働き方改革事例

社内制度の拡充で働きがいのある職場を実現
働き方改革を通じ、人財採用や従業員の成長につなげる

株式会社シンコー

  • 製造業
  • 広島市
  • 301以上
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認定マーク
所在地 〒732-0802 広島県広島市南区大州5-7-21
URL http://www.shinkohir.co.jp
業務内容 陸舶用各種ポンプ、蒸気タービン、各種省エネ自家発電プラントの設計・製作
従業員数 502人(男性443人、女性59人)

(2020年10月時点)

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  • ノー残業デーや有休カードで残業削減・有休取得の機運を醸成
  • 設備投資やシステム導入を積極的に実施し、業務改善
  • 自己申告制度やメンター制度の導入で人財育成に注力
  • シンコー祭りや社員旅行で社内コミュニケーションを活性化

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取り組んだ背景 ~働きやすい環境の整備で、人財確保と従業員の成長に期待

shinkoh_01.jpg1938年創業で世界トップシェアを誇るポンプ・タービン専門メーカー。1960年発足のシンコー労働組合を中心に早くから組合員の声を改善に生かし、働きやすい環境の整備に取り組んできた。経営管理本部総務部人事課課長の平川智一氏は「働き方改革関連法案の施行をきっかけに、残業時間や有給休暇の取得など、働きやすい環境の整備をより意識するようになりました。国内では少子高齢化による労働力人口の減少が予想されており、将来の働き手不足が懸念されています。実際に2010年頃までは地元国立大学からの新卒採用ができていましたが、徐々に難しくなってきています。持続的な成長には優秀な人財の確保が不可欠です。働きやすい環境の整備を加速することで、より多くの人財をひきつけ、同時に従業員の成長も促していきたい」と取組の背景を話す。

主な取組と工夫点

ノー残業デーや有休カードで残業削減・有休取得の機運を醸成

shinkoh_02.jpg1日2時間を超える残業に事前申請制度を設定しているほか、毎週金曜日をノー残業デーに定め、定時の午後4時45分に退社するよう促している。過去には制度が思うように定着せず、定時を過ぎても会社に残っている人がいないか、人事課が見回り確認する時期もあったが、継続的な声かけなどから次第に定着してきたという。 加えて、有休の取得促進に向け、2006年から管理職を除く従業員は6日間の取得を義務化、従業員には取得がある程度根付いていたが、管理職には取らない人が多く、取りにくい雰囲気も漂っていた。平川氏は「管理職にはそもそも有休を取るという発想がありませんでした」とこれまでの状況を話す。そこで年間5日間の取得計画をあらかじめ定める制度を設けたほか、その年に取得しなければならない有休日数や取得状況などが記載されたオリジナルの有休カードを各自が携帯することで取得推進のための機運づくりを行っている。その結果部下だけでなく上司も含め、会社全体として休みを取りやすい雰囲気が醸成されている。

設備投資やシステム導入を積極的に実施し、業務改善

shinkoh_03.jpg残業削減や有休取得促進の取組に加え、10年以上前から各部署で毎月、コスト削減などの目標を掲げて業務改善に取り組んでいる。その一環で、産業用ロボットや工作機械などの設備投資やシステム導入も積極的に実施。経営管理本部総務部人事課主任の樋口健一郎氏は「機械導入時には生産技術部と機械を実際に動かすオペレーターがしっかりコミュニケーションをとりながら最適な生産ラインを作っています。導入機械に関する講習会の受講費用も会社で全額負担をするなど、従業員の能力開発にも力をいれています。2019年には勤怠管理を手書きからデータ管理に移行し、より詳細な残業の実態把握にも努めています」と取組を話す。こうした取組がうまく作用し、売上高が400億円を超えた2008年には月の残業時間が70時間を超える従業員が多数いたが、過去最高の売上を記録した2016年には、月の残業時間が70時間を超える従業員はほとんどいなかったという。

