働き方改革実践(認定企業)取組企業事例一覧

企業理念の浸透が誇りと働きがいをつくる
奨学金返済支援で新規雇用も好調

山本自動車工業株式会社

  • サービス産業
  • 神石高原町
  • 1〜30
  • 推進体制(経営者)
  • 休暇取得の促進
  • 多様な人材の活躍
  • 育児・介護・治療と仕事の両立
認定マーク
所在地 〒720-1525 広島県神石郡神石高原町上2617
URL http://www.ltsy.co.jp
業務内容 自動車販売、自動車整備・修理、自動車保険・損害保険代理店、企業情報誌の発行
従業員数 7人(男性5人、女性2人)

(2020年9月時点)

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  • コミュニケーションを主軸にした経営
  • 環境整備で自発性を醸成
  • クラウド導入で全情報を視覚化
  • 奨学金返済支援プログラムの導入で採用に効果

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取り組んだ背景 ~従業員にフェアに向き合える会社へ

yamamotojidousya_01.jpg神石高原町の美しい山あいに会社を構える。高速道路も鉄道も通っていないこの町で暮らす人々の生活を、まさに足元から支えてきた地元企業だ。2001年に先代から経営を引き継いだ代表取締役社長の山本宰士氏は「就任当初から『純粋に良い会社をつくりたい』という思いで経営に取り組んできた。『働き方改革』という言葉がよく聞かれるようになり、どういう意味なんだろうと興味を持ち、3年ほど前にセミナーを受けました」と取組を始めた当時を振り返る。自動車業界では顧客サービスのために休日返上で働き、働き方改革に消極的な企業が多いという。同社でも有給休暇申請の書類を出す仕組みもなく、「言いにくいから、結局取らない」状況が長く続いていたという。「でも、それは経営側のずるさでしょう。まるで、取りにくくして取らせないようにしているように見える。従業員の皆さんにきちんと仕事をしてもらうなら、経営陣もきちんと堂々とした経営をしなくてはいけない」と山本氏。「従業員と経営者がそれぞれフェアに仕事に向き合える会社」を目指し、改革を進めた。

主な取組と工夫点

コミュニケーションを主軸にした経営

yamamotojidousya_02.jpg顧客に「寄り添う」コミュニケーションを大切にしており、従業員同士のほか、社長と従業員のコミュニケーションにも細やかな工夫を重ねている。山本氏は普段から意識的に従業員に話しかけるように努めているほか、毎月全従業員と面談を実施。仕事の話ではなく、体調や家族関係などプライベートな話題を共有することも多いという。また、情報共有のミーティングを朝・昼・夕と3回行うことで、チームとしての結束を強化。週1回の方針共有勉強会では、経営計画や経営理念を体現する書物などを全員で声に出して読む「読み合わせ」を行っている。山本氏の解説の後、それぞれが感想や意見・質問を述べていくというスタイルを採り、「価値観の共有だけではなく、思考プロセスの共有」を行っている。 「経営理念・計画を目で見えるようにしたい」という思いから、2020年には社員必携のポケット型手帳として編さん。勉強会や朝のミーティングなどで声に出して読み、その意味について語り合う場を設けることで、従業員に経営理念を理解してもらえるようにしている。

環境整備で自発性を醸成

yamamotojidousya_03.jpg働き方改革のセミナーを受けた際、「いわゆるカイゼンが働き方改革へとつながっていることに驚かされた」という山本氏。仕事そのものを「面白く、楽しく」そして効率よく行ってもらうことが働きがいの一助となると考え、昨年、工場・店舗・事務所を大幅に改装した。修理内容の確認などで1日に何度も工場と事務所の行き来が必要なため、大きなディスプレーをバックオフィスに設置。遠くからでも見える大きな文字で修理内容などを表示したことで、移動時間を短縮することに成功した。また、立ったまま会議ができるデスクの導入や離れた位置から立ってパソコンを操作できる位置へのキーボード配置なども行い、事務所内のスペースが広がったことで「人の動き」がスムーズになり、ストレスなく、かつ効率的に働けるようになった。 また、整理・整頓・清潔・礼儀・規律の5項目を整えることで生産性の向上を目指す「環境整備」の手法も採り入れ、毎日同時刻に15分間、決められた担当箇所を全従業員で掃除。決められた箇所の掃除は数分で完了するため、従業員が「ゴミ箱を壁に掛けたり、数を減らしたりして床掃除を楽にしよう」、「お客さまが通るショールームが汚れないように靴をきれいにしたり、バックヤードを通るようにしよう」などと自らすすんで改善案を考えるようになったという。「環境整備を始めてから、従業員の『(問題に)気付く力』、『考える力』が確実にアップ。成長を日々感じています」と山本氏。店舗内のテーブルに座席を置く場所をマークしたり、カタログをそろえて陳列できる書棚やファイルが取り出しやすい棚などを制作したりと、さまざまな工夫が生まれ、生産性の向上にも一役買っている。

