働き方改革事例

従業員の声に向き合い、職場改善重ねる
環境整備とモチベーション向上で、離職者を減らす

株式会社キャステム

  • 製造業
  • 福山市
  • 101〜300
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-08
  • entrydatajireikaikaku2-10
  • entrydatajireikaikaku2-11
認定マーク
所在地 〒720-0004 広島県福山市御幸町大字中津原1808-1
URL http://www.castem.co.jp/
業務内容 精密金属部品の製造・販売
従業員数 266人(男性180人、女性86人)

(2020年2月時点)

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  • 従業員の声を受け止め職場改善に生かす
  • 女性が働きやすい製造現場をつくり、男性も働きやすい職場に
  • 多能工化の推進で有給休暇の取得促進
  • 小さな改善の積み重ねでモチベーション向上

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取り組んだ背景 ~離職率50%の厳しい状況からの脱却

“castem_01.jpg"鋳造技術であるロストワックス製法、メタルインジェクション製法で、複雑な形状の金属加工品を量産し、企業に提供。近年はエンターテイメント性の高いオリジナル金属加工品を創造する「アイアンファクトリー」事業も手掛け、従来の枠を超えて業界を牽引する。今でこそ採用の倍率は10倍近いが、数年前まで離職率50%以上という厳しい状況だった。代表取締役社長の戸田拓夫氏は、「我々は少ロットかつ他社が対応できないような複雑なものも多く引き受けており、付加価値の高いものづくりをしています。そのため人手がかかり、技術の向上も必要となるため、いかにして従業員の定着を図るかが最大の課題でした。そこで働きやすい職場づくりに着手することにしました」と話す。

主な取組と工夫点

従業員の声を受け止め、辞めない職場に

castem_02.jpg戸田氏自ら200人を超える従業員全員の個別面談を行った。抽出された課題は海外支店にまで共有、課題を徹底的に直視・改善する姿勢を全社に示した。従業員の声に「謙虚にならなければいけないと感じた」という戸田氏の思いは、従業員代表が直接役員に声を届けたり、全ての投書への回答が掲示される目安箱の設置や、都度テーマを決めて各部署からの従業員が話し合うテーマ会議へと継承されている。また、夏場には室温が50度を上回ることもある鋳造現場。そのため夏場の退職者が多く、従業員が体調を崩すことも珍しくなかったことから、従業員の健康を食から支えるために自社運営での食堂を2018年にオープン。リフレッシュできる空間で栄養を考えた食事を採れるようにした結果、夏場の退職者は減少している。

女性も働きやすい製造現場の実現

鋳造業ということもあり、もともと女性は1割もいない男性中心の職場だったが「女性が働きやすい職場なら、男性も働きやすい」と考え、生産部門で女性が活躍できる基盤づくりを始めた。まずは事務職希望だった女性従業員に、品質管理と図面作成を任せることにした。先入観無く仕事に取り組めるように、操作が一見複雑に見える機械は不要なメーターを背後に回すなど改造。資材などを積む高さはそれまでより低くし、重量も制限するなど、女性にも快適に働ける環境を整備した。現在の生産部門では、製造に関する庶務と製造業務を半分の割合で行う「製造事務」と「一般事務」の二つの職種で多くの女性が活躍している。

多能工化でフォローし合い、有給休暇取得を促進

“castem_03.jpg"2019年から有給休暇を無期限の貯蓄型にした。改革の中心を担う経営管理部の田村晃宏氏は「週休2日制になったことや特別休暇が多いことで、逆に以前より有給休暇の取得率が減っていました。その分の有休を貯蓄し、よいタイミングで使ってほしい。リフレッシュすることが生産性のアップにつながり、同時によりよい人材の獲得にもつながります」と語る。こういった休みやすい環境は、多能工化が進んだからこそだという。「積極的に多能工化やワークシェアリングを進めたことで、相手の仕事の大変さや手助けするべきところが分かるようになりました。トラブルがあっても解決するための話し合いが積極的に行われるなどコミュニケーションが活発になり、雰囲気も変わるといった思わぬ効果もありました」

小さな改善でモチベーション向上

castem_04.jpg事務職でも作業着と事務服の部署があり、服装によって区別をされているように従業員が感じていたことが仕事へのモチベーションを下げていることを知り、2018年、製造から事務に至るまで全社の制服デザインを一新、統一化。鋳造現場用に耐熱の生地開発まで行ったが、従業員の声を受け止める中で「モチベーションが下がる原因は些細なことの積み重ね」だと確信したという。
従業員同士が感謝を伝えるための「ありがとうカード」も実施。社内各所に掲示し、多くカードをもらった従業員を発表する。また、新しいプロダクトを作る部署のアイアンファクトリーには、従業員が自由にアイデアを書けるボードも設置。常日頃仕事をする環境の中で、さまざまな角度からモチベーションを高める工夫を多く取り入れており、それが企業の成長へとつながっている。

取組の中で苦労したこと ~改革はトップダウンとボトムアップ双方から

“castem_05.jpg"改革の一環で、従業員評価を従来の3段階から、あいまいな「真ん中」を付けられない6段階評価に替える評価制度改革も行った。新たな取組ではなく、従来のものを変革するときが「一番波風が立ちやすい」と語る田村氏。経営陣による発信を行った上で、管理部からなぜ改革が必要なのかを個別に解説、説得するというトップダウンとボトムアップ双方からの道筋を取ることで、改革の意図を理解してもらった。

取組の成果 ~採用の倍率が10倍に、適性把握した配置で離職防止

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週休2日制の導入などで、会社カレンダーで定めた年間休日数を2014年の113日から、2020年に126日と13日も増やした。多能工化を進めたことで、多忙な時は業務を補い合い、全社的に休みやすい環境を整えたことが成果につながっている。採用も順調だ。「今年は200人ほどの就職希望者から20人ほどを採用。約10倍の倍率は鋳造業界ではあり得ないと言われています」と田村氏。女性活躍について積極的に発信した効果もあり、応募者は圧倒的に女性が多いという。また、新入社員研修を1カ月から3カ月に延長し、適性や希望を見極めてから部署配置を行うことで、入社後数年で退職する従業員は極端に減った。

課題や今後の目標 ~働きやすい職場づくりは経営者の使命

「廊下で従業員から声を掛けられるんです」と戸田氏が語るように、風通しのいい社風がある。「仕事の厳しさや難しさを、やさしくしようという気はありません。男女関わらずより難しい仕事に挑戦してもらいたい。そのための働きやすい環境を整備するのは『改革』ではなく経営者の使命です」ときっぱりと語る戸田氏。「利益が出ない年もあります。そんな年こそ、忙しい時期には流されて実行できなかった改革や改善を行う。利益の出ない年こそ、節目の年なんです」今後はトップとボトムの中間層をさらに巻き込み、リーダーとして育成していく方向だ。

従業員からの評価

経営管理部 経営管理課 経営管理係 人事S
野中 瑛里 さん

“castem_07.jpg"入社2年目です。ものづくりの企業に入ると決めたときから男性ばかりなんだろうな、社長と話すことも無いだろうな、有給休暇も我慢しないといけないだろうな・・・と、先入観から思い込んでいました。でも実際は全て杞憂で、社長をはじめ皆さんに気軽に声をかけてもらい、若手従業員の声をここまで聞いてもらえるなんて、と驚きばかりです。これほど毎日やりがいを持って働けている今の自分の姿を想像していませんでした。「ありがとうカード」を多く頂いたこともとてもうれしく、ますます頑張ろうと思いました。

取材日 2020年1月