[特集]全国の女性活躍先進事例

「世界的な潮流を強く意識することで、女性活躍も急伸」

マイクロンメモリジャパン合同会社

  • 製造業
  • その他地域
  • 301以上
  • 方針・取組体制
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 職場風土
法人名 マイクロンメモリジャパン合同会社
所在地

【広島工場】 
〒739-0153 東広島市吉川工業団地7-10
【マイクロン·テクノロジ】
8000 South Federal Way, Post Office Box 6, Boise Idaho 83707-0006, USA

URL

マイクロンメモリジャパン合同会社
https://jp.micron.com/

マイクロン·テクノロジ
https://www.micron.com/

業務内容 革新的なメモリおよびストレージソリューションの業界リーダーであるマイクロン。 Micron®、Crucial®、Ballistix®などのグローバルブランドを通じて、DRAM、NAND、NORフラッシュ、3D XPoint™メモリなどの高性能メモリおよびストレージソリューションを提供する。それらはデータセンター、ネットワーク、自動車、モバイル、グラフィックなどの主要な市場セグメントで、人工知能、機械学習、自動運転車などの目覚ましい進化を可能にしている。
従業員数 37000名(※)
女性従業員比率 29%(※)
女性管理職比率

マネジメント層(課長相当)17%、
シニアリーダー層(部長相当)13.5% (※)

※数値はマイクロン·テクノロジ全体。出所「Micron Diversity & Inclusion FY19 Annual Report」

(2019年10月現在)

広島県で事業展開する女性活躍先進企業を訪問!

グローバル企業であり、広島に重要な生産拠点を置くマイクロン。ダイバーシティや女性活躍についての方針や体制、広島工場における具体的な取組などについて取材。

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  • 組織が変わり、社風も変化し、女性の働き方にも影響
  • グローバル企業だからこそ力を入れて取り組むDEI
  • 女性の活躍推進のための国内外での取組
  • DEIセンターの設立と担当副社長の任命で取組を加速

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1.組織が変わり、社風も変化し、女性の働き方にも影響

マイクロンメモリジャパン合同会社(以下、マイクロンメモリジャパン)の主力工場の1つが東広島市の吉川工業団地内にある。遠くからでも一目で分かる巨大な工場棟は圧巻だ。2019年6月に新製造棟が完成し、多くの雇用を創出している。

この東広島市にある工場は、エルピーダメモリ株式会社から2013年マイクロン・テクノロジの傘下となり、現在に至る。

前身会社の半導体部門に技術職として就職し、現在もマイクロンメモリジャパンの広島工場で活躍する間接購買部門マネージャーの松岡美穂さんは、「新卒で入社した当時は、女性技術職の配属先は2つの部署のみに限定されていたようです。また、女性技術職の先輩は、結婚や出産を機にほとんど退職していました。その後会社が統合され、徐々に女性が色々な職や部門で活躍するようになったと感じました。マイクロンメモリジャパンでは、トップが明確にダイバーシティ、イコーリティ&インクルージョン(以下、DEI ※)の重要性を語り、広島工場でも人材の多様化が進み、雰囲気がだいぶ変わりました」と話す。(松岡さんの記事はこちら

※ 人材の多様性を進めるとともに、受容力のある文化を育むこと

2. グローバル企業だからこそ力を入れて取り組むDEI

1978年に設立されたマイクロン・テクノロジ(以下、マイクロン)は、アメリカ合衆国アイダホ州ボイシ市に本社を置くが、事業所や工場は18カ国に及び、約37,000人が従事する多国籍企業だ。グローバルでの事業展開が進み、各地域の顧客、社内のチームメンバーのみならず、社内を超えて展開する地域のコミュニティに対する理解が深まるにつれ、さまざまな文化、経験や視点、豊富なスキルを持ったメンバーがいることこそが、企業のパワーの源であり、国際的な競争を勝ち抜く上での柱となっていることを強く認識するに至り、DEIを推し進めてきた。

マイクロンにおけるDEIの現状を示し、さらなる加速についてのコミットメントを内外に示すため、「Micron Diversity & Inclusion FY18 Annual Report」を2018年11月に初めてリリースした。ここで性別および民族性/人種による多様性の状況を示すデータを明らかにしているが、最大の課題としてシニア層の女性リーダー(部長級の女性管理職)が少ないことを挙げている。また、技術および製造部門に従事する女性が少ないことも課題であり、特に日本の拠点(マイクロンメモリジャパン、およびマイクロンジャパン株式会社)が7%と最も少ない国となっている。

図1 マイクロンのグローバルでの女性に関するデータ

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出所:「Micron Diversity & Inclusion FY18 Annual Report」

3. 女性の活躍推進のための国内外での取組

それらの課題に対しての主な取組として、マイクロン女性リーダーシップネットワーク(以下、MWLN)と科学技術分野における人材育成プログラムであるSTEM教育がある。

まず、MWLNだが、女性の就業継続やキャリア開発を促進していくため、管理職の女性がネットワークを組み、お互いをサポートしたり、後進を支援したりする取組だ。広島工場においても、例えばアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)やリーダーシップに関する研修の開催、毎年3月8日の国際女性デーに行うランチ会、女性新入社員とのランチ会などを実施している。