クラウド導入で全情報を視覚化

それまで日報や顧客情報は紙面だったが、担当従業員が見るだけで情報共有することはなく、担当がいないと仕事が進まない状況にあった。そこで2020年にクラウドサービスを導入。クラウドで互いの仕事状況、来客情報やサービスのスケジュールなどを全員で共有できるようになった。1日3回のミーティングの開始も相まって、情報共有がスムーズになり、以前は時々起こっていた情報の漏れもなくなり、煩雑だった顧客情報の記入・共有もスピーディーになった。

奨学金の返済支援プログラムの導入で採用に効果

yamamotojidousya_04.jpg指定の整備士養成専門学校に入学し、同社に入社する意思のある人を対象とした奨学生支援プログラムを2016年に発足。進学前の場合は入学金と学費分を無利息で貸すほか、奨学金を借りている場合は返済原資を給与に上乗せして返還を支援する。既に制度を活用して入社した従業員もいる。全国的に整備士のなり手不足などもあり2016年~2018年にゼロだった採用が2019年には2人に増えた。中山間部として若年人口の流出問題を抱える地域課題の解決にもつなげている。

取組の中で苦労したこと ~日頃から体感させ、理念を「腹で」理解してもらう

yamamotojidousya_05.jpg「人間の価値観というのは、大人になったらそうは変わりません」と山本氏。それゆえ、会社の理念や経営方針について従業員に浸透させるために時間を要したという。例えば、来店客の車が見えたら店外に出て出迎えるというのは同社の「寄り添う」コミュニケーションのひとつの体現だが、これを日々指導することはしない。日常の対話、社長の姿勢、ミーティング、勉強会などさまざまなアプローチで社長の思いや理念を共有することで、その行動がなぜ大切なのかを「腹で」理解してもらったという。

取組の成果 ~コミュニケーション機会の増加が従業員の積極性生む

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「良い道具を使って、良い情報交換をして、良い作業をする。そうすると自然と物事がうまく進みだして、当然仕事も面白くなる」と山本氏は話す。経営理念を共有する勉強会やミーティングなどを通じ、互いの意見を出し合うことに慣れたことで、イベントや定期的な地域の清掃活動など従業員側からの提案が次々と出てきており、積極性の向上につながっているという。

課題や今後の目標 ~地域への貢献が企業をつくる

yamamotojidousya_07.jpg山本氏は地域に根ざした企業として地域の顧客を大切にする方針を打ち出す。地元への就職を後押しするため、20年からは地元企業の魅力を伝える情報誌の発行事業も始め、地域貢献に一層力を注ぐ。「こういう地域ですから、自宅が農業に従事しているなど、『週末は休日』ではない従業員がほとんど。過疎化の問題もある。神石高原で暮らすプライベートの『ライフ』が気になっていたら、会社で良い仕事はできません。『ライフ』を心配の無いように整えるところも、弊社が担っていくべき部分だと思っています」と将来を見据える。

従業員からの評価

お客様係
山下 千夏 氏

yamamotojidousya_08.jpg介護職からの転職で2003年に入社しました。個人面談は原則、「仕事の話は禁止」とおっしゃられるので、なぜかダイエットやプライベートに関する相談など、気兼ねなく話をできる環境があります。社長は図なども書きながら従業員が分かるまで諦めずに教えてくれます。そのおかげで会社の経営理念や方針を心から理解でき、自分の仕事に誇りを持って働けています。1日3回のミーティングを行うようになってからは従業員同士の意見交換も活発になり、イベントのアイデア出しでは紙いっぱいに付箋でアイデアを貼り、「検討して下さい!」と社長に提出したりしています。

取材日 2020年9月