[特集]全国の女性活躍先進事例

「女性管理職を2020年に50%」の実現は目前。今はその先を見据えて

イオンリテール株式会社

  • 卸売業・小売業
  • 広島市
  • 301以上
  • 方針・取組体制
  • 両立・継続支援
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
  • 職場風土
法人名 イオンリテール株式会社
所在地

【中四国カンパニー所在地】

広島市南区段原南1-3-52

【本社所在地】

千葉県千葉市美浜区中瀬1-5-1
URL

https://www.aeonretail.jp/company/index.html

業務内容 総合小売業であるイオンリテールは、イオングループの中核企業として、400店舗を超える国内の本州・四国の「イオン」「イオンスタイル」を経営している。食品をはじめ、衣料品や生活用品などのライフスタイル商品をそろえてお客様のくらしを総合的にサポートしている。
従業員数 84,732人(2019年2月末現在)
女性従業員比率 42.2%
女性管理職比率 29.0%(2019年5月1日時点)

(2019年10月現在)

県外に本社を置き、広島県で事業展開する女性活躍先進企業に推進のヒントを伺いました。

2年連続でなでしこ銘柄として選定され、小売業界における先進企業といえるイオングループ(イオン株式会社)。
そのひとつである、イオンリテール株式会社の中四国カンパニーの状況を取材。

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  • イオングループ全体で女性活躍推進の目標を具体的に設定
  • 中四国カンパニーではワークショップを開催し、意識から改革
  • ライフイベントにも柔軟に合わせる風土を醸成
  • ロールモデルも経営層への道筋までしっかり

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1.イオングループ全体で女性活躍推進の目標を具体的に設定

イオンリテール株式会社(以下、イオンリテール)の親会社となるイオン株式会社(以下、イオン)は、2013年5月の株主総会で、「女性管理職比率を2016年に30%、2020年には50%にする」という目標を掲げた。イオンでは、前身となるジャスコの設立当時から「性別、国籍、学歴、出身企業、年齢等によって差別しない」という人事ポリシーがある。しかし、「イオングループの会社の中には、入社段階では女性比率が5割なのに管理職への女性登用は1割という場合もあり、生産性を低下させる大きな要因になっている」とのトップの認識から、本来あるべき姿として、この高い目標を掲げたのだ。

そして同年7月CEO直轄機関として、グループの司令塔となる「ダイバーシティ推進室」を新設し、女性従業員に関する数値や意識を含めた現状調査と分析を行った。すると、「長時間労働による仕事と生活の両立への不安や、経験・知識が足りない不安などから、管理職になりたくないと考える女性が多い」といった結果を得た。また、イオンは日本国内外300社以上の企業で構成されるが、過去の女性活躍についての施策は、グループ本社の人事で、男性中心で行われてきたのでうまくいかなかったのでは、と分析した。それを変えるため、グループの各社がそれぞれ活動することとし、営業など他部門も巻き込み、女性を中心とした取組に変えることにした。

しかし、大きな組織の中で変革を起こすためには、横のつながりが欠かせない。そこで、グループ各社の取組を(1)加速させること、(2)共有すること、そして(3)責任者やリーダーのネットワークを構築することを目的に、本社主導の3つの「ダイ満足」活動を実施している。

1つ目の「"ダイ満足"サミット」は、イオングループ各社のダイバーシティ推進責任者が一堂に会して情報交換をしたり、横の連携を作ったりする場。2014年4月にキックオフし、以来、年に4回開催されている。2つ目の「"ダイ満足"カレッジ」では、若年女性の退職者を減らすべく25歳前後の女性を対象とした「キャリアデザインコース」、女性の上位職への意欲向上を目指した「キャリアアップコース」と、現管理職の意識変革を目的とした「マネジメントコース」を開講し、グループ共通の課題をグループ全体で学び合いながら、ダイバーシティを進めている。3つ目の「"ダイ満足"アワード」では、年に1回各社の事例を発表、表彰していくことで、グループ各社の良い事例の共有や競争を推進。ダイバーシティ経営企業が集まるグループの実現に向け、推進力を高めている。その結果、グループ全体で2013年度において15%であった女性管理職比率が、2018年度は28%と着実に伸びた。