「日本のマイクロンには広島、橋本(神奈川県)、東京の拠点があり、3,800名以上のチームメンバーがいますが、以前は他の部門同士で女性管理職が交流する機会があまりありませんでした。MWLNの活動を通じて女性リーダー層同士が知り合い、協力し、刺激し合うことができたのは、大きな収穫でした。グローバルでのイベントとしては、2018年10月に『アジアMWLNサミット』が開催され、アジアとアメリカのメンバーが東京に集結しました。私も参加しましたが、シンガポールなど、他国の女性リーダーの迫力に圧倒されつつも、もっとアクセルを踏まねばと、良い影響を受けることができました。広島工場のMWLNメンバーもパワフルと思っていたのですが、まだまだでしたね」と人事ビジネスパートナー、シニアマネジャーの沼田容子氏は笑う。

kore沼田氏写真_IMG_1225.jpg広島工場におけるMWLNの取組の中で特に好評であったのは、女性を部下に持つ男性管理職が女性管理職を囲んでディスカッションした企画だったそうだ。女性従業員が増え、さまざまな部門への配属が行われつつある中、男性管理職が女性部下のマネジメントについて、ちょっとした戸惑いや悩みを持つことがある。そこで、20名程度の男性管理職と10名程度の女性管理職でディスカッションを行い、良いマネジメント事例を共有したりしたそうだ。

次に、STEM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)といった、科学技術分野における人材育成を指す。マイクロンメモリジャパンでも女性技術者が活躍してはいるが、シンガポールが30%であるのに対して日本では7%とまだまだ少ない(図1参照)。そもそも日本では、理系の女子学生が少ないことから、広島工場では、女子高校や大学に女性技術者を派遣して講演をしたり、工場見学に女子学生を招いたりして、科学技術への関心を高める取組をしている。また、マイクロン財団が広島大学のナノデバイス・バイオ融合科学研究所、女性研究者支援プロジェクト、グローバルサイエンスキャンパス・プログラムへの支援として同大学に2018年と2019年に寄付を行い、STEM教育を下支えしようとしている。

「生産設備を拡充した広島工場では、今後3年間でエンジニアリング職を500名以上採用することを予定しており、女性技術者の採用にも力を入れています。マイクロンの日本全体における2018年度から2020年度の採用実績をみると、新卒社員に占める女性の割合は毎年1.7倍ずつ増加し、外国人の割合も1.1倍~1.4倍(2019年度から2020年度の1年で1.4倍)に増加するなど順調な増加傾向にあり、社内の多様化が着実に進んでいます。特に外国人の新卒者は自分の意見をしっかりと発言するので、他のメンバーによい刺激を与えていると思います」と、沼田氏は言う。

4. DEIセンターの設立と担当副社長の任命で取組を加速

4.シャラウンコナー氏写真トリ済.jpg

マイクロンはDEI専属の部門であるDEIセンターを2015年に立ち上げ、クローバルでの取組を強化した。しかし、シニアレベル(部長級)のDEIリーダーはいたが、VPレベル(副社長)ではなかった。そこで、2019年8月、他社で人事やDEIについての実績を持つシャラウン・コナー氏をDEI担当の副社長に任命した。

「私たちマイクロンの最優先事項は、年齢、性別、民族、国籍、宗教に関係なく、すべてのチームメンバーが成長、貢献、進歩する機会を持つ環境を創ることです。 この目的達成のため、私たちは広島において女性のキャリアアップを促進し、そして多世代にわたる労働力を強化していくために懸命な努力を行っています」とシャラウン副社長は力を込める。

マイクロンの最終的な目標は、チームメンバーの構成が私たちの住む世界と同等になることである。例えば現在は女性従業員比率が30%であるが、採用活動を通じて最終的に50%を達成するといったグローバルでの目標を立てた。この目標を達成するために、女性の採用にも力を入れていくという。

マイクロンの製品は、スマートフォンや家電、自動車など身近なものに組み込まれている。誰もが利用するものを作るグローバルな企業であるため、世界に大きな影響を与えていることを理解し、当然やるべき正しい行動のひとつとして、マイクロンはこれからもDEI活動を加速させていく。

●取材担当者からの一言

日本企業から外資へ変わった広島工場で何が起こっているのか知りたいと、意気込んで取材に臨んだ。DEI担当の副社長を置いてまでも、強力に、迅速にやっていこうという点、報告書をリリースして、内外に取組や課題を明確に伝えていこうという点が、非常に参考になると感じた。しかし、女性のネットワークづくりや、男性管理職層への啓発など、今まで取材した県内企業同様に、風土を創り上げていくという地道な取組もやはり必要なようだ。

日本の女性管理職比率は12.5%と、マイクロンが本社を置く米国の43.4%と比べて1/3以下と圧倒的に少ない(図2参照)。

図2 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)

5.図2.png

出所:内閣府「男女共同参画白書 平成28年版」

マイクロン内でも、日本は女性技術者や女性管理職の割合が他国に比べて少ないことが課題であるようだが、東広島から変わってほしいと願う。そして、それをマイクロン内だけでなく、地域に伝播させ、DEIの文化を広島県に根付かせてほしい。

●取材日 2019年10月

●取材ご対応者
MMJ HRBP SR Manager 広島工場 沼田 容子氏
PMO People Program/ Communication Manager 江藤 清花氏
Procurement Manager, Regional Indirect 松岡 美穂氏