もちーと ひろしま
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広島銀行木下さんとサポーター対談

キャリアアップは一人じゃできない。職場の上司・同僚・後輩、家族・パートナー等などの周囲と良好な関係性を築き、働く私のサポーターを増やすためにはどうすればいいのでしょうか。この記事では、広島県で管理職として活躍中の「輝く女性」のひとりである木下麻子さん(輝く女性記事はこちら)にフォーカスし、上司・ご家族へのインタビューから、その秘密を探りました。
木下 麻子さん

木下 麻子さん 株式会社広島銀行 人事総務部 担当課長 兼 ひろぎんホールディングス経営管理部 人事総務グループ 担当課長

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木下 雄介さん

木下 雄介さん マツダ株式会社 人事本部 人材開発部 組織開発グループ 主幹

「家族もチームと考え、思いや趣味を共有することでひとつに」

株式会社広島銀行で、女性管理職として活躍中の木下麻子さん。プライベートにおける、最大の理解者・サポーターは、夫である雄介さんだそう。お二人に、大変な時期の乗り越え方、プライベート・仕事も共にうまくやっていくコツについて聞きました。

Q1. 2015年に東京から広島に移住したきっかけは?

雄介さん私の祖母の介護が必要になり、広島県にUターンすることに。妻に相談したら賛成してくれました。

麻子さん東京時代は、私の両親にわざわざ近くに転居してもらい、全面的にサポートしてもらって子育と仕事をやりくりしていましたので、両親を置いて広島へ行くことについて申し訳ないという気持ちはありました。また、初めての転職という若干の不安はありましたが、幼いころからさまざまな場所で生活した経験から、拠点を移すこと自体には抵抗はありませんでした。結局、前職の引継ぎなどもあり、夫から半年遅れて広島に転居しました。

Q2. 東京と広島の違いや、広島の良いところを教えてください。

雄介さん広島は空気がおいしくて、自然が多い。これはとても大きな変化で、家族にとってのメリットだと感じています。東京は、自然と触れ合える場所に行くまでにまず渋滞があり、時間もかかりますし、ようやく目的地に到着しても人で混雑、さらに何をするにもそれなりにお金が必要で、子供と遊ぶのも一苦労です。広島は、海も山もすぐ近くにあり、それほど混雑もありません。キャンプに行く機会なども増え、家族との過ごし方が充実したと感じています。

Q3. 家事や育児はどのように分担されていますか。ご両親のサポートも含めて教えていただけますか。

麻子さん東京時代は、自宅から職場まで私も夫も1時間近くかかっていたので、保育園の送迎や食事の準備などは両親にお願いしていました。広島でも夫の実家近くに住み、家族に引続きサポートしてもらっていますが、私たちが自分でできることは確実に増えています。

雄介さん大まかに分けると、掃除は妻、子供たちの習い事の送迎と炊事は私といった感じですが、あまり明確な役割分担は決めていません。突発的な仕事など、いざというとき、1人だけでも動けるよう、常に「2人でやる、気づいた方・できる方がやる」ようにしています。以前は役割をきっちり決めていたこともあったのですが、どうしても「自分の方が多くやっている」という不満につながりがちで、うまくいきませんでした。試行錯誤を重ねた結果、家庭というチームで協力して回していくことが大事だと考えるようになりました。
また、相手を褒めたり批判したりを含めて評価せず、自分自身がどう感じたかを伝えるようにしています。例えば、「ごはんがおいしい」、「部屋がきれいになって気持ちいい」という風に、自分が感じたことを言葉にすることで、相手が良い気分になりますし、家庭内の雰囲気も良くなります。できる方が自発的にやり、相手からポジティブな言葉をもらえば、好循環が生まれます。

Q4. 子育てをする中で、仕事に対する価値観はどう変化しましたか。

雄介さん働く目的というか、大切にしたいものが大きく変わりました。子供が生まれるまでは、自己実現やお金を稼ぐことが働く目的だったように思いますが、今は、常に家族が中心にあります。お金を稼ぐために家族を犠牲にするのは本末転倒ですし、家族が生活できるだけのお金があればいいと思っています。
子供たちはよく、「なんで働くの?」「どうやってお金をもらっているの?」「家族と仕事、どっちが大事なの?」といった素朴な疑問を投げかけてきます。言われてみれば本質的で大事な問いなのですが、これまであまり深く考えていなかったことでもありました。子供たちとの関わりの中で、「何を実現したいのか。なぜ実現したいのか」を真剣に考えるようになりましたし、私自身、わが子を含め、次世代にバトンを渡すための自分の役割を果たすことが、働く目的になってきたようにも思います。

麻子さん女性が仕事と家庭を両立することに対して、世代や組織風土、個人的な価値観によっても、考え方がさまざまで、葛藤したり迷ったりすることもあると思います。そういった中で、私自身の働く目的は、次世代に、良い形でバトンを渡したいということが一つの軸になっているように感じるようになりました。「ああいう働き方もできるんだ」と、周囲が思えるような、キャリアアップと子育てを両立させる働き方を体現することが私の役割だと思っています。そのためにも「あるべき姿」や「ありたい姿」を日々模索しながら、前に進んでいる状況です。

