[特集]全国の女性活躍先進事例

「女性の活躍が成長の原動力。女性管理職比率85%以上となる環境作りとは」

株式会社 シーボン

  • 製造業
  • その他地域
  • 301以上
  • 能力開発・キャリアアップ支援
  • 登用
  • 職場風土
法人名 株式会社 シーボン
所在地

【本店】東京都港区六本木七丁目18番12号
【メインオフィス】神奈川県川崎市宮前区菅生1-20-8
【広島店】広島県広島市中区本通3-10 本通サザン3F

URL www.cbon.co.jp
業務内容 創業55年目の化粧品メーカー。『美を創造し、演出する』という企業理念のもと、“お客様の肌に最後まで責任をもつ”ために、化粧品の販売だけではなく、全国100店舗以上の直営店「シーボン.フェイシャリストサロン」にて、肌チェックやフェイシャルケアなどのアフターサービスを行うことでお客様に「美」を提供し続けている。
従業員数 1,071名
女性従業員比率 91.9%
女性管理職比率 86.7%

(2019年3月現在)

広島県で事業展開する女性活躍先進企業を訪問!

県外に本社を置き、広島県で事業展開する企業から、女性活躍のヒントを得る企画。女性管理職比率が85%以上であり、役員としても女性が活躍している企業としてしばしば取り上げられる株式会社シーボンの状況を取材。広島店の「輝く女性事例」も必見!

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  • 名実共に女性活躍推進のお手本といえる企業
  • 男性店長から女性店長に代わり、役員にも女性が増えた経緯
  • 多くのエリアに出店しているからこそ、常に社員1人1人の満足度を意識

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1.名実共に女性活躍推進のお手本といえる企業

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「美を創造し、演出する」という企業理念のもと、化粧品の製造・販売を行う株式会社シーボン(以下、シーボン.)。2017年に「えるぼし(※1)」最高ランク(3段階目)の認定、東洋経済新報社の「女性管理職の登用が目立つ会社50社ランキング」において、2017年版と2018年版で第1位、2019年版でも第2位と、3年連続で上位にランクインするなど、女性の活躍について、すでに高い評価を得ている企業のひとつだ。

シーボン.は、店舗、研究や生産部門、本社部門を含め、社員の90%以上が女性である。女性の割合が高い企業であるからといって必ずしも女性管理職の登用が進んでいるわけではないという社会的な課題があるが、シーボン.では、管理職から役員に至るまで、幅広く女性の登用が行われており、女性比率が最も高い「医療・福祉業界」と比べても、多くの女性が管理職へと登用されていることは明らかだ(図1参照)。

図1 シーボン.と医療・福祉業界全体平均の女性活躍に関するデータの比較

図1納品データ.jpg

※2 出典:総務省統計局(2018年)「労働力調査 長期時系列データ 表5 第12・13回改定日本標準産業分類別就業者数」
※3 出典:厚生労働省(2019年)「平成30年度雇用均等基本調査 第8表 課長相当職以上(役員含む。)に占める女性の割合」

女性活躍の先進企業であるシーボン.に、女性が管理職、役員へと進む秘訣や、働きやすい環境の整備に向けた取組についての話を聞いた。

※1 えるぼし認定企業とは
策定した行動計画の届出を行った事業主のうち、女性活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主は、厚生労働大臣の認定を受けることができ、認定マーク(愛称「えるぼし」)を用いて女性の活躍を推進している事業主であることをアピールすることができる。

2.男性店長から女性店長に代わり、役員にも女性が増えた経緯

現在、「シーボン.フェイシャリストサロン」と呼ばれる直営店に勤務するのは100%女性だ。よって、店長も当然全て女性であるが、過去は男性店長の方が多かった時代もあったそうだ。

菅原様ぼかし.jpg「シーボン.の設立当初は訪問販売をしていましたが、1986年に直営店舗での販売に大転換しました。当時は、男性店長が採用、美容サービスの教育や販促、売上管理などをバックオフィスで実施し、女性が店頭で化粧品販売やアフターサービスを提供するという形をとっていました。しかし、女性店長が徐々に増えていきました。」と、直販営業部執行役員の菅原桂子さんは話す。

1990年頃は社会的にも男性管理職が多く、シーボン.でも同様であった中、その当時は店舗の美容社員だった菅原さんも「私は女性で、20代だけど店長をやってみたい」と声を挙げ、キャリアアップしたひとり。今では執行役員になっている。

当時、社長を務めた犬塚雅大氏(現、代表取締役会長兼社長 執行役員)が、性別や年齢、バックグラウンドに関わらず“適任者に仕事を任せた”ことで、徐々に女性管理職が増えていき、現在のシーボン.が出来上がったようだ。

また、早くから女性役員の登用も行われてきた。前社長である金子靖代氏(現、特別顧問)は店舗での販売やアフターサービス、化粧品企画を経験後、2002年に専務取締役、2004年に取締役副社長を経て、2005年に代表取締役社長に就任。そして、社内の女性が長く活躍できる環境整備についてそれまで以上に取り組み、結果としてさらに多くの社外取締役・監査役や執行役員の登用に結びついた。