希望キャリアの自己申告書やメンター制度の導入などで人財育成に注力

shinkoh_04.jpg2014年に実施した従業員アンケート結果で、人事に関する取組の強化が必要と判断、2015年に人事課を立ち上げた。それまで労務課が行っていた業務を受け継ぐ形で人事課に組織変更し、技能の伝承や多能工化を目的としたスキルマップの作成など、人財育成により注力するようになった。2017年頃からは入社3年目、5年目、10年目、15年目の節目に職務内容を振り返る自己申請制度の充実化を図っている。自己申告書の記載内容を基に本人と上司で面談し、さらにその後、その上司と人事課とでも面談を行う。面談を通して記載内容を人事に反映させることで、本人の希望が通りやすくなり、モチベーションの向上につながっているという。2018年からは、安心して働いてもらいたいとの思いから新入社員向けに仕事やプライベートの相談ができる1対1のメンター制度を設けている。新入社員だけでなく、メンターになった社員の成長にもつながっているという。

シンコー祭りや社員旅行で社内コミュニケーションを活性化

shinkoh_05.jpg自社開発、一貫生産を行う上で社内のコミュニケーションを重視している。シンコー祭りや社員旅行、新入社員研修、カープ観戦などの社内行事や野球、テニス、卓球などのクラブ活動を通じて社内のコミュニケーションの機会を作ることで、風通しの良い職場環境づくりにつなげてきた。平川氏は「新型コロナウイルスにより対面での活動が制限される中、新たなコミュニケーションの取り方なども検討していきたい」と話す。

子育て世代に優しい時短勤務制度を拡充

子育てをしながら働き続けることができるよう、2019年にそれまで3歳までだった育児短時間勤務制度の適用を小学校入学前の3月31日までに延長した。午前8時~午後4時45分の勤務時間を1日2時間まで短縮できる制度で、男性も利用可能。2020年10月現在で6人が利用しており、時間の都合に配慮してもらえる働きやすい職場だと社内や就活生の間で評判が広まっているという。

取組の中で苦労したこと ~メンター制度がストレスに

メンター制度の導入時には新入社員とメンターとの性格が合わず、互いにストレスを抱えてしまうケースもあった。そこで、上司や人事課が間に入りながら関係改善に努めたほか、2020年からはメンターの研修会を実施。相手の気持ちに寄り添い、考えを尊重することの大切さなど、メンターとしての心得を学ぶ機会を設けている。平川氏は、「今年始めたばかりですが、今後もこの取組は継続していくつもりです。」と話す。

取組の成果 ~従業員定着率の向上や育休、育児短時間勤務制度の利用増加

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早くから働きやすい職場環境の整備を進めていたため、大卒従業員の離職はここ10年間で71人中2人と高い定着率を誇る。10年前に比べて育休取得や育児短時間勤務制度の利用実績も増えてきており、ワークライフバランスの取れた多様な働き方を実現している。

課題や今後の目標 ~女性が活躍できる職場へ

shinkoh_07.jpg経営管理本部総務部人事課の元山美沙氏は「女性活躍の取組ではまだまだ改善の余地があります。例えば、5年間の海外赴任などの辞令は女性に出しづらいといった理由で、これまで女性管理職がゼロの状態でした」と話す。この課題を解決すべく、まずは、これまで男性社員のみが行ってきた会社説明会や工場見学での説明など、人事課の仕事を中心に女性活躍の場を広げ、新たなロールモデルづくりを進めているという。平川氏は「従業員が経営理念のもと、トップのメッセージに共感し、何のために働くのかを理解し、自己成長や社会貢献を実現できる組織にしていきたい」と意気込む。

従業員からの評価

経営管理本部総務部秘書課
石原 早織 氏

shinkoh_08.jpg毎週金曜日のノー残業デーや有給休暇取得などでプライベートの時間も多く、ワークライフバランスが取れていると感じています。アットホームで時間管理もしっかりしている会社です。上司や先輩が優しく、働きやすい環境と感じています。入社3年目の自己申請制度でもっと成長する機会がほしいと上司に伝えたら、勉強カリキュラムを考えていただき、モチベーションアップにつながりました。現在、人事課が中心となって女性の活躍の場の提供に取り組んでおり、今後もっと社内の環境が整備されていったら良いなと思います。

取材日 2020年10月