働き方改革事例

あらゆるデータをデジタル化
現場ありきの部署も柔軟な働き方を実現

渡辺化学工業株式会社

  • 製造業
  • 広島市
  • 31〜100
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所在地 〒730-0853 広島市中区堺町2丁目2番5号
URL https://www.watanabechem.co.jp/
業務内容 研究用試薬の製造販売など
従業員数 計42人(男性14人、女性28人)

(2022年6月時点)

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 ICTを活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現する「テレワーク」。広島県は、感染対策だけではなく、個人のライフスタイルに応じた柔軟で自律した働き方を普及するために、県内企業向けにテレワークに関する導入支援策を展開しています。この連載は、テレワーク導入事例5社と各社の導入を支援した専門家に取材し、導入の利点やポイントなどを紹介します。渡辺化学工業株式会社 渡邉路維社長に取組の背景やポイントを伺いました。

テレワークに取り組んだ背景は。

watanabe_02.jpg 社員の6割強を女性が占め、以前から女性社員の要望に応える形で育休復帰前の在宅勤務を一部認めていた。しかし、ある社員が子どもの通院で頻繁に休暇を取らざるを得なくなり、それを理由に退社も検討する事態に陥った。これをきっかけに、さらに踏み込んだテレワーク導入の検討を始めた。

どんな取組をしていますか。

watanabe_07.jpg 初めに、全部署で業務の洗い出しを行った。当社は製造現場があるためテレワークは難しいだろうと考えていたが、この洗い出しの作業により、デジタル化すれば遠隔地からでもできる業務があること、さらには業務効率までも高められる可能性が見えてきた。例えば、研究開発部や品質管理部は文献調査や実験記録・手順書作成、総務部は見積書・納品・請求書作成、包装部は秤量(ひょうりょう)や包装作業以外の手順書作成、品質保証部は原則全てにおいて業務のデジタル化が可能であることが分かった。

watanabe_05.jpg 次に、場所を問わずデータにアクセスできる環境づくりのため、デジタル化に取り組んだ。手書きしていた実験・分析ノートは、社内でExcelベースのフォーマットを製作し完全に電子化。紙のタイムカードを使用していた勤怠管理はクラウドサービスの活用に切り替えた。また業務の進捗管理にはドラック&ドロップで直感的に操作できるシステムを導入したことで、スピードと分かりやすさが格段に向上した。さらに会社にいる社員とのコミュニケーションの頻度を落とさないようにチャットシステムも導入した。このように一つ一つ課題を解決していき、2021年秋には、会社の大半の情報に社外からアクセスできる体制に生まれ変わった。

watanabe_04.jpg コロナ禍での行動制限が出されていない現在でも、総務部と包装部の3人がテレワークを活用している。1日中テレワークをすることが難しい場合は、1日のうち数時間会社に出勤し、残りを在宅で働くというハイブリット型の勤務を実施している。今後も社員の希望に沿った多様な働き方を認め、社内に広げていきたいと考えている。

取組に当たってのポイントは何ですか。

watanabe_06.jpg デジタル化のためのシステムやサービスの導入については大きな方向性は私が示したものの、実際にそれを使う社員にシステムを選んでもらうことにこだわった。費用が多少高くなっても納得して使ってもらえることが大事だと考えたためだ。
 また社内規則の整備には時間をかけた。就業規則やテレワーク勤務規定、フレックスタイム制の労使協定書など、社員間に不公平が生まれないように細かく内容を詰めた。さらに、サイバー攻撃に備え、通常のセキュリティー規定以外にテレワーク中のセキュリティー規定も新設した。規則の整備には苦労する点も多かったが、専門家のアドバイスを受けながら緻密に設計できたおかげで、現在は安心して運用できている。

導入後の変化・メリットを教えてください。

 さまざまなデータに社外からアクセスできるようになり、情報共有のスピードが向上している。中区の本社と安佐南区の工場との連携や出張中でも出社時と変わらない連絡や相談ができている。
 また結婚・出産・介護などが生じても柔軟に働き方を選択できるようになったことで、離職率が低下しているほか、採用面でも手厚い待遇が求職者に少しずつ認知され、応募が増えている。

社員の声

総務部
田口 沙耶さん

watanabe_03.jpg 子どもの看護のため仕事の途中で保育所に子どもを迎えに行くことが頻繁に起き、このままでは働き続けられないと思っていました。今はテレワークの利用で子どもの様子を見ながら自宅で安心して働くことができ、会社に感謝しています。

取材日 2022年6月