働き方改革事例

従業員の声を聞き取り、居心地の良い職場へ
有休取りやすい仕組みづくり、業務効率化による時間削減

日本サカス株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 1〜30
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-08
認定マーク
所在地 〒731-0101 広島県広島市安佐南区八木1-14-26
URL https://sacas.co.jp/
業務内容 水槽・アクアリウムの製造・加工
従業員数 22人(男性16人、女性6人)

(2019年6月時点)

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  • 従業員の本音を引き出す「社内サーベイ」の実施
  • 時間単位有休の導入や声かけなどで有休取得率アップ
  • IT活用で業務を効率化
  • 委員会活動でコミュニケーション活性化

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取り組んだ背景 ~従業員が定着する「居心地の良い」職場へ

nihonsacas_01.jpg1967年に創業し、水族館の水槽やアクアリウムの製造、プラスチック加工を行う。主に水槽を扱うアクアと、樹脂加工のプラテックの2事業部。企画からデザイン、設計、施工までワンストップで提供する。大型水槽内に水がある状態で内面の傷を修復する装置・技術「水中研磨」は特許を取得しており、技術力を武器に、全国の水族館などに数多くの水槽を納めてきた。事業の持続的発展に向け、将来を担う若い人材の確保・育成を目指し、5年前から本格的に新卒採用を開始。年に1~2人ペースで採用できていたが、採用した7人のうち3人が退職。

nihonsacas_02.jpg水族館の新設やリニューアルが相次ぎ業務が増えたこともあり、人手不足に頭を悩ませていたという。そこで、従業員の定着と会社の魅力アップへと働き方改革の取組を始めた。代表取締役の蓼征成氏は、「せっかく入社してくれたのだから長く勤めてもらいたい。そのために、休み明けに出社したいと思える『居心地の良い職場』をつくろうと決断しました」。制度構築は総務課長の高橋実穂氏が中心となって進めた。「従業員の心身の健康のためにも生産性を上げて残業削減や有休を取りやすくなるように、全社を上げて取り組まないといけないと感じ、推進しています」

主な取組と工夫点

従業員の声を積極的に聞き取り、常に改善を意識

nihonsacas_03.jpg会社の雰囲気を重視する蓼氏の方針で、社長室はなく、皆が社長とすぐに話ができるオープンなオフィスにしている。人間関係が良く笑いの絶えない職場を理想とし、従業員と積極的にランチに行き、会社への要望や仕事への思いに耳を傾ける。「全従業員と年に1度はランチに行くことを目標に、声かけをしています」と蓼氏。高橋氏も「電話で済む要件でも別棟や各部署を回り、顔を見ながら困りごとがないか聞いています」と話す。
「この会社に入って良かったか」、「相談できる上司はいるか」、「正当に評価されていると感じるか」など約30の質問に、匿名で答えてもらう社内サーベイを2017年から始めた。蓼氏は「このサーベイが私の通信簿。厳しい結果になる項目もあるが、従業員の本音と現実を知らなければ改革はできない。居心地の良い会社づくりへの取組や改善を続け、毎年結果を良くしていきたい」と話す。今後はサーベイの実施を従来の年1回から2回に増やす予定という。

有休を取りやすい環境づくり

nihonsacas_04.jpg「以前から有給休暇の取得率は低くはありませんでしたが、従業員間の差が大きかった。プライベートのためには休みにくいという雰囲気もありました」と高橋氏。2017年に公休日を96日から105日に増やしたのを皮切りに、2019年には、就業規則には規定しているが利用の少なかった時間単位有休の全体ミーティングでの周知や、有休残日数の表示を給与明細へ加えるなど、休暇に関する取組を立て続けに行い、取得しやすい体制を整えていった。それでも取得が進まない従業員に対しては総務から本人や上司に声掛けをして取得を促した。
時間外労働の削減は、各部署が毎月行うミーティングで業務の効率アップについて話し合い、方針を決定。例えばプラテック事業部では、業務を仕分け、材料の準備など担当以外でもできる業務を手の空いている従業員に割り振ることを部署で決めた。また、上司からは仕事を抱え込まず周りに助けを求めるように積極的に声掛けしている。2019年8月からはアクア事業部は毎週月曜日、プラテック事業部は月に4日各自でノー残業デーを決め、時間外労働の削減を図っている。繁忙期以外は比較的、定時に退社できているという。