Q5. 育児と仕事の両立が大変な時期について、ご夫婦でどのように乗り越えましたか。

麻子さん1人目が生まれたときは大変でした(笑)。ありがちですが、哺乳瓶の洗浄、離乳食などすべて完璧にこなさねばと、頑張りすぎてしまい、精神的にも余裕がなくなっていました。当時は、子育ては私、それ以外は夫という明確な役割分担があったこともあり、夜遅くまで仕事をしてくる夫に対して「やってくれない」という不満が溜まって時々爆発していました。そして、そのたびに「またやってしまった」と反省する日々の繰り返しでした。その申し訳ない気持ちから、時々罪滅ぼしをしていたのですが、ある日夫に、「特別なことはしてくれなくてもいいから、もう少し日常的にご機嫌でいてほしい」と言われてはっとさせられたことを覚えています。

雄介さん1人目の子供が生まれたときは、正直あまり父親としての実感も湧いておらず、まだまだ仕事優先だったと思います。しかし、2011年の東日本大震災が大きな転機となり、自分自身の生き方や価値観が変化し始めました。その年に2人目が生まれ、生死が本当に身近に感じられ、生きているということや、家族という存在の大切さを改めて考えさせられました。

麻子さん心に余裕がなく、夫への不満は解消されない。一方で、私自身、もっとご機嫌に生きていたいのにという葛藤があり、本気でこのままではいけないと感じていたところに震災が起きました。今振り返ると、苦しい現状をどう乗り越えるか、模索していた時期だったと思います。
そこで、夫婦で「ありたい姿」について話し合いを重ね、半年くらいかけて擦り合わせていきました。家事・育児、仕事も2人共同じようにできる体制を整える、家庭内でポジティブな言葉を使うなども、こうした話し合いの中で生まれた工夫です。さらに、2016年に広島へ移住して、自然に触れる機会が増え、家族としての価値観がワークライフバランスの「ライフ」を充実させることにさらにシフトしていったように感じています。

Q6. 男性が育児休業を取得することについて、どのようにお考えですか。

雄介さん以前と比べて、周囲で取得する人数も増え、期間も延びました。実際、育児休業をとった男性に話を聞くと、「父親としての実感が湧いた」、「奥さんとのケンカが減った」「仕事の生産性を高められた」「周りの人たちの気持ちに配慮できるようになった」など、公私両面でメリットを感じているようです。育児休業を父親がとり、積極的に育児をしてくれたという事実は、夫婦関係・親子関係を長期的に良好にする効果があるのではないかとも思います。時間の意識が強まり、仕事の生産性を高めたいという気持ちにもなるでしょう。また、共働きは一般的になっているので、夫婦で家事と育児をシェアすることは社会における女性活躍を促すことになり、女性ならではの観点をビジネスに反映し新たな価値を生みやすくなるなど、企業の成長にとっても重要と考えます。

Q7. 雄介さんは現在時短勤務中ですが、周囲の反応や、限られた時間の中で成果を出すコツなど教えてください。

雄介さん制度は整備されているにも関わらず利用する男性は少ないので、周囲からは「男性でも時短勤務できる」という事実に驚かれることが多いですが、「新しい働き方」を示せているのではないかと思っています。
時短勤務では、限られた時間の中で「生産性をいかに上げるか」が重要です。個人的には、「大目的に照らして必要ない、やらないことを決める」こと、「あらかじめ進める手順と、タスクごとの制限時間を決めてから着手する」こと、「60点のアウトプットでまず関係者と確認する」こと、「会議時間は30分を標準とする」ことを大切にしています。
また、お互いがモヤモヤしながら仕事をするのは生産性がとても低く、時間がもったいない。私も含めてメンバー全員の無駄な作業や時間、アイドルタイムを極力減らすために、上司、部下と1対1でミーティングする時間、グループ全員でその日の業務共有と相談できる時間を、合わせて毎日2時間とっています。これによりやるべきこととやらないことを明確にでき、業務上の問題を解消しスムーズに進めることができています。私は毎日2時間かけていますが、結果として全体としてみればそれを十分に上回る生産性を生んでいると思います。あとは、「終業時間をメンバーに宣言する」ことでしょうか。予定表を使ってあらかじめ、何時以降はいないということを宣言しておけば、それまでの隙間時間で突発の打ち合わせを入れてくれます。これにより、問題解消までの時間はむしろ短縮されることになります。時間の使い方にコミットすることは、周囲にも生産性を意識したポジティブな影響を与えられていると感じます。

Q8. コロナ禍で、人々の価値観や働き方もずいぶん変化しました。今後、どのような働き方がトレンドになるとお考えですか。また、若手に対する思いをお聞かせください。

雄介さん「ワークライフバランス」という言葉が世に出回って久しいですが、ワークとライフを切り離す考え方自体がなくなるかもしれません。これからの時代は、「どうすれば人生の質を自分らしく高めることができるか」が、思考や判断の中心になると考えています。大事にしたいことに集中するために、職業、働き方、働く場所、時間を柔軟に選択する中で、ワークとライフを切り分けない人が増えていくのではないでしょうか。
若手のみなさんに対してですが、20代のうちは、一生懸命がむしゃらに仕事をしてもよいと思います。その経験を通じて、自分は何が好きなのか嫌いなのかといった判断軸ができ、30代以降の自分なりの指針、大事にしたいものが見えてくる。家族についてはそれぞれの「こうありたい」という思いを共有することが大事だと思います。夫婦共に働く家庭が増えていますが、家事や育児、趣味なども含めて共有できると良いと思います。

麻子さんこれまでの女性活躍推進の流れの中で、女性はさまざまな努力をしてきました。この先、さらに女性活躍が進むとすれば、良き理解者であり、伴走者である私の夫のような「パートナー」を持ち、お互いに幸せを実現させていく方が増えていくのかもしれません。