働き方改革事例

楽しみながら行える働き方改革を推進
中小企業の柔軟さで取組に即行性

鮮コーポレーション株式会社

  • サービス産業
  • 庄原市
  • 31〜100
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認定マーク
所在地 〒727-0013  広島県庄原市西本町2-18-8新興ビル4F
URL https://www.v-style.co.jp/
業務内容 飲食店経営
従業員数 計71人(男性62人 女性9人)

(2020年1月時点)

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  • アニバーサリー制度で休暇取得への抵抗をなくす
  • パートも含めたマルチスキル化で休暇取得促進
  • 成長シートでモチベーションアップ
  • 状況に合わせて選べる働き方選択制度

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取り組んだ背景とは ~働き方改革は未来への成長戦略

sen_01.jpg回転寿司「すし辰」、焼き肉店「カルビ屋大福」をはじめとする飲食店を中心に事業を展開。広島駅ビルekieへの新規出店など事業を好調に拡大している。飲食業界全般の働き方について「年中無休で、営業時間は長く、働き方改革が進んでいない」と語るのは、常務取締役の西田龍一氏。以前から「この課題に取り組まなければ、今後企業として生き残れない」と、時代を見据えた対応が不可欠だと感じていたという。また2019年度には、全国的な採用難のなかで6人の新卒者を採用でき、「せっかく入社してくれた従業員が辞めない環境と仕組み」を整える必要性も強く感じたという。求職者から選ばれ、入社後も生き生きと働いてもらえる企業にステップアップしたいと、働き方改革を未来への成長戦略と位置付けて取組を本格化した。

主な取組と工夫点

段階的に有休取得を推奨

sen_02.jpg最初に取り組んだ改革の一つが、年5日の有給休暇が義務化される1年ほど前に着手した「アニバーサリー制度」という年2日の有給休暇推進制度だ。本人の希望に合わせて出勤日を選べるシフト制の業務形態のため、それまでは有休が申請されることはなく、退社時にまとめて取るのが慣例になっていた。「どうしたら有休を取ってもらえるのか考えた時に、どうせなら楽しいイメージで取ってもらおうと考えました」と笑顔を見せるのは、推進役である本部部長の小森智恵子氏。誕生日などに利用してもらおうと「アニバーサリー休暇」とネーミング。その名の通り結婚記念日や子供の行事などに利用する従業員が多く、有休取得への抵抗をなくしてきた。その後、年5日の有給休暇が義務化され吸収される形となったが、「いきなり年5日取得からだったら、つらかったでしょうね」と小森氏。今でも有給休暇を「アニバ」と呼ぶ従業員がいることが、段階を踏んで進めたことの成功を物語っている。

パート従業員も含めたマルチスキル化で休暇取得促進

sen_03.jpg有給休暇の取得数が増えると、それだけ補充の人材が必要になるが、パートでも人材不足と言われている状況の中で、この問題を従業員のマルチスキル化によって解決している。もともと正社員が魚を切り、汁物や揚げ物づくりはパート従業員が行うなど役割分担をしていたが、「休むためには代わりの人間を育てるしかない」と方向転換。誰が休暇を取っても代わりとなれるように、正社員・パートの枠にとらわれず、役割の幅を広げ、各担当分以外の作業にも対応できるマルチスキル化を推進している。マルチスキル化は指導の労力を要するため、店長や従業員の中には難色を示す者もいたが、その度に「自分自身が休暇が取りやすくなるためでもある」という本来の趣旨をしっかりと説明した。

給与と連動する自己・他者による成長シートでモチベーションアップ

sen_04.jpg評価を見える化するため、ネタを切る項目や発注業務など、細かく具体的な項目に分けて評価を行う点数制の成長シートを実施。担当部長が項目ごとに「1」~「5」で知識や技術の評価を行い、3カ月に1度、自己評価に加え各上司が集まって部下を評価し、面談でフォローアップまで行う一連の流れを設定した。最高評価の「5」は「知識をオープンにすることで、店のためにも自分のためにもなる」という考えの下、その業務について他の従業員に指導し習得させることができたときにだけ付けられる。自身が何の知識や技術を得れば成長できるかが分かるだけではなく、評価による給与体系にも連動させることで、従業員が目的と誇りを持ってモチベーション高く仕事に従事できる仕組みとなっている。

