働き方改革事例

働き方改革で個々が希望するライフスタイルを実現
時短勤務や地域限定職など、子育て世代を手厚く支援

株式会社スタジオアイ

  • サービス産業
  • 呉市
  • 301以上
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-04
認定マーク
所在地 〒737-0056 広島県呉市朝日町14-7
URL https://www.fossette.jp/
業務内容 写真スタジオ・エステサロン経営
従業員数 301人(男性32人、女性269人)

(2019年6月時点)

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  • 無記名アンケートで従業員の意識調査
  • リフレッシュ休暇で感性を磨き、仕事に生かす
  • 地域限定社員制度など、子育て世代への支援を充実
  • 業務効率化の新システム導入で残業削減

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取り組んだ背景 ~結婚・出産を機に退職する女性が続く

studioai_01.jpg呉市を拠点に写真スタジオ「フォセット」「イノセンス」とエステサロンを経営する創業85周年の老舗。土・日曜の接客を主体としたサービス業のため、約9割を占める女性従業員のうち、結婚や出産を機に土日の出勤が難しくなり、退職する人が後を絶たなかった。代表取締役の相川真太郎氏は「豊富な経験やノウハウのある人が、結婚や出産をきっかけに辞めてしまうことは本人にとっても、会社にとってもマイナスです。働き方改革に取り組むことで、この状態を何とか解消したかった」と話す。2015年10月の経営計画発表会で、改革に着手することを全従業員に宣言した。

主な取組と工夫点

無記名アンケートで女性従業員の意識を調査

最初に行ったのが従業員の意識調査だ。2015年末に外部コンサルタントに委託し、無記名のアンケート形式で満足度や会社への要望などを調べた。休日や長期休暇、転勤に加えて、育児や将来のことなど幅広い意見が出され、一つずつ改善のテーマが浮かび上がった。

リフレッシュ休暇を開始、毎月の休日も増加

studioai_02.jpg写真スタジオとエステサロンの休日は店舗ごとに異なり、中には無休の店舗もある。ローテーションでの休みを実施しているが、従業員に連休を取る雰囲気はなかったという。芸術性や美しさなどを追求する仕事のため、感性を育んでほしいという思いから、2017年2月からリフレッシュ休暇を設けて、七五三や成人式などの繁忙期を除く、平日に3連休を取得できるように制度化した。相川氏は「旅行に行ったり、きれいな景色を眺めたり、趣味を充実させてほしいですね。そこで養った感性を仕事に生かしてもらえれば」と語る。さらにアンケートでも要望があった、月当たりの休日数についても、7日間から1日増やして計8日間とした。

地域限定社員制度を設け、子育て世代を支援

studioai_03.jpg広島県内を中心に岡山県、熊本県などに店舗を展開しており、特に新店舗の出店時には転勤者が増えるという。結婚、出産すると女性従業員は転勤が難しくなる。転勤ができる従業員と給与の差をつけ、転勤のない「地域限定社員制度」を新たに設け、それぞれの家庭の事情に合わせて仕事との両立を図りやすくした。また出産後、1年間の育児休業が終わっても、すぐに復帰ができない理由がある場合、本人が会社と話し合い、柔軟に復帰のスケジュールを決めている。復帰後は時短勤務が可能で、さらに店舗での写真撮影業務が長引き、子どもの保育園への迎えが遅くなった場合、延長保育料を補助する制度も設けるなど、特に子育て世代に手厚い支援体制を整えている。
また、結婚を機に退職した女性従業員が復職できる制度を導入し、若手の技術者を育成するトレーナー部を新設した。現在、過去の退職者や産休後に復帰した従業員など3人が所属している。従業員の要望に応えながら、それぞれが持つ能力を最大限に生かし、事業の拡大につなげている。

残業削減へ独自の写真選定システムを構築

studioai_04.jpg写真スタジオでは、撮影にかかる時間、そして好みの写真を選んでもらう時間の長さが来店客ごとに大きく異なる。さまざまな改革を進める中で、特に後者の写真選定の時間の長さによって、従業員の残業が大幅に増えることが課題となっていた。この解消に向け2016年から、来店客が自宅のパソコンで写真を選択できる独自システムを導入した。これにより撮影が終われば、速やかに従業員も退社できる環境が整った。導入当初は運用への不慣れもあり業務が増えたが、翌年からは残業時間が減り、現場からは好評を得ている。

従業員の多能工化による協力体制

studioai_05.jpg1人の従業員が複数の業務を横断してこなせるように、業務の多能工化を従業員の育成方針に掲げてきた。新入社員の入社時研修で複数の現場を経験させるほか、以降も継続した研修を繰り返すことで、協力できる体制づくりを進めてきた。結果として「繁忙期は、本社勤務の従業員もそれぞれの店舗の応援に駆けつけるなど、皆で協力し合う体制が整っています」と総務部の山田佳子氏は語る。

取組の中で苦労したこと ~多様な働き方を実現していくことに尽力

従業員に寄り添えば寄り添うほど、さまざまな個別の要望に直面する。相川氏は「あらゆることに耳を傾け、要望に応えていくのは大変かもしれませんが、本人の技能を生かせて、やる気になってもらうことが一番大切です」と語る。多能工化で業務の幅を広げるだけではなく、専門性を高めてより良い品質の写真を提供したいという従業員のニーズに応え、独自のセットを豊富にそろえてさまざまな世界観で撮影ができる新しいスタジオを開設するなど活躍できる場も整備した。

取組の成果 ~残業削減に成功、復帰する従業員も

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働き方改革を進めてきた結果、1カ月の平均時間外労働が着実に減少。2016年度は写真選定のシステム導入に慣れるまでの期間で一時的に増えたが、その後は1カ月当たり約6時間から7時間程度で推移している。残業が減り、働きやすい環境になったことで、「結婚や出産で退職された人が、復職する事例が増えています」と、改革の広がりを実感している。

課題や今後の目標 ~さらなる生産性向上を目指して

以前から各店舗で生産性の管理を徹底してきた。店舗のスタッフ数に対する売上高(人時生産性)を店舗ごとに算出。働き方改革に伴い、従業員の休日を増やした一方で、それを補う人を確保しなければならず、フリーランスに外注するなど人件費が増え、人時生産性も下がることがあるという。相川氏は「さらに多能工化を進め、効率の良い店舗運営を模索しながら、生産性の向上とともにより働きやすい環境をつくっていきたい」と話す。

従業員からの評価

美容部
白井 里英 美容トレーナー

studioai_07.jpg結婚後、子どもが欲しかったので、自分の人生を見つめ直し、一度会社を辞める決断をしました。無事子どもに恵まれ、もう一度この会社で働きたいと思い、会社と話し合いの場を設けてもらいました。社長からは「若手の育成を担当してほしい」と言っていただき、復職することに。新たに着付けやヘアセットのトレーナー部を設置してもらい、若手技術者の育成に情熱を注いでいます。子どもを保育園に預けながら働いていますが、残業になった場合は保育園の延長料金を補助してもらえるなど、子育て世代にとっても本当に働きやすい職場だと実感しています。

取材日 2019年10月