2.中四国カンパニーではワークショップを開催し、意識から改革

今回は、イオングループの中核企業で総合スーパーを運営する、イオンリテールの中四国カンパニーの状況について話を聞いた。

中四国カンパニーは、中国地方の5県と四国地方の4県でイオン及びイオンスタイルの総合スーパー35店舗を運営している。同事業部の人事総務部部長である肥野純子さんは、「イオンリテールにおいては、ダイバーシティの責任者を各カンパニーに設置してアクションすることとなっています。(肥野純子さんの記事はこちら)中四国カンパニーにおいても、確実に女性管理職比率は伸びており、『女性管理職比率2020年50%』の目標は達成できると考えています」と力強く話す。

図1 イオンリテール中四国カンパニーにおける女性管理職比率の推移

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※1出典:総務省統計局(2018年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12・13回改定日本標準産業分類別就業者数」
※2出典:厚生労働省(2019年)『平成30年度雇用均等基本調査 図4 産業別女性管理職割合(企業規模10 人以上)』

しかし、「卸売業・小売業」全体の課題として、女性従業員比率が51.7%(※1)と高いにもかかわらず、女性管理職比率が12.7%(※2)と低いことが挙げられる。総合スーパーにおいても、長時間、早朝・深夜労働、土日出勤といった状況が発生しやすいなど、家庭との両立が難しく、管理職を望まない女性が多いという課題が考えられる。よって、管理職であってもプライベートと両立して働きやすいことは、女性管理職増加の前提条件だろう。

イオンリテールでは、年次有給休暇の取得促進(20日間の長期も可能)や残業時間の抑制を行っている。さらに管理職にとっても柔軟に働けるような体制にするとともに、人材を育成するために「店長代行」といった、上位者の業務の補佐役を置いている。

図2 店舗における管理職へのステップアップと各補佐役のイメージ

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2017年3月まで、イオンみゆき店の店長を務めていたという、教育担当部長の上沖敬子さんは、「店長は一店舗の経営者であり、重要な責務を負っています。しかし、7時~24時の営業時間すべてを一人でカバーできませんので、店長がいない時間帯には店長代行を配置し、シフト表においても明確にしています。店長代行に店長専用携帯を渡し、その時間帯は『店長』として業務を遂行してもらいます。この制度のおかげで、適切な労働時間となると同時に、店舗課長から店長へのステップアップもしやすくなったと思います」と言う。

しかし、管理職としてのファーストステップとなる「店マネージャー」や次の「店舗課長」の壁というのが、イオンリテールでの課題だそうだ。管理職登用試験の女性従業員の受験率は約30%と、男性の50%と比較して少ないという。そこで中四国カンパニーでは、「キャリアビジョンワークショップ」を開催し、管理職を目指す女性従業員の受験者数を増やすことを目指している。

昨年度開催した第1回目では、30代のマネージャーやリーダーを対象とした2日間の宿泊研修を行った。先人のこれまでのキャリアについて話を聞いたり、各自のライフイベントを想定しながらキャリアビジョンを描いたりしていく内容だ。今年度は40代のマネージャーを対象とした1日研修を開き、「チャレンジで自分も会社もハッピーに」といったメッセージを伝え、さらなるステップアップに向けて背中を押した。これらの研修を通して、社内ネットワークを構築でき、キャリアアップにポジティブになってもらえるという効果を感じたため、今後も継続的に実施予定という。

3.ライフイベントにも柔軟に合わせる風土を醸成

結婚、出産といったライフイベントを迎えた後は、キャリアアップする上で家族やパートナーといった周囲の理解と協力が欠かせない。

イオンでは、2017年8月から(1)全国転勤を伴う「N(ナショナル)区分」、(2)支社のエリア内に限って転勤がある「R(リージョナル)区分」、(3)勤務地を限定し、転勤なしで働く「L(ローカル)区分」の3つの採用形態から、各自が選べるようにした。L区分を選べば、自宅から1.5時間以内で通勤できる店舗への配属が行われ、店長へのキャリアアップを目指すことができるため、49.0%と女性従業員の約半数が選択している。男性従業員も近年はライフステージによって、N、R、Lを変更するため、L区分が増加傾向にあるそうだ。