状況に合った働き方を選択

sen_05.jpgパートスタッフも含め従業員が自身で働き方を選べる「3shine(サンシャイン)制度」も導入。従来の「残業・異動・転勤あり」に加え、基本給は1割減るが「勤務地限定」、「残業無し」といった3つから希望の働き方を選択できる。〝明るい未来をつかむ〟ことをイメージした爽やかなネーミングで、もともとは子育て中のパートスタッフを正社員に登用する際、働き方を選べるよう考案した制度だが、今では全従業員が対象となっている。半年単位で申請が可能で、男性にも利用してほしいと小森氏。「例えば60歳を過ぎての異動は望まないという男性従業員もいるでしょう。そこで退職せずに、少しだけ働き方を変えながら働き続けてもらいたい。逆に、子育てが一段落した後は、ばりばり働きたいという女性もいるかもしれません。男性にとっても女性にとっても良い制度だと思っています」

取組の中で苦労したこと  ~働き方改革はシンプルに、まずはやってみる

「制度をつくっていく中で、議論をしながら深く深く考えてしまうと、迷路にはまりこんでしまうんです」と小森氏は言う。だから最近は考え過ぎるのではなく、実際に動き出してからでも修正はできるので「まずはすぐにやってみる」というシンプルさが大切だと考えるようになったという。また、マルチスキル化について店長らから不可能だという声も挙がったが、「とにかく一人一人に伝えていくしかなかった」と西田氏。全体にアナウンスした後は、各店舗を周り、じっくりと話す時間を取ったという。

取組の成果 ~有給休暇取得率が2倍以上に

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2日間のアニバーサリー制度から5日間の休暇取得へとステップを踏んで推進した有給休暇は、マルチスキル化も進み、2018年の取得率7.1%から、2019年4月~9月の半年間で18.3%と2倍以上に上昇。また、成長シートの導入で、従業員も具体的な目標を持てるようになり、仕事へのモチベーションも高まっているという。

課題や今後の目標 ~中小企業の柔軟さを活かしながら、改革を楽しむ

「3shine(サンシャイン)」制度はパートスタッフから1人の応募があり、制度の説明、社長面談を経て、2020年3月1日に正社員となる。2月には全パートスタッフへの説明会を開催する予定で、今後もその有用性についてより広く周知していく。また、研修にも力を入れている。今後は成長シートと連動させ、自己・他者評価で必要とされた項目の指導を体系化して行っていく意向だ。「従業員一人一人の顔を思い浮かべて、長く働いていく上で不安なこと、困っていることを解消する制度をつくっていけばいいと考えています。中小企業だからこその柔軟さで、できることはまだたくさんあります。」と小森氏。会社を良くするための働き方改革。「今度はどんな制度をつくるんですか?」と、従業員に聞かれるように「楽しみながら前向きにやっていきたい」と、西田氏とふたり笑顔を見せた。

従業員からの評価

本部経営企画室
岩井 璃奈 氏

sen_07.jpg実は、最初は飲食業への就職は考えていませんでしたが、充実した制度や会社の雰囲気に引かれ、入社しました。就職活動の際に、経営する料亭に両親を一緒に招待してくれる「親孝行食事会制度」があると聞いていました。入社後半年で実際に招待してもらい、同期のみんなで「本当に招待してくれるんだ!」と話題になりました。会社の誠実さと、それだけ私たちを大切にしてくれていると感じました。経営企画室という新しくできた部署で、その日のおすすめ商品をお品書きにする仕事をしているのですが、こんな重要な仕事を信頼して任せてもらえることがとてもうれしいです。今後いろいろな仕事を経験できるのが楽しみです。

取材日 2019年11月