働き方改革事例

積極的なICT活用・情報共有で連携深め、業務の質を向上
研修制度の充実でスキルとモチベーション向上

株式会社プロケアしまなみ

  • 医療・福祉
  • 尾道市
  • 31〜100
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認定マーク
所在地 〒722-0046 広島県尾道市長江2-7-8
URL https://nagae.sakura.ne.jp/
業務内容 介護事業所運営
従業員数 61人(男性14人、女性47人)

(2020年2月時点)

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  • 全従業員時給化で制約ある従業員も活躍できる環境づくり
  • 積極的なICT導入で業務の効率・質を向上
  • 時差出勤や子連れ出勤を可能にし、誰でも働きやすい職場に
  • 研修推進し、スキルとモチベーション向上

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取り組んだ背景 ~パート職員の待遇改善へ、採用力・定着率アップも

procare_01.jpg尾道市長江でグループホームと小規模多機能ホーム、同市山波町で訪問看護や定期巡回、居宅介護支援事業所、福山市神村町でサービス付き高齢者向け住宅を運営する。代表取締役の松山慎太郎氏は「子育てや介護などで勤務時間に制約があるため、優秀にも関わらずパートとして働く職員が多くいるという状況に疑問を感じていました。また近年は求人の応募も少なく、定着率が低いことに悩んでいました。働きやすい環境を整えて人材確保と定着につなげたいと考え、働き方改革の取組を始めました」と話す。

主な取組と工夫点

全職員時給制で制約ある職員も活躍できる環境づくり

法律の定めによって、介護事業所の管理者は常勤でなくてはならない。以前の就業規則では常勤の勤務時間は週40時間(1日8時間×週5日)となっていたため、どんなに優秀でも勤務時間の制限がある人は管理者になれなかった。そこで多少勤務時間が短くても管理者になれるよう、2019年11月に就業規則を改定し、常勤の勤務時間を週35時間(1日7時間×週5日)に変更。管理者になれる枠を広げた。2020年1月には同一労働同一賃金の実現に向け、正社員を含めた全職員を時給制にした。基本給をベースに経験や保有資格に応じた手当を加算して時給を算定。欠勤などがなければ、これまでと同等かそれ以上の収入を得られるような給与体系とした。同年夏からは勤務時間の長短にかかわらず賞与を支給することを検討していて、待遇面の格差を徹底的に無くしていく。

勤怠管理をシステム化し、業務効率化

procare_02.jpg徐々に事業を拡大し、今では3つの拠点を持つため、勤怠管理や事業所間での情報共有が難しくなっていた。そのため、タブレット端末やスマホで各事業所のシフトや出勤状況にアクセスできるクラウド勤怠管理システムを導入。「他部署の職員に連絡を取りたい時に出勤状況を電話などで聞く手間が減りました。システムで定期的にシフトをチェックして『連勤が続くけど大丈夫?』などと積極的に声がけをしています。休みの日にも自分のスマホで各部署の出勤状況が確認できるので重宝しています」と、事務長の槙計人氏。

procare_03.jpgケアマネなど外回りの多い職員は会社支給のスマホ、施設勤務の場合は静脈認証の端末で出退勤の打刻ができるようにした。以前は紙のタイムカードにそれぞれが打刻し、事務職員が全員分を手入力していたため、事務負担も大幅に削減できた。毎月の勤怠の締め処理は、以前は4日ほどかかっていたが、今では半分の2日程度で完了できるようになったという。

ICTで情報共有、業務の質向上にも効果

procare_04.jpg2016年には利用者情報を共有するシステムを導入。利用者の顔写真や生体(バイタル)情報、服薬情報などをクラウドで管理し、ケアマネ、看護師、介護職員等の異なる職種で情報が共有できるようになった。手書きで申し送り事項を書いていた時に比べ、情報共有のスピードが上がった。救急対応時には「服薬や介護保険情報などがすぐに調べられ、救急隊員に速やかに伝えられるので非常に役立っています」と松山氏。また、社外の医師や薬剤師、ケアマネなども利用者の情報にアクセスできるようにし、各機関と連携して支援に当たれるようになった。また、サーバーを整備し、専用のネットワークを構築したことにより、拠点先でも仕事ができる様になり効率の良い働き方につながっているという。
2019年には利用者の家族や他事業所からの電話をそのまま職員の携帯電話に転送できる「どこでも内線」を導入。電話があった旨をわざわざ伝達する必要が無く、事務負担が軽減できた。すぐに担当者と連絡が取れるので、利用者家族や他事業所にとっても便利になったという。