図3 イオンリテール中四国カンパニーにおける男女別エリア区分の選択状況納品データ図3.jpg

採用時の男女比がほぼ半々であることも手伝ってか、イオングループ内のカップルも多いという。現在イオンリテールの労働組合・イオンリテールワーカーズユニオンに出向中の高木けいさんも、夫婦共に近畿カンパニーにある店舗に勤務していたが、2015年に夫婦で広島市内に転勤となった(ペア転勤制度)。そして、2017年の第一子出産後、夫も6カ月育休を取得し、復職後は1時間の時短勤務としているという。

「夫は育休前には店舗マネージャーでしたが、時短勤務することを希望し、復職時に1つ下の等級であるリーダーとなりました。イオンでは与えられた役割に対する成果をきちんと評価してくれるので、希望して時短を選択して一時期ステップダウンしたとしても、また上位にチャレンジすることができます。今は、子育てに時間を取られる時期ですが、将来的には夫婦共にステップアップしていくことを考えています」。

育児部写真1.jpg高木さんは、労働組合の活動の中で「育児部」という育児勤務者同士が交流する活動に力を入れている。育休中や妊娠中、ライフプランを検討中の若手組合員などが参加し、働き方に関する情報共有や、キャリアについて考えるディスカッションなどをしている。

今年の8月には、育児を終えキャリアアップした先輩として、会社から上沖敬子教育担当部長を招いて交流会を実施するなど、労使共同で活動を推進している。「今後は、ワークライフバランス部、略して『笑(わら)部』として、育児や介護などの制約を持って働く人だけではなく、多様な組合員の声を集め、仕事でもプライベートでも笑顔が増える活動にしていきたい」と力を込める。このように、イオンリテールでは、ライフワークバランスを重視する傾向にあるといわれる若手従業員にとっても、働きやすく、やりがいがある職場となるよう、制度を整えるとともに、風土を作り出しているようだ。

4.ロールモデルも経営層への道筋までしっかり

イオンリテールの経営層(取締役と執行役員、非常勤と監査役除く)19名中、女性は3名であり、いずれも店舗業務を経ての、いわゆる生え抜き組だそうだ。また、パート従業員から社員登用の機会もあり、さらに店舗管理職として活躍するなど、さらなるステップアップを目指すことができる。

イオンでは、2012年から国内外のイオングループの従業員を対象として「イオンDNA伝承大学」を開き、岡田元也社長などを講師として次世代の経営者を育成しているが、女性も常に一定数参加しているという。2015年には肥野純子人事総務部長も参加し、「岡田元也社長とのディスカッションなどがあり、かなりタフな内容でした。しかし、普段の業務では得られない経験をし、自分を大きく成長させる機会となり、『自らの頭で考え、自ら行動する』ということが受講後の私のテーマとなりました」と振り返る。

このように、イオンでは女性経営層のロールモデルとなる人材もおり、パート従業員からであっても、役員などを目指すことができる環境がすでに整っているようだ。

取材担当者からの一言

2012年に国際通貨基金(IMF)が「女性は日本を救えるか?」といったリポートを出し、C・ラガルド(当時IMF専務理事)さんが伝えた「働く女性を増やせば、日本経済が良くなる」というメッセージに、釘付けになったことを鮮明に覚えている。

「女性管理職比率を2020年に50%にする」との目標がインパクトを与えるイオングループ。取組は2013年から本格化しているが、この頃から女性活躍の重要性を意識し始めた経営者も多かったのではないか。イオンの岡田元也社長も「お客様の多くが女性である小売業で、多くの女性が活躍するほど収益性が上がっていくのは明白」と、述べている(※)。取材したイオンリテール中四国カンパニーにおいても、本社主導であるトップダウンと各事業部のボトムアップの取組とが噛み合って、6年間で着々と成果を上げているようだ。管理職だけでなく、女性役員もすでに活躍しており、まさに先進的な事例であると感じた。

※ 出典:J-win REPORT NO.29 2016March (NPO法人J-Win)

●取材日 2019年10月
●取材ご対応者
イオンリテール(株) 中四国カンパニー 人事総務部 部長 肥野 純子氏
イオンリテール(株) 中四国カンパニー 人事総務部 教育担当部長 上沖 敬子氏
イオンリテール(株) 中四国カンパニー 人事総務部 人事総務部長付 藤原 幸子氏
イオンリテールワーカーズユニオン 中四国グループ専従職員 高木 けい氏