働き方改革事例

「当たり前」を疑い、業務効率化
残業減や福利厚生充実で定着率アップ

共栄美装株式会社

  • サービス産業
  • 広島市
  • 31〜100
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認定マーク
所在地 〒733-0035 広島県広島市西区南観音4-10-22
URL http://kyoueibisou.jp/
業務内容 一般・産廃の収集運搬、機密廃棄物処理、遺品整理サービス
従業員数 78人(男性71人、女性7人)

(2020年5月時点)

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  • 集金方法や収集ルートを見直し、業務効率アップ
  • スライド勤務や部署を越えた助け合いで残業時間削減
  • 人材確保へ若手の待遇改善や従業員紹介制度導入
  • 仮眠室やトレーニングジムで健康後押し

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取り組んだ背景 ~定着率アップへ推進委員会を結成

kyoeibisou_01.jpg一般・産業廃棄物の収集・運搬・処理ほか、遺品整理や医療系廃棄物の安全処理など幅広く環境事業を展開。ここ数年、新規採用者の半数近くが数年以内に離職し、人手不足が続いていた。社長の沖本賴政氏は「人手不足から従業員の負担が増え、過重労働により従業員のモチベーションが低下するという悪いループを断ち切りたかった」と取組の理由を話す。これまでも、ユニフォーム刷新や事務所の床の補修など職場環境の改善を行ってきたが、ワークライフバランスを実現できる体制をつくって採用に生かしたいと、2019年に社長を含めた全部署からメンバーを集めた推進委員会(7~8人)を結成。従業員アンケートを基に、「有休取得推進」「残業時間の削減」「職場環境の整備」の3つをメインテーマに掲げ、具体的な取組内容を検討した。

主な取組と工夫点

集金方法や収集ルートを見直し、業務効率アップ

kyoeibisou_02.jpg夕方に開店する飲食店などの集金業務のため、営業担当者の残業が常態化していた。そこで、既存の顧客に対して銀行振込や口座振替への切り替えを依頼し、集金先を48%削減。営業部の藤原照久氏は「顧客フォローなど他の業務に時間を使えるようになりました」と話す。また、収集ルートの効率化のため、「午後6時以降」、「午前10~12時」など収集時間の指定がある取引先に対し、要件の緩和や撤廃を依頼。 働き方改革に取り組んでいることを伝え理解を求めたところ、いずれも反発はなかったという。「数十年前に結んだ契約内容を基に集金方法や収集時間を決めていたが、お客さまも当時と状況が変わっていて、快く『良いですよ』と言ってくださるところがほとんど。当たり前を疑うことの重要性を改めて感じました」と社長の沖本氏。そのほか、2年前からタブレット端末を取り入れ、収集ルートの伝達に活用。総務部の間口歩氏は「地図をコピーし、注意点などの手書きメモを付けて収集員1人1人に渡していた以前と比べ、事務負担を大幅に軽減でき、ペーパーレスにも一役買っています。夜勤や早朝勤務の従業員への伝達も漏れなくでき、助かっています」と話す。

スライド勤務や部署を越えた助け合いで残業時間削減・有休取得促進

kyoeibisou_03.jpg午前8時~午後5時の就業時間の枠を取り払い、1時間早く出勤して1時間早く退社する、2時間残業したら翌日2時間早上がりするなどを認めるスライド勤務制度を2020年春に導入。子どもの送り迎えや通院などで活用されている。 ノー残業デーも始め、一人一人が効率的な時間配分を意識するように。 部署の垣根を越えた助けあいも強化し、ごみ収集員の欠員を内勤や営業メンバーでカバーするほか、法改正などで書類作成業務が増えた事務員の負担軽減のため、見積書などの作成業務を営業担当に移すなど業務分担の見直しを行った。また、本社と山田リサイクル工場(広島市西区山田町)それぞれで全員の有休取得状況を張り出して情報を共有。計画的な取得へ、互いに協力し合う体制を整えた。