時差出勤や子連れ出勤を認めて働きやすく

以前からシフトなどに影響のない範囲で時差出勤や勤務日の振替を許可しており、通院や参観日の時などに活用されている。職種を問わず子連れ出勤も認めており、学校の学級閉鎖時などに活用されている。また障害のある職員も働きやすいよう、無理のない業務を割り振るなどして工夫。例えば、障害を抱える職員は環境が変わると対応が難しくなることもあり、変化の少ないグループホームに配属。松山氏は「周りの理解が一番大事なので、職員にもきちんと説明をして理解をしてもらっています」と話す。医療に精通した職員が多く勤める特性を生かし、職員のカウンセリングを行う体制を整えている。

研修参加を促し、スキルとモチベーション向上

procare_05.jpg3~4年前から正社員・パート・派遣など雇用形態を問わず、介護福祉士実務者研修、認知症介護実践者研修、ケアマネ更新研修などの各種研修参加を推進している。研修日は出勤扱いとし、費用は会社が全額負担している。喀痰吸引を行うための研修にはほぼ全員が参加し、資格取得に必要な実地研修は自社施設で看護師指導の下で行っている。松山氏は「スキルアップにつながり、職員に非常に喜ばれています。実務に必要な最低限の研修だけではなく、より高度で専門的な研修に自発的に参加する職員も多く、モチベーション向上につながっているのでは」と話す。

取組の中で苦労したこと ~給料減少を懸念した職員からの反発

全職員を時給制にする際には、給与が減ることを心配した常勤職員から反発もあった。松山氏は「以前から遅刻や欠勤分は減額しており、時給制になっても支給給与額に影響がないことや、同一労働同一賃金に取り組む意義を丁寧に説明して理解を得られるよう努めました」と話す。

取組の成果 ~働きやすい環境整い、採用力や定着率向上

procare_06.jpg同一労働同一賃金化や、時差出勤・子連れ出勤などの柔軟な働き方が定着したことで、面接に来た応募者に対して条件面などでアピールしやすくなった。職員紹介の入職者も増え、定着率も安定してきたという。職員数は47人から52人に増えたが、2018年度の離職率は2017年度の17.6%から10.8%に改善した。

課題や今後の目標 ~職務評価で生産性向上

社労士事務所などの協力の下で進めている職務評価の早期整備を目指している。介護職員や看護師、事務職員など職種ごとに行っている業務の難易度に点数をつけ、時給の手当て部分の算定に生かす。また、職務評価の結果を基に、専門性が高い業務以外を他の職員に割り振ることで生産性を向上させる方針だ。
また、子育てしながらでも働きやすい職場を目指し、山波町に新設した事務所の2階に、職員が気軽に利用できる子供の一時預かり所をつくることを検討している。また、テレワーク導入により、事務所以外でもケアプラン策定などができる体制も整え、より働きやすい環境を整備していく予定。

職員からの評価

ケアマネジャー
安棟 みさ さん

procare_07.jpg柔軟な勤務体制のおかげで子どもの参加日や懇談に合わせて休んだり、一度帰宅する事ができたりするので助かっています。シフトに穴が空いたときには皆でフォローし合い、場合によっては通所や訪問の利用者に日時を変えていただくことで対応できています。情報共有システム導入後はスマホで利用者情報にアクセスでき、自宅からでも現場に指示を出せるので便利です。担当している利用者の体調に変化があった時などにはスマホに通知が来るので、すぐに対応方法を指示することが可能になり、役立っています。

取材日 2020年1月