IT活用による業務効率化で時間短縮実現

nihonsacas_05.jpg多品種小ロットで100%オーダーメードという商品特性上、機械化できない部分も多く、どうしても時間でカバーするしかない状況だったという。そこで業務効率化を進めるため、2019年2月からグーグルのソフトウエア「Gsuite」を導入した。Gsuiteはクラウド上にデータを保存することで、出張先や客先で必要なデータにすぐアクセスできることから、経費の精算や、現場で撮った写真の整理・保存も移動中にできるようになった。また、社内連絡ツールをグループLINEからチャットワークに切り替えた。チャットワークは1トピック1グループなので何の話をしているかが明確に分かり、同時に進む複数の案件に関しての情報共有がスムーズになり、製造の手戻りや遅れなどが少なくなったという。チャット上で簡易的な会議を行うこともでき、報告のための会議など無駄な会議時間を削減できた。さらに、タイムカードをスマートフォンで出先からでも打刻できるようにして従業員の負担軽減、労務管理・給与計算を効率化できた。休暇の取得や残業時間の削減が進む中でも業務効率化への取組が奏功し、2019年7月期売上高は前年比2割増と高い生産性を維持できているという。

委員会活動で社内交流活性化

厚生委員会(エンジョイクラブ)、美化委員会(磨く会)、業務改善委員会(変わろう会)の委員会を設置し、全従業員がどれかに所属。従業員の発案から在庫整理やデータ保管に関する改善策が出されるなど、年齢や役職に関係なく話しやすい風通しの良い雰囲気の中、問題解決に向けて活動が行われている。また、全従業員に雑誌「致知」を配り、感想を発表し合う「木鶏会」も月1回開く。会では感想をそれぞれが発言し、その際、批判的な発言は禁止。「お互いに褒め合うことになるので、コミュニケーションの活性化に寄与しています」と高橋氏。

取組の中で苦労したこと ~残業削減の趣旨を粘り強く従業員に説明

nihonsacas_06.jpg従業員の心身の健康のために残業削減に取り組んでいるが、残業の多い従業員の意識を高める過程には苦労があったという。「会社の業績のために頑張ってくれていることがよく分かるのだが、無駄を見つけてそれを削減・改善し、効率の良い働き方をしよう」という趣旨を、誤解なく説明するにはどうしたらよいか頭を悩ませた。掛ける言葉使いに配慮しながら、現場の上司が粘り強く趣旨を説明し、理解を浸透させていった。

取組の成果 ~平均有休取得率90%達成

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2017年から2019年にかけて休日に関する制度整備や周知を徹底した結果、2017年6月~18年5月の年次有給休暇平均取得率は54%だったのが、2018年6月~19年5月には90%、同平均取得日数は12.7日と高い水準となった。個人を見ても、取得率が50%以下の従業員は、2017年度の8人から2018年度は4人に減少したという。高橋氏は「時間単位有休の周知や残有休日数の通知、声かけなどを始めたことで、従業員の休暇に対する意識が変わってきたのでは」と分析する。 コミュニケーションも活性化し、社内の雰囲気も良くなっている。実際に社内サーベイの数値も上がってきており、不満も徐々に減っているという。

課題や今後の目標 ~新たな目標管理制度を導入し、人材育成に活用

nihonsacas_08.jpg社内サーベイで何をどう頑張れば良い評価をもらえるのかわからず、モチベーションが上がらないという声を受け、2019年12月から新しい目標管理制度を導入する予定だ。従来の年1回の人事評価制度では本人と上司だけが目標を共有していたため、周りの人が誰をどう支援していいのか分からず、1年後には事業環境などの変化で目標が意味をなさないケースもあった。今後はスマートフォンアプリを使って1~3カ月の短いスパンで達成目標を立て、チーム全員で共有して人材育成に生かす。
蓼氏は「われわれのような小規模企業にとって一生懸命働いてくれる従業員は、とても大事な存在です。それに報いたいといつも考えています。これからも従業員の声を聞きながら『居心地の良い会社』をつくっていきます」と、今後の展望を話す。

従業員からの評価

プラテック事業部営業課
横関 峰旭 課長

nihonsacas_09.jpg2019年8月に『必ず午後9時までに退社する』という目標を定め、従来は終業後にしていた見積もり作成なども勤務時間内の隙間時間で行うようになりました。限られた時間の中でいかに効率を上げるかと常に意識するようになり、実際に業務効率は5~6割上がったと感じます。また、業務の割り振りなど上司も相談にのってくれて、周りもサポートしてくれるようになりました。帰宅時間が早くなったことで、家族との時間を持つことができるようになりました。以前は帰宅しても2人の子どもの寝顔を見ることしかできなかったのですが、今では今日の出来事などを話す時間ができ、仕事への活力になっています。

取材日 2019年11月