働き方改革事例

ワークライフバランスに配慮した働きやすい環境づくり
一元管理システム導入で効率化、品質向上、残業削減にも

呉精器工業株式会社

  • 製造業
  • 呉市
  • 1〜30
  • entrydatajireikaikaku2-01
  • entrydatajireikaikaku2-03
  • entrydatajireikaikaku2-04
  • entrydatajireikaikaku2-07
認定マーク
所在地 〒737-0004 広島県呉市阿賀南2-11-1
URL http://kureseiki.co.jp/index.html
業務内容 修理メンテナンス技術による船舶や機械の修理サービス
従業員数 19人(男性15人、女性4人)

(2020年1月時点)

seika_header.png

  • チームでのフォロー体制で多能工化、業務の偏り軽減で休みやすく
  • 一元管理システムの導入で、現場の業務効率アップ
  • 資格取得をバックアップして能力向上と効率化
  • 従業員の事情つかむ個人面談で早急な対応可能に

seika_footer.png

取り組んだ背景 ~ワークライフバランスを維持し、全ての従業員の働きやすさ実現へ

kureseiki_01.jpg防衛省の船舶機械をはじめ、民間の大手企業の機械修理メンテナンスなどを請け負う。従業員は20代から70代まで幅が広く、ベテランから若手への技術の伝承が経営課題の一つとなっていた。また、修理を急ぐクライアントからメンテナンスの仕事が突発的に入ることもあり、その対応で働き方が不規則になることがあった。改革に取り組んだ背景について、代表取締役の中里嘉孝氏は「個々のワークライフバランスに配慮した働き方を重視し、全ての従業員にとって働きやすい会社を実現したいと思っていました。次世代への技術継承の観点からも、長く働いてもらうことが会社で培われた独自技術を伝えていくことにつながると考えました」と話す。

主な取組と工夫点

多能工化、業務量の平準化で突発業務に対応

kureseiki_02.jpg修理メンテナンスは、蓄積した技術力が必要な労働集約型の業務だ。以前は能力の高い個人に業務が偏りがちだったため、電気Ⅰ、電気Ⅱ、制御の3つのグループを作り、チームで業務をこなす体制に改めた。「今何をやっているのか」、「グループを超えたサポートがどれくらい必要なのか」などの情報を工場長が集約・共有し、偏りがちだった仕事量を平準化させた。また突発的な業務に対応できる体制を整えるため、グループ内で多能工化を進めている。結果的に業務の総量を見極めることにもなり、残業を減らすことにも成功した。「どうしても突発的な修理に対応しなければならないこともあります。そのときに個人に負荷がかかりすぎる状態を防ぎ、会社としてしっかりと対応できる組織づくりの必要性を感じています」と中里氏。

本来の業務に集中できる環境つくり、作業効率向上

修理業務の効率化にも取り組んだ。これまでは現場の従業員は修理をこなしながら傍らで取引先に提出する報告書類を作成しなければならず、大量の写真をパソコンに取り込む作業に加え、書類用の写真の抽出や不慣れな書類作成に多大な手間と時間がかかっていたという。そこで、一元管理システムを導入し、写真撮影した後はワンタッチでパソコンへデータ転送することが可能となり、ベースとなる書類を自動で作成する仕組みを構築。さらに原則、書類作成は事務部門が統括するように改め、現場はあくまでも修理業務に専念できる環境を整えた。こうした効率化は従業員の集中力を高め、品質向上につながるほか残業時間の削減にも寄与している。

就業中にパソコン教室に通い技能習得

kureseiki_03.jpg一元管理システムの導入にはワード、エクセル、アクセス、VBA(エクセルのマクロ)を使いこなせる事務員の養成が必要だったため、事務部門の新入社員を就業時間中にパソコン教室に通わせ技能を習得させた。「3カ月間、通ってもらいました。時間をかけて基礎からしっかりと学んでもらうことで、後々の効率化につながりますし、少人数の中、先輩従業員が教える時間が無い場合もあります。そういった時は外部の研修をうまく活用しています」と中里氏。修理の現場でも、電気工事士の第一種、第二種など若手従業員が率先して取得しており、費用は全額を会社が負担するなど、個々のスキルアップの機会を設け、早期の即戦力化を進めている。

個別面談で家庭状況をつかみ、有休の取得促進

年に一回、社長との個別面談を実施している。業務内容の意見交換だけではなく、従業員一人一人が抱える家族の事情や悩みなどもヒアリングする。「やはり、組織として従業員の情報を共有することが大事ですね。親の介護や病気などあらかじめ事情を知っておけば、いざというときに休暇の付与などの対応がしやすくなります。早めに予定を組める有給休暇は計画取得を徹底し、しっかり休んでもらっています」と中里氏。結果的に有休が取りやすい環境が整い、従業員のワークライフバランスが保て、定着につながっているという。

取組の中で苦労したこと ~慣習を改めることに反発も

kureseiki_04.jpg一元管理システムを導入し、書類作成業務が自動化したことをきっかけに、現場と事務所での二重の管理業務を徹底して廃止した。ところが、長年行ってきた慣習を改めたため、現場では「仕事がやりにくくなった」や、「新しい書式では見えづらい」など、一部で否定的な声も挙がったという。「時間をかけて何度も話し合い続けました。なぜ取組が必要なのかを丁寧に伝えることで、次第に納得してもらえるようになりました」と中里氏。

取組の成果 ~業務改善で残業削減に効果

kureseiki_05.jpg

業務改善などを進めた結果、1人当たりの月平均残業時間は2018年の14.5時間から、2019年は9時間まで減った。また、現場ではチームでフォローしあう体制を整え、多能工を進めたことで休みやすい業務環境が整った。中里氏が普段から「休もう」と従業員に伝え続けてきたことで、従業員からは「社長から率先して声がけしてもらったことで、本当に休みが取りやすい雰囲気になりました」の声が上がっている。結果として2019年には1人当たりの有休取得日数は11日を達成した。

課題や今後の目標 ~周辺業務のゼロと早期成長を目指す

書類作成業務を減らしたことで新たな課題も生まれている。「修理業界では5年間働くことで一人前になると言われていますが、労働時間削減によって現場で技術を習得できる時間は限られ、結果7年くらいかかるようになりました」と苦笑する。周辺業務を削減し、本来の業務に集中できる環境整備を引き続き徹底することで、職人として一刻も早く一人前になれるよう技術向上に向けた体制づくりに取り組んでいくという。

従業員からの評価

営業部
竹下 佳琳 さん

kureseiki_06.jpg平日は仕事を頑張り、休みの日は好きなアーティストの追っかけをして楽しんでいます。会社の先輩とも趣味の話ができ、明るく温かい雰囲気です。アーティストのイベントや舞台に行くために有休を使うことも。 入社した頃から一元管理システムの導入が進められ、就業時間中にパソコン教室に通わせてもらいました。ワードやエクセルをはじめ、今まで使ったことのなかったアクセス、VBAなども使いこなせるようになり、以前よりも早く書類を作れるようになりました。先輩方からは仕事が早いねと褒めてもらい、やりがいになっています。

取材日 2020年1月