夫婦の時間を大切にしています。中途入社してちょうど1年ですが、業務課の仕事をしながら、空いた時間で新入社員の業務の支援や指導など、教育を任せてもらっています。やりがいを感じますね。タイムカードが1分単位になったことで、従業員の皆と声掛けをしながら、全員で定時の午後5時に仕事を終えられるように協力しあう、良い社風があります。

取材日 2019年10月