人材確保へ若手の待遇改善や従業員紹介制度の導入

kyoeibisou_04.jpg以前は新人とそれ以外の従業員との間の月収差が大きく、待遇差への不満などから離職する新人が多かった。そこで、2019年に手当制度を変更し、入社すぐの従業員にも月4万円の職制手当が付くようにした。また、入社希望の人材を紹介した従業員に1年間毎月1万円を支給する従業員紹介制度も始め、これまでに4人が同制度で入社した。勤務実態などを知った状態で入社するためミスマッチが少なく、紹介した従業員による手厚いケアもあって定着につながっている。そのほか、キャリアアップ支援のため、2019年に収集車を運転できる中型免許の取得支援制度を開始。それまで自己負担だった教習費用などを会社が全額負担している。

仮眠室やトレーニングジムで健康後押し

kyoeibisou_05.jpg24時間体制でごみを収集する業務性質上、夜勤担当者の休暇取得時に日勤の従業員に通常勤務のあと夜勤に入ってもらうことがある。以前は夜勤までの数時間を喫茶店などで過ごし、充分に休めないまま働くケースが多かったため、2年前、山田工場敷地内に一人分のベッドがある仮眠室を新設した。誰も使っていなかった浴場も改修し、「共栄温泉」と名付け、雰囲気を演出するのれんや浴槽周りの石飾りを設けた。急な雨で濡れたときや汗を流したいときなどに活用されている。重いごみの運搬や頻繁な車の乗り降り、中腰での作業など、腰痛や捻挫を患いやすい職業柄、従業員の 健康管理に寄与したいと、同工場にウエイトトレーニングマシンなどがあるジムも設けた。1年半ほど前から順次台数を増やし、プロトレーナーによる講習も実施。従業員が仕事の合間などに活用しており、けがをしにくい体づくりに一役買っている。

取組の中で苦労したこと ~労働時間至上主義を覆す

kyoeibisou_06.jpg「長時間働くべき、休むのは悪という昔ながらの考え方が皆どこか頭の中にあり、その意識を変えることが一番大変でした」と推進委員会メンバーで経理部主任の沖本尚之氏。そこで、所属長らの写真と共に「休めゆうたら休まんかい」、「ノー残業デイ?上等よ」などのキャッチーなコピーのポスターを作成し本社や工場のいろいろな場所に掲示したほか、会議などで継続的に呼びかけた。

取組の成果 ~業務効率アップし、残業時間削減

kyoeibisou_07.jpg集金・収集ルートの見直しをはじめとする業務効率化やスライド勤務の浸透で残業時間の削減に成功し、2019年度の月平均25時間から20年4~8月は同17時間に。有休取得状況の可視化や従業員同士の声かけで有休取得も進み、2018年度の年平均2日から翌年度には7日になった。「待遇改善やワークライフバランスの向上で求人への応募数や入社後の定着率が大幅にアップ。2019年8月からの1年間で従業員が12~13人増え、現在は募集を停止しています」と社長の沖本氏。

課題や今後の目標 ~取組継続し、業界のイメージ変えたい

kyoeibisou_08.jpg若手に続き、中堅・ベテラン従業員の給与体系の見直しを進めている。主任の沖本氏は「職責、能力や担当業務に応じた人事評価制度を構築し、モチベーション向上につながるより公平な制度を2020年度中に確立したい。複合機や自動集計のタイムカードなども取り入れ、より一層の業務効率化を図っていきたい」と話す。社長の沖本氏は「ごみ収集は生活に欠かせない重要な仕事ですが、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)のイメージで敬遠されがち。働きやすい職場づくりや近年注目されているSDGs(持続可能な開発目標)の取組を続けることで、誇りややりがいを持って働ける環境をつくりたい。当社や業界に対するイメージを新しい3K(きれい・かっこいい・志が高い)に変えていきたいですね」と将来を見据える。

従業員からの評価

総務課
虫明 隼人課長

kyoeibisou_09.jpg業務効率意識の高まりで退社時間が早まり、自分の時間を持てるようになったことで、気分をリフレッシュして仕事に臨めるようになりました。従業員の定着で休みを取りやすい環境が整い、本社・工場ともに社内の雰囲気が格段によくなったと感じています。

取材日 2020年9月