3.多くのエリアに出店しているからこそ、常に社員1人1人の満足度を意識

「女性活躍は当然といった社風がすでにある中、いかに社員にやりがいを感じてもらい、継続勤務意欲を上げ、優秀な人材を確保するかが当社の課題です」と、人事部ES向上推進室の小泉亮マネジャーは話す。シーボン.では、社員をサポートするさまざまな制度を整備しているが、利用されなければ意味がない。そこで、積極的に制度が利用できるように、お互いをサポートしあう企業風土を創り、社員が満足して働ける会社にするために、2013年12月設置されたのが、ES(社員満足度)向上推進室だ。

6.井上様写真_トリミング処理[1].jpg専任者3名が所属するES向上推進室では、毎年「社員満足度アンケート」により課題を識別している。「例えば、アンケートの結果に基づき、労働環境の改善などを進めると、翌年は新しい項目の意見が増えるなど、常に課題が変化していきます。またアンケートとは別に、エリアごとの状況分析も行い、『定着率が高い』、『昇格者が多い』エリアには、別途インタビューを行い、成功要因を見つけ出します。成績が良いあるエリアでは、普段からエリア長が社員個々の良いところを見つけ、『あなたは会社にとって必要』といったメッセージを伝えていた。これを、他エリアにも共有し、展開するなどしました」と、ES向上推進室の井上舞さんは話す。

また、力を入れているのはさまざまなロールモデルを社内に紹介し、ライフステージをサポートする各種社内制度の利用を促すとともに、キャリアアップについて考えてもらうことだ。シーボン.は全国に100店舗以上展開しているが、自分に合ったロールモデルが身近にいない場合もある。

「例えば、子育て中の『ショートタイム正社員(※4)』、介護中の店長、『ウェルカムバック(復職)制度』で復職した社員など、制度を活用しながらライフステージの変化を乗り越え活躍し続けている社員がたくさんいます。そんな様子を社内に伝えたい、そして自分の輝き方を見つけてほしいという思いで、毎月社内報を通じて情報を発信しています。『いつかは自分も社内報に載りたい!』と言う若手スタッフもいて、うれしく思います」と、井上さんは話し、これまでに130人(2019年11月現在)を社内報で紹介してきたそうだ。

7.社内報画像[1].jpg

広島市内の中心部、中区本通にシーボン.フェイシャリストサロン広島店があるが、新卒社員、ママ社員、元社員のパート社員など、さまざまな働き方や世代のスタッフがいるという。「シーボン.では、成果に応じて適宜評価してもらえるので、一度役職を降りても再度適性があれば昇格するし、子育て中などで一時的にパートという働き方を選択したとしても正社員に戻ることができます」と、店長を務める畑田裕子さんは話す。このように、ライフステージに合わせた受け皿があるのがシーボン.の強みだ。(畑田さんの記事はこちら

また、社員の家族を店舗に招待し、妻や娘、母が実際に働いている姿を見てもらう「シーボン.ファミリー・デイ」を定期的に開催していて、お互いをサポートしあう企業風土創りの一助になっているそうだ。また、社員同士もそれぞれが置かれた環境を理解すると、いたわりの気持ち、助け合いの気持ちが生まれ、支え合える職場、働きやすい職場が実現していくようだ。

※4 ショートタイム正社員とは、週4~5日、1日6時間勤務で正社員として働ける制度。

●取材担当者からの一言

新聞、雑誌等の女性活躍の記事で、頻繁に取り上げられているシーボン.。女性管理職比率が85%以上という高さも目を引くが、一番知りたかったのは、店舗勤務者からいわゆる生え抜きで女性役員を早くから登用している点だ。

その秘訣は、性別や育児等ライフイベントにより勤務時間に制限がある等関係なく、仕事の達成度や能力の発揮度合に応じて公正に評価し、処遇していく人事制度の整備とその運用に努め、「適任者と思われる人に仕事を任せている」に尽きると感じた。最初は男性が店長だったが、次第に女性に代わっていったという点も興味深かった。さらに、介護・結婚や育児といったライフステージや、自分が目指すキャリアなど「なりたい自分」に合わせて柔軟に働き方を変更できる制度が整備され、また活用する風土も醸成されているようだ。そのような環境下で、多くの女性管理職が生まれ、その中から女性役員も登用されていく。さらに、社員の声を集めつつ、時代に合わせて働きやすい環境を細やかに整備している。シーボン.が女性活躍の先進企業である理由が理解できた。

●取材日 2019年11月
●取材ご担当者
直販営業部 執行役員 菅原 桂子 氏
人事部 ES向上推進室 マネジャー 小泉 亮 氏
人事部 ES向上推進室 井上 舞 氏
広島店 店長 畑田 裕子 氏